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不登校に多い睡眠の病気の種類と対処法
不登校とは
子どもが、心理的、情緒的、身体的、または社会的要因や背景によって、学校に行かない、あるいは、行きたくてもできない状況を不登校と言います。
不登校の期間については、連続あるいは断続して、年間30日以上となっています。ただし、病気、または経済的事情によって登校していない場合は除外されています。
出典:東京都教育委員会
学校に行ったり、行かなかったりすることを繰り返すタイプの不登校を五月雨登校と呼んでいます。
どのくらいの人数が不登校になっているか
文部科学省が発表した令和元年度の「児童生徒の問題行動等調査結果」によれば、小学校では53,350人、中学校では127,922人の生徒が不登校になってます。
小学生と比較すると、中学生では人数が急増しています。特筆すべき点は、小学校6年生から中学校1年生にかけて、2倍の人数に増えていることです。中学校に入学してから不登校が増える状況は、中一ギャップと呼ばれています。
高校での不登校の人数は、単位制を含めて50,100人です。
原因について
文部科学省は、小学校、中学校における不登校の理由として学校、家庭、本人に関係するものとして統計を出しています。その結果によれば、無気力・不安、いじめを除く友人関係の問題、親子の関わり方の順に多いことが報告されています。
学業の不振、生活リズムの乱れが関係している場合もあります。高校生になると、生活リズムの乱れ、あそびの影響が増えてくる傾向です。
出典:令和3年度児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査結果について- 文部科学省
現実には、学校、家庭、本人に関わる複数の要因が不登校の理由になっていることが少なくありません。社会の価値観が多様化していること、本人の学校と教育に対する考え方、期待度が変化していることも指摘されています。
いじめ、転校、進級など、環境の変化に伴うストレスを持続して受けると、適応障害、うつ病などの「こころの病気」を発症していることもあります。これらの精神の病気は、ひきこもりの原因にもなります。
思春期の子どもで、朝起きられない、頭痛がよく起きる症状があるなら、起立性調節障害が不登校の背景にある可能性があります。この病気については、小児科での診察が必要になります。
発達障害も不登校の原因になります。自閉症スペクトラム障害(ASD)と注意欠陥多動性障害(ADHD)があると、50%以上の割合で睡眠の問題(入眠困難、起床困難、昼間の眠気など)が生じるからです。
ゴールデンウィーク、夏休み、冬休み明けに学校に行きたくないという子どもがいます。受験して進学したけど新しい環境になじめないというストレス、疲労がたまっていること、そして、生活リズムを元に戻せないことなどが関係しています。
長期の休みのときに、深夜までオンラインゲームにのめりこんで朝起きられない生活習慣になっている場合があります。ゲーム依存症になると、適切な睡眠習慣が崩れてしまいます。
睡眠障害が不登校のきっかけになる
睡眠外来において、中学生、高校生が不登校になったときの経緯を聞き取りしたときに、睡眠不足、不規則な睡眠リズム、そして、睡眠リズム障害が要因になっていることがあります。
1.夜型の睡眠リズム
本人が学校や家庭においてストレスを受けたときに、夜遅くまで、スマホ、ゲーム、動画の視聴に没頭するケースがあります。深夜まで、気の合う友達とSNS、オンラインゲームをするので、朝起きられないという状況になります。
一方、中学生、高校生では、受験のために成績を何とか上げたいので、深夜まで勉強をしていると体内時計に影響して、睡眠リズムが遅れます。
夜型の生活リズムが続くと、通常の時間に眠りにつくことができず、学校に遅刻しない時刻に起きられません。状況が悪化すると、昼夜逆転になります。その結果、概日リズム睡眠障害の睡眠相後退型と呼ばれる病気が発症して、不登校につながります。
大学生では、睡眠相が遅れる傾向になり、睡眠不足を感じること、そして、無気力感、情緒不安定による不登校との関連が報告されています。
出典:黒川泰貴, 東京成徳大学臨床心理学研究 13号,2013,3-16
2.睡眠不足の合併が多いです
学年が上がるにつれて、勉強が難しくなります。予習と復習に時間がいるので、どうしても睡眠時間を削りがちになります。学校では部活動での朝と放課後の練習のため時間が足りなくなること、往復の通学時間が長いことがあると、就寝時間が遅くなる傾向になります。
平日に睡眠時間が短いこと、そして、土日に睡眠不足を解消しようと普段より睡眠時間を長めにとるという、睡眠リズムの乱れが生じやすいです。休日だけ、正午近くまでずっと寝てばかりという状況はありませんか。
受験のストレス、対人関係などで、ストレスを受けると睡眠の質も低下します。そのため、寝不足となり、疲れがとれず、やる気が低下します。いじめ、仲間外しなどの問題があって、悪夢ばかり見るという事例もよくあります。
十分な睡眠時間を確保していないと、情緒が不安定になったり、攻撃的な感情を持つことがあるので、「学校に行きたくない」という気持ちになりがちです。不登校の子どもの起こし方で困っている両親も多いです。
対処法について
自分の子どもが、不登校になったときに、ご両親から「どうすればいいか分からない」 という悩みを抱えてます。家庭だけで問題を抱えこむことなく、不登校の支援をしてくれる施設に助けを求めてください。
岐阜県教育委員会は、不登校の相談窓口を持っています。教育相談ほほえみダイヤルを活用することを勧めます。不登校の悩みを面接によって相談できる施設として、岐阜大学の心理教室相談室があります。
情報源として、登校拒否・不登校を考える全国ネットワークがあります。養育者、当事者が交流して学び合う場で、気持ちを理解するのに役立ちます。
学校の環境が不登校の原因となっていときは、先生と連携して、再登校しやすい環境を作っていくことが大切です。
子どもの中には、大人がやるべき家事、家族の世話をしているヤングケアラーが見つかる場合があります。そのときは、地域にある児童相談所に相談してください。
岐阜市に住んでいる場合は、岐阜市子ども・若者総合支援センター“エールぎふ”に相談して、支援を求めることも、解決に向けての方法の一つです。
岐阜市の場合、従来からある教育制度の疑問を感じて学校に通えなくなった場合は、不登校の特例校である岐阜市立草潤中学校に通学することで教育支援を受けられます。子どもたちに合わせた独自のカリキュラムが採用されています。
こころの病気がある場合は、精神科のクリニックあるいは病院などが窓口として利用できます。カウンセリング、医療福祉相談などに対応している施設もあるので、事前に問い合わせることを勧めます。
睡眠の病気に対しては、生活習慣の指導を行います。睡眠リズム障害の治療としてメラトニンの薬の処方、光療法などを用いることがあります。
年齢の点から睡眠薬を使うことは少なく、睡眠障害の改善のために漢方薬を活用することが多いです。睡眠の質を調べるために、終夜睡眠ポリグラフ検査を施行するケースもあります。
本人の心理的ストレスが大きく精神面が不安定である場合は、療養に専念するために休学することも選択肢の一つになります。
予防について
不登校の予兆となるサインがないか、日頃から注意することが大切です。以前より、物事に対して興味を示さず表情が暗くなる、自分の部屋にひきこもりがちになる、そして、学校生活のことを話さなくなったことなどです。
体調面では、適応障害にみられるような「こころと身体の症状」が出現していないかを確認してください。
もし、子どもの異変に気が付いたら、単に甘えの問題と決めつけずに医療機関に相談してください。
睡眠不足、昼間の眠気、睡眠の質が低下している症状があるときは、身体とこころに影響して学校生活に適応できなくなるケースがあります。そのため、日頃から正しい睡眠の知識を身に着けることが大切です。
出典:三宅典恵, 大学生を対象とした睡眠調査について 総合保健科学31,7-12,2015-03
不登校にならないために、自分の睡眠の状態について知っておくことは大切です。睡眠日誌で自分の睡眠時間を記録することで、睡眠リズムを把握することが大切です。さらに、平日、休日を問わず、起床時刻を一定にして、起床時に朝日を浴びることが大切です。朝方の光刺激は、体内時計をリセットするのに役立ちます。
出典:睡眠教育 – 福智町
遅い時間まで起きていてスマホ、ゲームをしてしまうなど、深夜型化した睡眠が不登校が起きる要因になっていることから、幼少時からスマホおよびゲーム依存にならないように生活指導することが求められます。
出典:増田彰則, 不登校と睡眠障害について (シンポジウム: 睡眠と健康, 2010年, 第51回日本心身医学会総会ならびに学術講演会)
ぐっすり眠れていないときは、睡眠専門医の相談を受けてください。