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寝ても寝ても眠い要因と解消法とは?
はじめに:慢性的な眠気と影響
十分な睡眠をとったはずなのに、日中ずっと眠気に悩まされた経験はありませんか。「寝ても寝ても眠い」という悩みは、実は珍しくありません。思春期の学生、仕事を始めたばかりの会社員、更年期を経験している女性などにみられます。睡眠外来において、毎日9時間寝ても眠いという訴えがあり、相談に来る人もいます。家族、会社の同僚から、寝すぎと言われることもあるようです。
眠気が生活に及ぼす影響は深刻です。仕事や学業のパフォーマンス低下、運転事故リスクの増加、人間関係の悪化など、日常生活のあらゆる面に影響を及ぼします。
いつも眠気に悩まされることでストレスが増加し、そのストレスがさらに睡眠の質を低下させるという悪循環が起こりやすいのです。
このページでは、慢性的な眠気の原因と効果的な対処法を詳しく解説していきます。あなたの生活の質を向上させ、活動的な日々を取り戻すために、このブログ記事をお役立てください。
寝ても寝ても眠い原因とは
私たちが眠くなる状態になるには、様々な要因が絡み合っています。ここでは、眠気を引き起こす原因の中で代表的なものを取り上げて解説します。人によっては、複数の要因が過眠を引き起こしていることがあります。
原因によっては、自分で対処できるものもあります。一方、病気が過眠の症状を引き起こしている事例もあり、診察が必要になります。
1. 睡眠の質の低下
ストレスは睡眠の質を低下させ、「寝ても寝ても眠い」状態を引き起こすことがあります。なぜなら、夜の睡眠が浅くなり脳と体が十分に休まらないので、日中にもっと睡眠をとりたいという反応が出るからです。一般的に、ストレスは交感神経系を活性化し、コルチゾールの分泌を増加させ、深い睡眠を妨げます。自律神経の調節も不安定になるので、不快な身体症状が併発する事例があります。
出典:しっかり眠って心身をメンテナンス ストレスに負けない体をつくる睡眠 – 公立学校共済組合
一方、加齢も睡眠に影響を及ぼします。高齢になると睡眠ホルモンであるメラトニンの分泌が減少し、睡眠の質が低下します。これらの要因により、睡眠が浅くなり、中途覚醒が増え、結果として日中の強い眠気につながります。
また、高齢者になると、脳の病気が発症しやすくなります。その中で、パーキンソン病、アルツハイマー型認知症などの神経変性疾患が、寝ても寝ても眠いという問題を引き起こします。つまり、認知症の睡眠障害も眠気に関わりがあることを知っておきましょう。
出典:足立浩祥; 認知症における眠気・過眠の見立てとその対応, 精神経誌;123(7):431-437,2021
2. 睡眠時無呼吸症候群
閉塞型睡眠時無呼吸症候群は、睡眠中に呼吸が繰り返し止まる状態を指します。努力呼吸による覚醒が増えるので、深い睡眠が妨げられます。その結果、本人は寝たつもりなのに、日中の過度の眠気を自覚するケースがあるのです。肥満、首の太さ、年齢、性別(男性に多い)などが危険因子となります。
症状としては、大きないびき、息苦しさで目が覚める、朝の頭痛などがあります。病気の発見には、家族、ベッドパートナーによる指摘が診断の糸口になることもあります。質の悪い睡眠が続いているので、寝ても寝ても眠い問題が生じます。
この病気は男性に多いという先入観がありますが、女性の睡眠時無呼吸症候群も注目されています。閉経後にSASを発症するリスクが高くなることが知られています。女性のSAS患者では、男性と比較すると、不眠や朝の頭痛、倦怠感などを訴える傾向があります。
出典:女性の睡眠時無呼吸症候群の症状とは? – ResMed SleepSpot
3. 周期性四肢運動障害
睡眠関連運動障害の一種である周期性四肢運動障害は、睡眠中の四肢の不随意な動きにより、睡眠を断片化し、
深い睡眠の減少や睡眠効率の低下を引き起こします。むずむず脚症候群との関連もあります。
足が周期的にぴくっと動き、頻回の覚醒を引き起こします。実際には寝ているのですが、浅い眠りになっているので、「寝ても寝ても眠い」状態の原因となります。加齢に伴い発症が増え、女性では鉄分が不足していることが関わっていることがあります。
レストレスレッグス症候群の併発に注意しつつ、睡眠の質を調べるために、脳波が含まれている終夜睡眠ポリグラフ検査が必要です。
4. 中枢性過眠症
脳の覚醒システムの機能が障害されていることで、過度の眠気を引き起こす睡眠障害です。長時間睡眠の傾向になる人もいます。いくら寝ても、一度目が覚めてから再び寝ることができて、しかも、一日中眠いという状況が続きます。思春期に発症することが多いナルコレプシーが有名ですが、特発性過眠症の鑑別もしなければなりません。
過眠症があると、十分な睡眠時間をとっても、睡魔に襲われるという問題が、日常生活に支障をきたします。ナルコレプシーは、中学生、高校生の時期において、日中の過度の眠気が発症することが多い病気です。
出典:Bollu et al. Hypersomnia. Mo Med. 2018 Jan-Feb;115:85-91.
5. こころの病気
うつ病や不安障害は、「寝ても寝ても眠い」状態を引き起こす重要な要因です。これらの精神疾患は脳内の神経伝達物質のバランスを崩し、睡眠と覚醒リズムを乱します。眠りも浅くなります。また、長く続くストレス、イライラ感、意欲の低下が、寝ても寝てもだるい症状と眠気を引き起こします。
20代から30代の女性において、冬になると過眠をきたす病気の鑑別診断として冬季うつがあります。季節性情動障害の一種で、毎日、何時間寝ても眠い症状が特徴です。
精神疾患と不眠は併発することが多く、睡眠薬、抗不安薬による治療を受けている人もいます。それらの薬剤による副作用も、昼間に眠気を感じる要因の一つになる可能性があります。
6. 嗜好品の影響
多量のカフェイン摂取は、「寝ても寝ても眠い」状態を引き起こす要因となります。夜遅い摂取は、入眠を妨げ、睡眠の質を低下させます。同様に、喫煙はニコチンの覚醒作用により、睡眠の質を悪化させ、入眠困難および中途覚醒を増加させます。喫煙と睡眠の関係について、健康への影響について知っておきましょう。
よくある間違いが、飲酒の影響を軽視することです。寝酒によって入眠はスムーズになるかもしれませんが、アルコールが体内で代謝されると、後半の睡眠を浅くし、深夜に目が覚める弊害が現れます。そして、再入眠が困難になります。
まとめると、カフェイン、ニコチン、アルコールなどの嗜好品によって、深い眠りが妨げられ、寝ても寝ても眠いという問題が生じることがあります。
7. 生活習慣の乱れ
生活習慣の乱れは、「寝ても寝ても眠い」状態を引き起こす要因になります。思春期に多くみられる不規則な就寝・起床時間、働く人にみられる長時間の残業や夜型生活は体内時計を狂わせます。そして、私たちの体内時計による睡眠と覚醒リズムを不安定にさせます。
また、運動不足は深い睡眠を減少させ、食生活の乱れ(過食と就寝時刻に近い摂食行動)は消化器系の負担をかけます。その結果、睡眠の質を低下させます。
最近では、ベッドでスマホ、タブレットなどを使用するなど、就寝前のブルーライトが、メラトニン分泌を抑えて、入眠を困難にします。
不安定な睡眠によって、昼間の眠気が生じます。
8. ホルモンバランスの影響
女性のホルモンバランスの変動は、「寝ても寝ても眠い」状態を引き起こすことがあります。特に月経前症候群(PMS)や更年期障害の時期には、エストロゲンとプロゲステロンの急激な変化が睡眠リズムを乱し、睡眠の質を低下させます。これにより、日中の強い眠気や疲労感が生じます。
PMSでは生理前に眠気が問題になることがあります。眠気や疲労感が月経周期と連動しているか、確認してみましょう。一方、40代から50代にみられる更年期の睡眠障害も鑑別診断として見落としてはなりません。閉経に近い時期は、睡眠が不安定になることがあるのです。
その他、産後の睡眠障害のため浅い眠りが続き、いくら寝ても眠いと感じている子育て中のママの事例もあります。
ところで、甲状腺ホルモンも眠気に影響します。 昼間の眠気および倦怠感が続いている、そして、いくら寝ても眠くて疲れがとれないという症状があるなら、甲状腺機能低下症が要因になっている場合があります。一般的に、甲状腺の疾患は、男性よりも女性に多くみられ、橋本病が代表的な病気です。
出典:Hashimoto’s disease – Mayo Clinic
9. 発達障害
自閉症スペクトラム障害(ASD)や注意欠如・多動性障害(ADHD)などの発達障害は、「寝ても寝ても眠い」状態を引き起こす要因となります。しかし、未診断であるケースが問題になっています。
出典:神林 崇 他 ; 過眠性障害:日中の眠気と夜間睡眠の延長, 精神治療;33(5):S101,2016
原因は明確ではありませんが、脳内の神経伝達物質のバランスや体内時計の調整に問題が生じ、活動時間帯の覚醒が維持できないことが可能性として指摘されています。
上記に加えて、感覚過敏や不安による入眠困難、中途覚醒の増加も睡眠の質を低下させ、日中の強い眠気につながります。ナルコレプシーとは異なる点として、眠くなる状況として、意欲の程度によって眠気の強弱が変わることもあります。興味がないときに、眠くなるという傾向が、発達障害の眠気の特徴の一つです。
具体的な対処法
生活習慣の見直しが第一のステップです。規則正しい生活習慣を心がけましょう。毎日同じ時間に寝起きすることが大切です。これは、体内時計を整えるための第一歩です。
体内時計が整うことで、夜間の深い眠りが得られやすくなり、朝の目覚めがスムーズになります。さらに、休日も平日と同じ時間に寝起きすることで、体のリズムを保つことができます。
もちろん、自分が寝る環境の整備も大切です。寝室の温度、湿度、寝具、光、音などの環境は、あなたの睡眠の質を密接に関わってきます。
睡眠日記を活用しては、いかがでしょうか。自分の睡眠パターンを客観的に把握し、問題点を特定するための有効なツールです。毎日の起床と就寝時刻、昼間の有無と時間帯などを記録することで、自分の睡眠の傾向を知り、問題点の洗い出し、改善への手がかりを見出すのに役立ちます。
ストレスの管理も大切です。なぜなら、眠りが浅い要因として何らかの悩みが関係している場合が少なくないからです。リラックスできる時間を持つことで、交感神経の活動を抑え、副交感神経を優位にしやすくなります。
具体的には、ヨガや瞑想、深呼吸などのリラクゼーション法があります。これらは心身の緊張をほぐし、あなたをリラックスさせて、良い眠りへの助けとなるでしょう。
即効性のある眠気の対策とは
本来は、眠気の原因を特定して、その対処を行うことを優先すべきです。しかし、仕事や学業を中断するわけにはいきません。職場、学校など、日常環境で実践できるものを紹介します。急場をしのぐための手段として、ご理解ください。
眠気を覚ます飲み物の代表格はカフェイン飲料ですが、過剰摂取による健康被害もあります。そのため、適量を守ることが大切です。
方法 | 具体的な内容 |
---|---|
カフェイン摂取 | 活動時間帯に眠くならないように、覚醒作用のあるカフェインを含んだ飲み物、食べ物をとる方法です。多量に摂取しないように注意しましょう。 |
眠気防止薬 | 薬局で販売されている一般用医薬品です。カフェインが含まれており、眠気および倦怠感に効果を現します。服用に当たっては、薬剤師と相談してください。 |
短時間の仮眠 | 短い時間でも寝ることは、眠気を一時的に解消するのに役立ちます。15時までに15分間までというルールを覚えておきましょう。 |
体を動かす | 座ったままの活動をしていると、睡魔が襲ってくることがあります。定期的なストレッチ、軽い運動などを取り入れてもみましょう。 |
ツボを押す | 身体にあるツボには、眠気覚ましの効果を示すものもあります。風池、中衝、合谷などのツボがあり、首または指の所定の場所を押します。 |
医師に相談するタイミング
慢性的な眠気は、時として深刻な健康問題のサインである可能性があります。セルフケアを行っても改善が見られない場合や、日常生活に支障をきたすほどの強い眠気がある場合は、睡眠専門医への相談を躊躇してはいけません。
以下に示すのは、受診を検討すべき目安です。
- 十分な睡眠時間をとっても、2週間以上、日中の眠気が続く
- 夜中に何度も目が覚める、または早朝に目覚めてしまう
- 大きないびきをかく、眠っているときに呼吸が止まる
- 寝相が悪く、脚がぴくっと動く
- 睡眠中に異常な行動(大きな寝言、悪夢、夢遊病など)がある
- 眠気が強く交通事故と仕事中の事故のリスクが高い
- うつ、不安の症状が強く、眠れない
子どもの場合
思春期の学生にとって、慢性的な眠気は学業成績に深刻な影響を及ぼす懸念があります。多くの場合、睡眠時間の不足が生活リズムの乱れが原因ですが、十分な睡眠時間を確保しているにもかかわらず、常に強い眠気に悩まされる場合は、過眠症を疑う必要があります。
睡眠衛生の見直しをすることが大切です。その上で、「たくさん寝ても日中の眠気がひどい」状態が続く場合は、睡眠専門医による診察を受けることを提案します。