- ホーム
- 眠くて仕方がないときは何科で相談できるのか?
眠くて仕方がないときは何科で相談できるのか?
はじめに

「また会議中に意識が飛んでしまった…」
「十分寝ているはずなのに、どうして昼間こんなに眠いのだろう」
そんな経験はありませんか?あなたが感じているその強い眠気は、決して「怠けているから」でも「気合いが足りないから」でもありません。 実は多くの人が同じ悩みを抱えながらも、「眠気くらいで病院に行くのは大げさかも」「眠気の悩みがあるとき、何科を受診すればいいのかわからない」という状況が少なくありません。
日中の強い眠気は重要な身体のサインの可能性があります。放置すれば、仕事でのミスが増え、運転中の事故リスクが高まり、最悪の場合、取り返しのつかない事態を招く可能性もあります。
「もしかして自分だけ?」「周りに相談できない」そんな気持ちを抱えているあなたに、適切な診療科と受診の目安をお伝えします。
来院のきっかけ:強い眠気で悩む患者さんの本音

2025年1月から7月までに、眠気の治療を求めて来院された人のカルテから予診の内容を解析した上で、回答が多かったものを供覧します。
誰にも理解してもらえない辛さ
多くの患者さんが訴えを考察すると、周りが分かってくれないという状況があるようです。「ただ単に、夜更かししているだけ」「気合いが足りない」と誤解されがちで、本人の悩みが軽視されてしまうことがあります。
どこに相談すればいいかわからない
眠気の症状で病院を受診すること自体に戸惑う方も多く、どの病院に行けば良いのか、何科を受診すべきか分からないという問題もあります。受診が先延ばしになることで、症状が悪化してしまう事例もあります。
実は、本人の努力ではどうすることもできない過眠症が、あなたの居眠り、ひどい眠気の原因であることもあります。
眠気が日常生活に及ぼす深刻な影響

- 仕事でのミスが増え、評価が下がる
- 産業事故の発生
- 運転中の居眠りによる事故の危険
- 職場、学校での人間関係の悪化
- ストレスの増加による悪循環
眠気を放置することで起こる「避けたい結末」

事象 | 特徴 |
---|---|
職場での信頼失墜 | 「また居眠りしている」と上司や同僚から白い目で見られ、仕事を外されることが多くなる。昇進の機会を逃し、仕事を続けられない可能性もある。 |
事故の加害者になる恐怖 | 運転中の居眠りで人身事故を起こし、相手に重篤な後遺症を負わせてしまう。また、社用車なら、会社の評判に影響することもある。 |
学生の将来への影響 | 子どもの場合、授業中の居眠りで留年や退学の危機になることがある。内申点の低下、進路、将来の夢や目標を修正する必要に迫られる懸念がある。 |
社会復帰の困難 | 強い眠気が続くので、まともに働けない状態が続く。集中力の低下、作業効率の低下から、なかなか、自分に合った仕事に就けない。 |
健康の悪化 | 眠気の背景にある病気(重症の睡眠時無呼吸症候群)が未治療であると、心臓病、脳卒中な、突然死などの発症リスクが高くなる。 |
受診を検討すべき症状の目安
緊急度:高い(すぐに受診を)
- 運転中や危険を伴う作業中に意識が飛ぶ
- 会議中や授業中に居眠りを繰り返す
- 十分な睡眠時間をとっても、2週間以上日中の眠気が続く
- 眠気のために仕事や学業に支障が出ている
- すでに居眠り事故を起こしている
1〜2週間経過しても改善しなければ受診を
- 夜中に何度も目が覚める、または早朝に目覚めてしまう
- 大きないびきをかく、眠っているときに呼吸が止まる
- 夕方から夜にかけて足がムズムズして眠れない
- 夢を見ながら大声を出したり、体が動いたりする
まずは生活習慣を見直し1ヶ月改善なければ受診を
- 食後の一時的な眠気
- 夜更かし後の眠気
- ストレスがある時期の眠気
症状別:何科を受診すべきか

1. 睡眠外来・睡眠科
- 原因不明の強い眠気
- 複数の睡眠症状がある
- 他科で改善しない睡眠問題
睡眠外来は、睡眠障害全般に対応する専門性の高い窓口です。終夜睡眠ポリグラフ検査、反復睡眠潜時検査など、精密検査を行い、正確な診断に基づいた治療ができます。
睡眠障害の診察を行う専門施設として、日本睡眠学会専門医療機関(A型)は相談窓口として適しています。
2. 呼吸器内科・耳鼻咽喉科
- 大きないびき
- 睡眠中の無呼吸
- 起床時の頭痛や口の渇き
睡眠時無呼吸症候群の診断と治療に優れています。CPAP治療など、専門的な治療機器による管理が可能です。
3. 精神科・心療内科
- ストレスや不安による眠気
- うつ症状を伴う眠気
- 睡眠リズムの乱れ(昼夜逆転など)
メンタルヘルスの観点から睡眠問題にアプローチし、「眠れない」から眠いという病状を解決することが得意です。薬物療法や認知行動療法を組み合わせた治療を行います。
子どもの眠気の場合で、発達障害が原因となっていることが判明することがあります。その場合は、児童精神科が対応します。
4. 脳神経内科
中枢神経系の問題による睡眠障害の診断と治療を専門とし、詳細な神経学的検査を行います。中枢性過眠症のほか、睡眠関連運動障害、パラソムニアの解決が得意です。
5. 内科
- まずは気軽に相談したい
- 他の身体症状も併発している
- 生活習慣病の治療中
身体的な病気が眠気の原因となっていないかを調べ、必要に応じて高次医療施設の専門科への紹介を行います。
年代別の注意点について
強い眠気の原因は年代によって大きく異なります。あなたの年齢に多くみられる原因を知ることで、より適切な診療科を選択できます。
10代・20代の方へ
思春期に近い時期に多いのは、夜型生活による体内時計の乱れです。スマホやゲームの影響で就寝時間が遅くなり、寝不足、睡眠相後退症候群を引き起こすケースが増えます。
また、中学生、高校生の頃から20代前半にかけては、ナルコレプシーや特発性過眠症が発症しやすい時期でもあります。もちろん、発達障害が関わっているケースもあります。
他の要因として、受験や就職活動などの精神的ストレスも眠気の大きな要因となります。中には、うつ病、統合失調症などのメンタルの病気が潜んでいる事例もあります。これらの症状でお悩みの場合は、睡眠外来や精神科・心療内科での相談をお勧めします。
出典:Landtblom et al. The sleepy teenager – diagnostic challenges. Front Neurol. 2014 Aug 4;5:140
30代・40代の方へ
働き盛りのこの年代では、寝不足(残業、不規則な勤務時間)、睡眠時無呼吸症候群などが多い原因となります。責任のある立場での仕事のストレスや長時間労働による過労も深刻な問題です。
激務によって、意識が飛ぶような眠気を経験する人もいますが、睡眠負債に気付いていない事例もよく経験します。
一方、いわゆる中年太りの問題、体重増加や首回りの脂肪蓄積により気道が狭くなることが主な要因です。また、生活習慣病(高血圧、糖尿病、脂質異常症)の影響で睡眠の質が低下することも少なくありません。このような症状がある方は、循環器内科や睡眠外来での診察を検討してください。
50代以上の方へ
中高年期に入ると、閉塞型睡眠時無呼吸に加えて、むずむず脚症候群、周期性四肢運動障害、レム睡眠行動障害による睡眠障害が増える傾向です。
また、見逃してはならないのが認知症の初期症状としての眠気です。「年のせい」と決めつけずに、記憶力の低下や判断力の衰えと併せて眠気が現れている場合は、早期の診断が重要です。脳神経内科や睡眠外来での詳しい検査をお勧めします。
女性特有の注意点

女性の場合、ホルモンの変化が眠気に大きく影響します。月経前症候群(PMS)では、プロゲステロンの増加により生理前に強い眠気を感じることがあります。
40代後半から50代にかけての更年期では、エストロゲンの減少により睡眠障害が起こりやすくなります。睡眠時無呼吸症候群の発生は、閉経後に増えることが知られています。
出典:更年期の睡眠はどんなもの? – ResMed SleepSpot
甲状腺機能低下症は女性に発症しやすいホルモンの病気(特に、橋本病)で、眠気や倦怠感を引き起こすことがあります。
これらの症状でお困りの場合は、婦人科、内科、睡眠外来での相談を勧めます。