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うつ病に合併する睡眠障害の特徴とは
うつ病の基礎知識
うつ病とは、憂うつな気持ちになり、気分が乗らない。気持ちが落ち込んだ状態が続く病気(気分障害)です。
意欲の低下、興味がない症状などがあります。食欲が出ないことが多いですが、ケースによっては、過食になる場合もあります。病状が重いと「死にたい」気持ちも出ることがあります。
殆どのケースで、「眠れない」という不眠を呈する睡眠障害が出現します。眠れないことで、自律神経のバランスが崩れて、身体症状が出現すると考えられます。
睡眠障害の特徴について
うつ病には、睡眠障害の合併が多いので、眠りの質が低下することが特徴です。外来では不眠を訴えることが殆どです。具体的には、次のような症状です。
- 入眠困難(寝つきが悪い)
- 何度も目が覚める(中途覚醒)
- 朝早く起きてしまう(早朝覚醒)
うつ病の症状として早朝覚醒は出現しやすいため、診断の手掛かりになります。さらに、うつ病では、深い眠りである徐波睡眠が少なくなるので、浅い眠りとなります。中には、悪夢を見るという事例もあります。
結果的に、ぐっすり感が感じられず、疲労感の蓄積、朝起きたときの倦怠感が問題になります。寝つきが悪いことで、昼夜逆転になる場合もあります。
うつ病では睡眠障害(不眠)の症状が出現します。反対に、眠れない状態が続くと、昼間の眠気、集中力の低下などが生じ、うつ病を発症することがあります。
国内で行われたコホート研究において、入眠困難がある人では抑うつ症状が起こりやすいことが報告されています。
出典:土井由利子「日本における睡眠障害の頻度と健康影響」,保健医療科学,2012,60,1.3-10
一般的に、精神疾患は睡眠障害を併発することが多いです。
うつ病は、睡眠の質に影響しますが、同時に頭痛も引き起こすことがあります。
原因について
うつ病の原因は十分に分かっていませんが、精神的なストレス、脳内の神経伝達物質の働きが悪くなることが関与していると考えられています。その上で、本人を取り巻く環境要因が引き金となって発症します。
長い間、ストレスを受けて適応障害を発症することがありますが、慢性化すると、うつ病に移行する可能性があります。9月は、うつ症状が問題になりやすい時期です。
嫌な夢ばかり見るようになったと感じることはありませんか?
遺伝的な要因、体質なども関係しており、家族歴があると、うつ病を発症しやすい傾向があります。
どんな精神ストレスが多いかというと、職場の対人関係、残業が多く過労となっていること、家庭の問題(経済的なこと、子どもの教育、介護、パートナーとの関係など)、プライベート(恋愛、結婚、別れなど)で困っていることがあります。
女性の場合、月経、妊娠、出産と育児、閉経、更年期などのイベントも関与します。
月経前症候群において、精神症状が出現することがあります。病状が重いタイプは月経前不快気分障害と呼ばれており、うつ、絶望感、不安が特徴的な症状です。
休養の重要性について
脳が疲労しているため、活力が低下している状態になっています。まずは、本人の負担になっているものを取り除くことが大事です。
具体的には、仕事の内容について、上司と相談して、就業時間の見直し、残業を減らすことを、そして、可能であれば、休職、休養をすることがあります。十分な面談をすることも欠かせません。
家庭で取り組むこととして、家事を減らすこと、家族に手伝ってもらうなどの配慮が大切です。その他、悩み事があれば、自治体の相談窓口、病院の医師に状況を相談することを勧めます。
病院で行う薬による治療
基本的には精神科での治療を勧めます。クリニック、病院で使用される薬の種類は、以下の通りです。
- 抗うつ薬
- 抗不安薬
- 睡眠薬
中心となるのは、抗うつ薬ですが、作用機序として、脳の中のセロトニンやノルアドレナリンという物質の数を増やします。その結果、抑うつ症状、不安感、緊張、焦燥感を改善する効果があります。
SSRI、SNRI、NaSSAと呼ばれる薬が、第一選択として使われています。
副作用がないか確認しながら、少量から内服を開始します。担当医が、6~8週間後に、あなたの症状の改善が見られるか、薬の効果を判定します。
不眠の症状に対しては、必要に応じて睡眠薬を内服することで対処します。ベンゾジアゼピン系の抗不安薬であるエチゾラムは、うつ病に伴う不安、緊張、睡眠障害に対して、保険適用があります。
薬を飲んでも、眠りが浅い、途中で目が覚める、いびきをかく症状があれば、睡眠時無呼吸が合併している可能性も考えなければなりません。
症状に心当たりがあれば、すぐに睡眠専門医の診察を受けてください。仕事中の居眠りを繰り返すことが問題となっているなら、あなたの睡眠の状態を調べるため、睡眠検査を検討します。
予防について
毎日の生活習慣は、良い眠りには欠かせません。寝室の環境、食事、運動、睡眠時間とリズムについて、見直すことが大切です。
眠れないという症状が続くと、こころの病気になりやすいことが分かっています。そのため、不眠の症状があれば、早めに対処することが大切です。気になったときは、最寄のかかりつけ医に相談することを考えてください。
ストレスの軽減も重要です。特に仕事が負担になっているときは、早めに上司、同僚に相談することを勧めます。会社に産業医、看護師・保健師がいるときは、面談を希望して、話を聞いてもらいましょう。