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ヤングケアラーの睡眠不足による影響
ヤングケアラーとは
大人の役割として行うべき家事、家族の介護、身の回りの世話、見守り、家計を支えるための仕事などを日常的に行っている子どもを、ヤングケアラーと呼んでいます。
一般的には、18歳未満の子どものことを言います。
原因について
ヤングケアラーが発生する要因として、介護、育児を担う人手が家庭内において不足していることがあります。核家族、共稼ぎ世帯、ひとり親家庭の増加によって、親世代のみで家事を対処しきれません。その結果、子どもが「本来大人が行うべき仕事」を引き受ける結果になります。
生活費を工面している養育者が働けない状況があると、その家庭では経済的に困窮します。そのため、看護が必要な病人、要介護が人がいても、施設に入ることができません。そのため、子どもが親世代の代わりに家庭内の世話を引き受けざるを得ません。
兄弟姉妹がいる家庭では、年齢が高い兄と姉が、弟、妹の育児をしなければなりません。
ヤングケアラーは、どんなケアをしていますか?
話しかけ、見守りなどの精神的介護のほか、買い物、食事の用意、屋内移動、要介護者の身の回りの世話などがあります。
出典:ヤングケアラーの実態調査(令和3年度 鳥取県青少年育成意識調査)
一般的には、ヤングケアラーは兄弟の世話と家事全般に費やす時間が多いです。そして、ひとり親家庭では、子どもがお手伝いを超えた「親の役割」を代行することが多いので、ヤングケアラーが発生しやすいと考えられます。
出典:北山沙和子 他: ヤングケアラーについての実態調査-過剰な家庭内役割を担う中学生,兵庫教育大学学校教育学研究,27,25-29,2015.
ヤングケアラーが具体的にしていること
お手伝いの範囲を超えて、継続的に家族の世話を行うことは、子どもにとって負担になります。ヤングケアラーが直面している問題は、次の通りです。
ケアの種類 | 具体的な事例 |
---|---|
家事 | 病気のため療養中の家族の代わりに、炊事、洗濯、清掃、買い物をしている。 |
家族の世話 | 年下の兄弟姉妹の身の回りの手伝いをしたり、育児の仕事を担っている。 |
看護 | 慢性的な病気(がん、精神疾患、難病)で療養している家族の看病をしている。 |
介護 | 体の障害、認知症がある家族の見守り、食事、入浴、トイレの介助をしている。 |
労働 | 親が病気のため働くことができないので、家計を支えるため仕事をしている。 |
本人は、当たり前の生活であると捉えているため、周りの人が気づかないことが多いです。
ヤングケアラーが抱えている問題
大人が行うべき家事や家族の世話を恒常的に行っていると、ヤングケアラーは、学業不振に陥ったり、精神と体の健康を損ねる危険が高くなります。さらに、友人関係のコミュニケーションをと取りづらく、人間関係の悪化にもつながります。
出典:Chadi N et al. Caring for young carers in Canada. CMAJ. 2017;189:E925-E926.
合併する睡眠障害の特徴
ヤングケアラーは、睡眠時間が不足しやすい状況に置かれています。そのため、相当数の子どもが、睡眠負債を抱えている可能性があります。
文部科学省の子ども・子育て支援推進調査研究事業による調査では、ヤングケアラーが何らかの世話をしているために、やりたいけれどできていない行動が明らかになっています。
統計資料によれば、睡眠が十分に取れない子どもの割合が、中学生2年生の8.5%でした。全日制の高校2年生では、11.1%、定時制の高校2年生では、16.1%の割合でみられました。通信制の高校生になると、睡眠が不十分である場合が、22.4%という結果が報告されています。
出典:ヤングケアラーの実態に関する調査研究 – 三菱 UFJリサーチ&コンサルティング株式会社
埼玉県全域の高校2年生に相当するヤングケアラーの調査報告では、学校生活において、ストレス、孤独感、勉強時間がとれないなどの影響が出ています。睡眠不足を訴えている生徒の割合は、8.2%と概算されています。
1日当たりのケアの時間が長くなるにつれて、倦怠感、睡眠不足、ストレスが増加する傾向が確認されています。
上記の報告をもとに考えると、ヤングケアラーは慢性の寝不足によって学業だけではなく、こころと体にも影響を受けていることが分かります。
寝不足が続く結果として、成績不振、遅刻、不登校の問題が発生しやすい状況になっています。ヤングケアラーでは、日常生活の中で孤独を感じることがあり、ひきこもり、精神疾患の発症の危険が高くなる可能性があります。
早期発見するためのポイント
学校、地域において、子どもの様子を把握することが大切です。新潟県の福祉保健部が行ったヤングケアラーの支援検討会議において、ヤングケアラーの早期発見のためのアセスメントシートの活用が勧められています。
このチェックリストを使うことで、子どもがヤングケアラーに該当していないか確認することができます。具体的な項目は、以下の通りです。
- 子どもが健康に過ごしているか
- 教育を十分に受けているか
- 子どもらしい生活が送れているか
ヤングケアラーを発見しやすい人は、誰ですか?
学校の先生、スクールソーシャルワーカー、学習塾・習い事の先生、親類、近所の人、保健師です。
医療従事者は、子どもを診察するとき、どんな症状があると、ヤングケアラーの可能性を考える必要がありますか?
日中の眠気、集中力の低下、起床困難などの睡眠不足の症状です。抑うつ、元気がない、情緒不安なども、注意すべきサインです。なぜ寝不足になっているか、生活リズムが整っていないかについて、詳細に聞き取ることが重要です。
対処法について
ヤングケアラーは、毎日行っている家事および家族の手助けが当たり前のことであると思っています。しかし、学校の生活に支障が出たり、体とこころにストレスになっているときは、通学している学校の教師、スクールカウンセラーなどに話を聞いてもらうことが大切です。
自分のことを話しづらいと思ったら、政府が整備している相談先として、地域にある児童相談所(こども家庭庁)あるいは24時間子供SOSダイヤル(文部科学省)を活用してください。
岐阜市では、ヤングケアラーの相談ができる、子ども・若者総合支援センター“エールぎふ”があります。
今後、自治体でヤングケアラーが困っている問題を支援するための取り組みが増えていく印象です。自分の住んでいる自治体の公式サイトで情報を得ることを勧めます。
海外では、ヤングケアラーに関するサポートは整備されていますか?
イギリスでは、地方自治体が「助けを必要としているヤングケアラー」を発見する措置をとること、そして、どんな支援が必要であるか評価することについて、法律(Children and Families Act 2014)で定められています。18歳以降になってからもサポートを要するか、査定することも義務化されています(Care Act 2014)。