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高齢者で眠れない悩みがある方へ
高齢者の睡眠障害の特徴とは
眠れない悩みが多くなります。十分な睡眠時間と質が保たれていないので、眠気の症状が生じます。
不眠は高齢者の睡眠の問題として多いものです。具体的には、寝つきが悪い、途中で目が覚める、朝早い時間に目が覚めてしまう症状です。眠れないことで、日常生活に支障が出ると、不眠症と呼ばれています。
眠りを促す働きがあるメラトニンの分泌量が加齢にともなって減少することも関係しています。
年齢による睡眠の変化
一般的に、加齢に伴って睡眠時間が短くなり、起床時間が早くなる傾向になります。体内時計の変化が関係しています。そして、眠りの質については、浅い眠りが増加します。そのため、途中で目が覚めやすい問題が起きやすくなります。
終夜睡眠ポリグラフ検査によって眠りの状態を調べると、高齢者では、深いノンレム睡眠とレム睡眠の割合が、若い人と比べて少ないことが分かっています。
深い睡眠が減るので、若い頃のようにぐっすり眠れることが少なくなります。
出典:Insomnia & Seniors:SleepFoundation.org
原因について
高齢者で眠れなくなる要因、きっかけ、出来事などを紹介していきます。
年齢が上がるにつれて、健康の問題は多くなります。病気、体調面への関心は高まります。眠りを妨げる症状(トイレが近い、関節の痛み、痒みなど)、認知症の症状が出現することも多くなります。
出典:Sleep disorders in older adults: MedlinePlus
高齢になると、健康に対する不安、恐怖を感じるようになり、精神ストレスが増えます。ストレスが長引くと、眠気をきたす場合もあります。
パートナーの病気について心配する機会も増え、介護の問題に迫られる状況が多くなります。同時に、住まいの問題も悩みの種になることがあります。
長年勤めていた職場の定年退職を機に、家事の分担、生きがいについて考えをめぐらす方が少なくありません。プライベートでは、パートナーとの離婚や死別による孤立感がよくある問題です。
これらの出来事は、こころの状態に影響します。そして、老人性うつ病による不眠が発病するケースもあります。
高齢の世代になると病気の発症が増えること、そして、生活の変化に対する不安が、眠りに影響することが考えられています。
睡眠障害の種類
高齢者にみられる代表的な睡眠の病気について、解説します。
病気 | 特徴 |
---|---|
不眠症 | 入眠困難、中途覚醒、早朝覚醒などに加えて、昼間の眠気、抑うつ症状が出現する。慢性の不眠があることで、認知機能が低下する可能性がある。 |
睡眠時無呼吸 | いびき、呼吸が止まる症状が眠っているときに生じる。昼間の眠気、集中力の低下が問題になる。高血圧、心臓病、脳卒中の発症リスクが高くなる。 |
むずむず脚症候群 | 脳内の神経伝達物質であるドパミンの働きが低下することで発症する。脚の不快感による不眠を呈する。周期性四肢運動が合併すると、熟睡感が低下する。 |
レム睡眠行動障害 | 夢の内容に反応して体を動かす、大声を出す症状がある。激しい寝言が発見の手がかりになる。パーキンソン病、レビー小体型認知症との関連がある。 |
概日リズム睡眠障害 | 夜早い時間に眠くなる、早朝に目が覚める睡眠相前進型のリズムが多い。アルツハイマー型認知症では、不規則な睡眠と覚醒のパターンとなる。 |
睡眠障害の影響
十分に眠れない状態が続くと、高血圧、糖尿病、肥満症などの生活習慣病の発症が高くなります。また、こころの状態にも影響するため、うつ病につながることがあります。
睡眠が十分にとれていないことで、体とこころの病気が発症しやすくなります。自動車の運転事故、職場での事故の発生が多くなります。
対策について
不眠に対しては、睡眠衛生の指導を中心に治療していきます。昼寝の時間が長くないか、ベッドに早く入り過ぎていないか、確認してみましょう。
睡眠の質に影響する嗜好品(アルコール、カフェイン、ニコチン)の習慣があれば、是正することが重要です。
食事の見直しも行いましょう。普段から、寝つきを良くしたり、睡眠の質を上げたり、眠りに対する良い影響を与える食品を選ぶことが大切です。
睡眠時間が短いが、眠気と集中力低下がなく日中の活動に支障がなければ、無理に長く眠る必要はありません。午前中には、日光を浴びるようにして下さい。体内時計の安定性のために重要です。
若い頃と比較して睡眠時間が短くなっている現状があることから、加齢による必要な睡眠時間の変化についても受容するようにしていきます。
毎日の就寝と起床時間、そして中途覚醒の状況などを睡眠日誌に記録していきます。この作業で、睡眠のリズムが分かります。
生活習慣の見直しによっても、不眠が改善しないときは、睡眠薬による治療を考えます。
薬による依存性、転倒リスク、翌日への持ち越し効果に気を付けながら、あなたにとって、最適な睡眠薬の種類と用量を決めていきます。睡眠薬に抵抗がある場合には、不眠症の漢方薬という選択肢もあります。
睡眠障害の中で、睡眠時無呼吸症候群、周期性四肢運動障害、レム睡眠行動障害などが疑われるときは、睡眠の精密検査が必要になります。その場合は、専門病院での診察を勧めます。