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脳が働かないのはなぜ?原因の種類を解説
はじめに
「頭が働かない…」そう感じたことはありませんか?集中力が続かない、記憶力が低下した、アイデアが浮かばない…。これらの症状に悩まされ、仕事や学業のパフォーマンスが落ちていると感じている方も多いのではないでしょうか。
実は、「頭が働かない」という状態は、多くの人々が直面している共通の課題なのです。その要因として、日々のストレス、睡眠不足、不規則な生活習慣など、様々な要因が複雑に絡みあっていることがあります。その一方、病気の影響が関わっている場合もあります。
もしかしたら、あなたも「なぜ自分はこんなに頭が回らないのだろう」と自己嫌悪に陥ったり、「このままでは仕事や人間関係に支障をきたすのでは?」と不安を感じたりしているかもしれません。
そこで、今回の特集記事では、頭が働かない原因と対策、セルフケアについて、睡眠専門医が語っていきます。あなたの悩みが解消して、本来の能力を取り戻すためのヒントが見つかると嬉しいです。
「頭が働かない」とはどんな状態なのか?
頭が働かないという表現は、脳の機能が通常のときよりも低下している状態を意味します。具体的な症状と急性と慢性の違いを説明していきます。
症状について
種類 | 特徴 |
---|---|
集中力の低下 | 一つの作業に長時間集中することができなくて、気が散りやすい。そのため、仕事がはかどらない。 |
記憶力の減退 | 新しい情報を覚えられない。過去のことを思い出すのに時間がかかる。以前は簡単に思い出せたことができなくなる。 |
思考力の鈍化 | 問題を解決するのに時間がかかる。アイデアが浮かばなくて、頭がぼーっとした状態になる。 |
判断力の低下 | 簡単な決断でも迷ってしまう、優先順位をつけるのが難しい。リスク評価が適切にできない。 |
反応速度の遅延 | 質問に対する返答が遅くなる、周囲の変化に気づきにくくなる。危険の回避行動が遅れる。 |
言語能力の低下 | 適切な言葉が出てこない、文章を組み立てるのに時間がかかり、会話の内容がまとまらない。 |
急性と慢性の違い
急性の症状は経験していることが多いタイプです。たとえば、寝不足の日や仕事でとても忙しいとき、運動をした直後などに「頭が働かない」と感じることがあるかもしれません。こうした症状は、一時的なもので、しっかり体を休めたり、リラックスしたり、セルフケアによって数日以内に改善するのが普通です。
一方、数週間以上「頭が働かない」と感じる状態が続くときは、慢性的な症状と考えられます。この状況が続くと、日中の行動(例えば、家事、仕事、運転、勉強)に支障が出始めます。
筆者が外来で聞き取ったところ、度重なるストレス、メンタルヘルスの不調、睡眠の問題、栄養不足、または何らかの体の病気が背景にあることが多い印象です。
頭が働かない原因
あなたの脳が働かない原因として、身体的な要因、睡眠の影響、ホルモンバランスの乱れ(更年期、生理前など) 、 精神的な要因 (適応障害、うつ病、不安障害など)、 慢性疲労、環境の影響、職場環境(過労、長時間労働)、季節や気候の影響、過剰なデジタルデバイス(スマホ、タブレットなど)の使用などがあります。よくある原因について説明していきます。
睡眠の問題
睡眠不足および睡眠リズムの乱れは、脳の機能を低下させてしまいます。
人は眠ることで、日中に蓄積された不要な情報を整理し、大切な情報を記憶として固定する作業を行います。また、脳細胞の修復も行われます。十分な睡眠がとれないと、これらのプロセスが十分に行われず、結果として「頭が働かない」状態を引き起こします。
よくある睡眠障害として、睡眠時無呼吸症候群と不眠症があります。これらの病気がある場合、睡眠の質が低下するので、日中の眠気や集中力の低下を引き起こします。
精神的な要因
ストレスを感じると、脳の中で「コルチゾール」というホルモンが出てきます。このホルモンは短い時間なら身体にとってプラスに働きますが、長期間のストレスによって過剰なコルチゾール分泌が続くと、脳の中で記憶を司る「海馬」という大切な部分を傷つけてしまいます。その結果、物事を覚えたり、新しいことを学んだりするのが難しくなってしまいます。
過重労働、残業、対人関係の悩みなど、職場関係で多いストレスも影響します。仕事と家事の両立、子育てのストレスがあり、頭が働かない問題を抱えている女性もいます。
ところで、ストレスに関係する病気として、適応障害があります。新しい環境や状況の変化にうまく適応できず、強いストレスを感じている状況です。頭が働かないという症状が現れることがあります。
うつ病は、やる気や集中力を奪い、頭の働きを鈍らせます。長く続くと、記憶を司る脳の部分にも影響が出て、頭が回らないという状況につながります。そして、不安障害の場合においても、同様のことが起きます。頭の中が心配事でいっぱいになり、他のことを考える余裕がなくなります。そのため、日常生活に必要な情報処理が難しくなり、「頭が働かない」感じを自覚することがあります。
ホルモンの変化
女性の方は、女性ホルモンの変化で頭の調子が変わることがあります。例えば、更年期に入ると、エストロゲンというホルモンが減少します。すると、「あれ?最近物忘れが多くなったかも」「集中力が続かないな」などと感じることが増えるかもしれません。更年期障害が発症しやすい時期には、抑うつ症状を訴える人もいます。
出典:高橋彩子 他; 更年期障害と更年期に好発する精神疾患, 昭和学士会雑誌;77(4):379-384,2017
ところで、生理前になると体調の変化を感じるという経験はありませんか。実は月経前症候群(PMS)が発症しており、生理の周期に連動して「頭が働かない」という影響が出ることがあります。具体的には「考えがまとまらない」「判断力が鈍った感じがする」といった症状などがあります。
慢性疲労
「慢性疲労」とは、単なる疲れではなく、長期間にわたって続き、しっかり休んでも回復しにくい疲労感のことを意味します。このような状態が続くと、心や体にさまざまな影響を及ぼします。
注目すべきことは、脳への影響です。慢性的な疲労があると、脳内の神経伝達物質のバランスが崩れ、情報を処理する力が低下しやすくなります。その結果、注意力を持続させることが難しくなったり、物事を覚えづらくなったり、考えをまとめるのに時間がかかったりすることがあるのです。つまり、頭が回らない状況になります。
その他の病気
頭が働かないと感じる原因は、これまで説明してきた要因以外にもあります。例えば、甲状腺機能障害は、ホルモンのバランスを崩し、思考力や集中力に影響を与えることがあります。また、ビタミンB12欠乏症や鉄欠乏性貧血といった栄養障害も、脳の働きを鈍らせる原因になることがあります。
さらに、高血圧や糖尿病などの生活習慣病も、長期的には脳の健康に影響を及ぼし、認知機能の低下につながる可能性があります。脳腫瘍や脳血管疾患といった脳の病気は、直接的に脳機能にダメージを与え、「頭が働かない」状態を引き起こすことがあります。
また、加齢に伴う認知機能の変化や、初期の認知症の症状として現れることがあります。アルツハイマー型認知症、パーキンソン病などの神経変性疾患は、頭の働きに影響する病気です。注意点として、高齢者に限らず、若い世代においても発症例があります。
対処法について
「最近、頭が働かない」と感じたとき、解決のカギは日々の生活習慣、特に睡眠にあります。まずは、睡眠時間を見直すことを勧めます。成人であれば7〜8時間の質の良い睡眠を目指しましょう。もちろん、睡眠リズムを一定にすることをお忘れなく。寝る前はスマホやパソコンのブルーライトを避け、リラックスできる環境を整えましょう。
規則正しい生活リズムを心がけましょう。毎日同じ時間に起きて、バランスの取れた食事を摂り、適度な運動を取り入れることを勧めます。アルコール摂取を中止してみることも考えてください。これだけでも、頭がすっきりする人もいます。
仕事面でも工夫ができます。無理のない仕事量に調整したり、職場環境を快適にしたりするのも効果的です。自分なりのストレス解消法を見つけて、十分な休養を取ることも大切です。
どんなときに病院に行くべきか?
受診のタイミング
一般的に、2週間以上、頭が働かない状態が続いたら、医師に相談するタイミングです。特に、日常生活や仕事に支障が出始めたら要注意です。
診療科の選び方
「何科に行けばいいの?」という疑問はありませんか。まずは、かかりつけ医に相談するのがおすすめです。状況に応じて適切な診療科を紹介してもらえます。例えば、脳神経内科、精神科、心療内科などが候補です。大きな病院で診察を受けたいときは、紹介状を書いてもらうと良いでしょう。
子どもの「いつも、ぼーっとする」、「忘れっぽい」、「ミスが多い」という状況は、発達障害の可能性も考慮する必要があります。子どもの場合には小児科や児童精神科が適切な診療科です。注意欠如・多動性障害(ADHD)、自閉スペクトラム症、学習障害などが疑われる場合は、背景に睡眠障害が潜んでいる場合も少なくありません。
もし、発達障害が疑われるようなら、地域にある発達障害専門の医療機関あるいは発達障害者支援センターが相談窓口として選択肢になります。