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認知症が睡眠に及ぼす影響と対処法
認知症とは
記憶、思考の悪化、行動の異常が起きることで、日常生活の活動ができない状態のことです。通常、長期の経過をとることが多く、症状が進行していく脳の病気です。
高齢者社会になった日本では、認知症の予防が重要なテーマになっています。
種類について
種類 | 原因と病気の特徴 |
---|---|
アルツハイマー型認知症 | 認知症の中で一番多いタイプで、緩徐進行性の病気です。脳内にアミロイドβと呼ばれる特殊な蛋白質が蓄積することで発症します。物忘れが多いなど、認知機能障害が問題になります。女性に多い傾向があります。 |
レビー小体型認知症 | レビー小体という特殊な物質が脳細胞の中にできることで発病します。認知機能障害に加えて、幻視が特徴的な症状の一つです。抑うつ症状、パーキンソン症状、睡眠中の異常行動が出現します。調子が良いときと悪いときが繰り返されます。 |
血管性認知症 | 脳梗塞、脳出血などによって脳内の血液の流れが悪くなり、脳細胞が壊死することで発現します。物忘れのほか、体の麻痺、嚥下困難、言語障害、感情失禁があります。一部の認知機能が保たれているので、まだら認知症とも呼ばれています。 |
出典:認知症について知ろう(種類・違い) – 相談e-65.net
診断の方法
認知症が疑われる場合は、外来において簡易認知機能テストあるいは長谷川式簡易知能評価スケールを行って調べます。脳の器質的異常、血液の流れ、代謝の程度を評価するために、頭部MRI検査、スペクト検査、およびPETを施行します。
最終的には、認知症の診断基準に従って、確定診断がされます。
出典:日本神経学会
症状について
脳の病変による「認知機能の低下」から引き起こされる症状を、中核症状と言います。具体的には、もの忘れなどの記憶の障害、見当識の障害、理解と判断力の低下、実行機能障害、そして、感情表現の変化があります。
一方、本人が過ごしている環境、人間関係、性格などが影響して、行動と心理面が変化したものを周辺症状と言います。不安と焦燥感、もの盗られ妄想、幻覚、徘徊などがあります。
認知症が睡眠に及ぼす影響
加齢に伴って睡眠時間とリズムが変化し、途中で目が覚める、朝早く目が覚める、眠りが浅くなるという影響が出てきます。体内時計と睡眠の質が変化することが原因です。
認知症になると、体内時計を調節している神経系の変性が生じること、そして、日中の活動が低下することで光の暴露量が減ることで、睡眠リズムが障害されます。
アルツハイマー型認知症では、夜間のメラトニンの分泌が減少すること、睡眠と覚醒の振幅が低下することが生じます。その結果、不眠、昼夜逆転、日中の眠気の症状が出現しやすくなります。
出典:岡靖哲, 認知症における睡眠障害, 臨床神経 54, 994-996,2014
高齢になると睡眠時間が短くなります。認知症が合併すると、日中の覚醒と夜間の睡眠のバランスが崩れ、睡眠リズムが不規則になる傾向になります。
睡眠障害の特徴
アルツハイマー型認知症では、概日リズム睡眠覚醒障害が出現しやすいです。体内時計の調節が不十分になるため、不規則睡眠覚醒型のリズムになることが特徴です。病状が進行すると、昼夜逆転のパターンになることが問題になります。朝方まで眠れない、正午近くまで寝ているという状況が少なくありません。
一方、レビー小体型認知症では、レム睡眠を調節する脳の部位が障害されるので、レム睡眠行動障害が出現することが多いです。夢の内容に反応して、体を動かす、怒鳴るような寝言を発するなどの異常行動があります。
いびき、呼吸が止まる症状がある場合は、閉塞型睡眠時無呼吸の可能性があります。
認知症の睡眠障害の対処法
認知症の人から「眠れない」という訴えがあったときに、不眠症だけではなく、睡眠時無呼吸、睡眠リズム障害、むずむず脚症候群などの病気があるか、鑑別することが大切です。
出典:三島和夫, 高齢者の睡眠と睡眠障害, 保健医療科学 64, 1, 27-32,2015
睡眠の状況を詳しく調べるために、終夜睡眠ポリグラフ検査を行うことがあります。
認知症に合併している睡眠障害の種類によって、治療法は異なります。概日リズム睡眠障害の睡眠後退型では、メラトニンアゴニストの内服、光療法などが検討されます。一方、レム睡眠行動障害の症状を抑えるには、クロナゼパムが使われます。
不眠の症状に対して、睡眠薬が処方される場合もありますが、認知症による睡眠障害の場合は、コントロールが困難になることが多いです。こころの病気を併発しているときは、その治療管理も必要になります。
認知症の治療を受けるためには
地元の内科、精神科あるいは脳神経内科が窓口になります。その後、必要に応じて、地域の基幹病院に紹介してもらうことができます。
岐阜県では、認知症疾患医療センターのある病院が指定されています。病院選びで悩んでいるときは、最寄の病院に問い合わせてください。
予防について
体を動かすこと、ウォーキングなどの有酸素運動を定期的に行いましょう。食事は、塩分を控えめにして、飲酒は適量にするように心がけてください。
家に閉じこもることなく、趣味の活動をすること、そして、家族、友人だけではなく、地域の方々と積極的にコミュニケーションをとることが、認知症の予防に有効です。
糖尿病、高血圧、脂質異常症があれば、病院で治療を受けてコントロールすることが大切です。老化を進める喫煙を止めること、適正体重を保つことも大切です。
睡眠に関しては、規則正しいリズムを保ち、十分な睡眠時間をとるように心がけましょう。特に、中年世代から睡眠の習慣を見直すことを勧めます。
50歳から一晩当たり6時間未満の睡眠時間をとっていると、70歳ごろに認知症を発症するリスクが高くなることが報告されています。
睡眠不足があると、脳内にアミロイドβが蓄積しやすく、アルツハイマー病になりやすいと考えられています。
出典:スイミンネット
日頃から睡眠不足にならないように注意することが認知症の予防に大切です。