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ゲーム依存が睡眠に及ぼす影響について
ゲーム依存症とは
一日中ずっとゲームに心を奪われて、自分の意思でゲームを止められない状態が続き、その結果、日常生活に支障が出てしまう病気です。依存症の一種です。
世界保健機関が、ゲーム障害をこころの病気として、正式に認定しています。
出典:樋口 進, 病気認定されたゲーム障害の現状と今後, 国民生活 87,6-8,2019-10
世界的にもインターネットを使ったゲーム依存は深刻な問題となっており、思春期の子どもの4.6%(男性:4.6%、女性:1.3%)にゲーム障害がみられるという報告があります。
ゲーム障害が増えている理由
年々、ゲーム依存症の患者数は増加しており、スマホでゲームを行っている人が多いことが分かっています。ネット依存の約7割にゲーム障害がみられます。
なぜ、ゲーム障害が増加したのかと言うと、10年くらい前から、パソコン、スマートフォン、その他のネットに接続できる電子機器が普及したことがあります。
生活が便利になった反面、一部の人々が過剰にネットを利用することがていることで健康障害が生じた可能性があります。
出典:Video Games and Health – United Nations
子どものスマホ所有率が高くなっており、スマホを持っている年齢が低くなっている傾向も影響しています。最近では、小学生でもスマホの所持が増えている印象です。
一方、成人ではテレワークが増えている背景があり、会社に行かなくても自由に自宅でネットに接続できる環境になりました。同僚とのコミュニケーションが減っている中、ついゲームをしてしまうケースも少なくありません。
注意すべきことは、自宅にいなくても、すきま時間にスマホでゲームの世界に入ることができることです。通勤や通学の時間帯、昼食の時間、待ち時間など、一見、普通に生活しているように見えても、ゲーム依存となっているケースが増えている可能性があります。
2020年以降、新型コロナウイルス感染症が流行してから、オンライン化が進みました。どこにいてもネットにアクセスするような生活様式が進んだ背景も関係しているかもしれません。
出典:コロナ禍で広がるネット依存、ゲーム依存 – 国民生活センター
原因について
スマホ、タブレット、パソコン、ポータブルゲーム機器がネット回線につながることで、いつでも、どこからもインターネットにアクセスできます。
ソーシャルゲームと呼ばれる、同時に複数のゲームプレーヤーとコミュニケーションを取りながら競争あるいは対戦するタイプが普及しています。仮想空間の中で、自分自身が成長すること、仲間とつながるという楽しさがあることを実感します。
脳の中ではどんな変化が起きているでしょうか。社会性と理性をつかさどる前頭前野と本能と感情を司る大脳辺縁系のバランスに変化が起きます。つまり、脳への影響がゲーム依存の要因となっています。
具体的には、前頭前野の働きが悪くなり、大脳辺縁系が優位になります。その結果、感情による行動が優先する傾向になるので、ゲームに対する冷静な判断ができなくなります。
さらに、脳が興奮するときにドパミンと呼ばれる神経伝達物質が大量に出て、幸せな気分になります。しかし、強い刺激に慣れるとドパミンの分泌が抑えられてしまいます。そうすると、人はより強い刺激と多幸感を求めてゲームにのめりこみ、依存が形成されます。
症状の特徴について
1.身体の症状
- 食生活が乱れる
- 視力の低下と眼精疲労
- 昼夜逆転
2.精神の症状
- イライラ感、焦燥感、情緒不安定
- 攻撃性が増す
- やる気の低下
ゲーム依存症の影響について
状況 | 具体的な事象 |
---|---|
職場 | 遅刻、欠勤が多くなる |
学校 | 欠席、不登校が問題になる |
家計 | 浪費が増える、お金を盗む |
対人 | 家族、友人との関係が悪化する |
睡眠に及ぼす影響について
ゲーム依存に伴う生活パターンの変化によって、主に二つのタイプの睡眠の病気が発症します。概日リズム睡眠覚醒障害(睡眠相後退型)と睡眠不足症候群です。
種類 | 特徴 |
---|---|
睡眠相後退症候群 | オンラインゲームは夜に参加者が増える傾向があるので、寝る時間が遅くなります。そして、スマホ、モニターの明るい画面を長時間見ることで、メラトニンの分泌が低下します。その結果、睡眠リズムが後退します。寝つきが悪い、朝起きられないという症状が出現します。重症になると昼夜逆転になります。 |
睡眠不足 | ゲームの世界に夢中になっいる時間が長くなる結果、睡眠時間が短くなります。毎日のように、ゲームを長時間行う結果、睡眠負債が生じます。疲れがとれない、昼間の眠気が出現します。学校、職場において、居眠り、集中力の低下が問題になります。子どもの場合は、情緒が不安定、成長の遅れの危険があります。 |
なぜ、睡眠リズムが後退していく現象が起きるのですか?
深夜に電子機器のモニターから発せられるブルーライトが目から入ると、体内時計を遅らせてしまうからです。
寝る時間が遅くて睡眠不足になっている、および週末の睡眠相が後退している状況が子どもにあると、情緒不安定、意欲の低下が生じることがあります。
ADHDなどの発達障害の症状と類似しているので、発達障害を疑う前に睡眠習慣の評価と適切な指導を受けることが大切です。
出典:神村 栄一, 子どものインターネットとゲームへの依存,睡眠習慣そして学校不適応, 心理学ワールド91,25-26,2020-10
夏休み、冬休み、長い休暇のときにゲームの世界にどっぷり浸かった生活を送っていると、休み明けに通常の睡眠リズムに戻れない恐れがあるので、要注意です。
診断について
- ゲームの時間や回数をコントロールできない
- 日常生活でゲームを最優先にしてしまう
- 問題が起きてもゲームを継続する
上記の症状が1年以上続いており社会生活に支障をきたすときに、ゲーム障害と診断します。
ただし、診断するときは、発達障害、統合失調症、適応障害などが併存していることもあるので、こころの病気の評価も併せて行うことが大切です。
治療について
ゲームにのめりこんだ生活から抜け出すためには、医療機関に相談することが大切です。精神科が窓口になることが多いです。国内では、久里浜医療センターがネット依存に関する専門的な治療を行っています。
普段の生活についての聞き取りが行われます。そして、ゲームをする回数と時間帯など行動を記録してもらいます。もちろん、本人に治療の必要性について理解をしてもらうため、対話をしていきます。他の精神の病気がないかも調べます。
病院によっては、臨床心理士によるカウンセリング、ゲーム障害で治療を受けている患者とのグループミーティング、デイケア、入院による治療が行われます。
睡眠の病気を合併しているときは、睡眠日誌の記録と生活指導が中心になります。眠れないとき、そして、睡眠リズムを整える目的として薬物療法を検討することがあります。
予防法について
ネット環境に囲まれて生活しているので、家庭では子どもとネットを使うときのルールを話し合ってください。1日当たりのゲームをする時間の上限、スマホを使うことができる時間帯について目安を作っておくことが賢明です。
出典:香川県 健康福祉部
保護者できる対策として、子どものスマホの利用状況をみるためにペアレンタルコントロールを使うこと、そして、好ましくないサイトへのアクセスを制限できるフィルタリング機能を使うことも方法としてあります。
出典:ネットの危険からお子様を守るために保護者ができる3つのポイント – 政府広報オンライン
日頃から、ゲームが持っている危険性について子どもに伝えるとともに、ネット依存の兆候がないか気を付けて見守ることが大切です。ぐっすり眠れているか、生活リズムが乱れていないかも注意してください。
特に、中学生、高校生の場合、勉強が難しくなること、友人関係のトラブルがあると、安易にスマホを使ってゲームの世界に入ってしまうことがあります。不登校と引きこもりの原因にもなるので、普段と様子が異なる感じがあれば、学校の先生に速やかに相談しましょう。