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睡眠関連てんかんの基礎知識
てんかんとは
脳の一部の神経細胞が、一時的に異常な電気活動を引き起こすことによって、体の痙攣、意識消失、感覚および感情の変化などが現れます。子どもから高齢者まで、発症する脳の病気です。
てんかんが睡眠の質に及ぼす影響
夜間のてんかん発作によって、睡眠の断片化が生じます。そのため、途中で目が覚めることが多くなります。実際に目を開けなくても、脳波上の覚醒が発生するため、眠りの質が低下します。
結果として、目覚めが悪い、熟睡感がない、日中の眠気が発症します。そして、これらの症状によって、生活の質は低下します。
どのくらいの割合の人が影響を受けていますか?
てんかん患者の55%に不眠症があり、72%の患者において睡眠の質の低下があると報告されています。
出典:Vendrame et al. Insomnia and epilepsy: a questionnaire-based study. J Clin Sleep Med. 2013;9:141-6.
睡眠の異常とてんかんの相互関係
てんかんのある人が何らかの睡眠障害を合併していると、眠りの質が悪くなります。そして、不安定な眠りによって、てんかん発作がさらに悪化します。悪循環になっていると考えられています。
出典:Gibbon et al. Sleep and epilepsy: unfortunate bedfellows. Arch Dis Child. 2019;104:189-192.
よくある睡眠障害の種類は何か?
てんかん患者に併発しやすい眠りの異常として、不眠症、睡眠時無呼吸症候群、そして、睡眠時随伴症があります。
夜間にてんかん発作が起きると、脳波上の覚醒が増加して、不安定な睡眠構築になります。身体の回復に十分な眠りにならないので、日中の眠気が生じます。
てんかん患者では、メンタルヘルスに関係する病気が併発することが多いことが知られています。特に、うつ病と不安障害に伴う不眠、ストレスが関係しています。
睡眠時無呼吸症候群が発生しやすい要因として、抗てんかん薬による副作用(上気道の筋緊張の低下、食欲の亢進による体重増加)が指摘されています。他の理由として、てんかん発作が脳にある呼吸中枢に影響して、無呼吸発作が起きるメカニズムが考えられています。
一方、眠っているときに呼吸停止による低酸素血症が生じます。そのため、てんかん発作が起きやすくなります。
大きないびきをかく、日中の眠気、集中力の低下などの症状が出現します。
夜間の異常行動を特徴を有するパラソムニアがあると、てんかんを併発していることが多いです。子どもでは、錯乱性覚醒、夢遊病、睡眠時驚愕症などの合併が多く、大人では、レム睡眠行動異常症の併発に注意が必要です。
本人が怪我をすること、眠りが浅くなることなどの影響があります。
出典:吉澤 門土 他: てんかん患者における睡眠障害, 総合病院精神医学;26,1,48-57,2014
診断の方法
てんかんが疑われるときは、問診による症状の経過、睡眠の様子、薬の服用の有無について確認します。
てんかんと睡眠時随伴症、睡眠関連運動障害、あるいは睡眠時無呼吸症候群の合併が考えられるときは、終夜睡眠ポリグラフ検査によって評価を行います。
眠っているときの様子を観察することが重要であるため、検査の経験が豊富な臨床検査技師の常時監視が必須です。そして、脳波検査のときは、ビデオカメラによる同時記録も行います。
頭部の器質的異常が存在しているか調べるときは、頭部MRI検査による画像診断が有用です。
治療法について
てんかん発作の診断が確定したときは、脳神経内科の医師が抗てんかん薬を処方します。併存する睡眠障害があれば、同時に治療を行います。不眠に対しては、睡眠薬の処方を考慮します。
睡眠時無呼吸の合併が判明した場合は、夜間の呼吸と睡眠を安定化させるために、CPAP治療あるいは口腔内装置による治療を検討します。
予防法について
睡眠不足、ストレスがあると、てんかん発作が悪化しやすいので、十分に眠り、日頃からストレスコーピングを行うことが大切です。
アルコール摂取、不規則な生活リズム、過労は、病状を増悪させる要因になるので、普段の生活習慣の見直しをしましょう。さらに、抗てんかん薬の飲み忘れないことが大切です。
出典:はじめててんかんと向き合う方へ (日常生活の過ごし方) – てんかん情報センター