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睡眠負債の症状と対処法について
睡眠負債とは何か?
長い間、睡眠不足が続き、その負債が蓄積されることで健康状態が悪化する状態のことです。負債を返済するためには、たくさんの睡眠が必要となります。
出典:CDC
慢性的に寝不足がある状態について、借金が積み重なっていくという例えから名づけられています。スタンフォード大学において睡眠医学の研究を行っていたウィリアム・デメント先生によって提唱された概念です。
発生原因について
仕事と家事の両立、子育ての時間、長い通勤時間など、生活する上でやるべきことが多くなっていることがあります。その結果、十分に眠ることができなくなっています。
厚生労働省が令和元年に実施した「国民健康・栄養調査」の結果によれば、睡眠時間が6時間未満である人の割合が、男性30~50代および女性の40~50代の約半数にみられました。
出典:令和元年 国民健康・栄養調査結果の概要 – 厚生労働省
60歳までの成人について、7時間以上の睡眠時間が推奨されていることを考慮すると、働く世代において、本人が自覚せずに睡眠負債になっている可能性があります。
NHKが実施した2020年の国民生活時間調査では、日本人の平日の睡眠時間は1970年から2010年まで減少の傾向であることが報告されています。同時に、土日は平日よりも睡眠時間が長いことが分かっています。
睡眠の長さだけではなく、質の問題も影響しています。就寝前にスマートフォンを使う機会が増えていること、仕事のストレスなど、眠りの質に影響する要因が増えています。
最近では、コロナ禍を契機としたテレワークが増えています。従来の生活リズムからの変化に慣れず、睡眠覚醒リズムが不安定になっている人もいます。
大人だけではなく、子どもでも睡眠負債が発症することがあります。受験への準備のために塾通いが増え、深夜まで課題をこなすのに追われる日々が続きます。同時に、ストレスを解消する目的で、一人の時間を確保しようと、スマホ、ゲームなどに夢中になる子どもがいます。
夜型の生活に慣れた家庭で育った子どもは、成人になってからも、睡眠不足がある状態で過ごしていることに気づいていないかもしれません。
睡眠負債の症状
- 日中の眠気がある
- あくびが多い
- 疲れがとれない
- 記憶力が落ちる
- 注意力が散漫になる
- うつ症状、イライラ感が出現する
平日の睡眠時間が短く、休日にまとめて寝る傾向があります。慢性の睡眠不足を反映した症状が出現します。
健康への影響について
慢性の睡眠不足が続くことで、日中の眠気、集中力の低下が生じます。
十分な眠りがとれないと、自律神経、代謝機能にも悪影響が出るので、体の病気も起きやすくなります。具体的には、高血圧、糖尿病、肥満症などが発症リスクが高くなります。
寝不足があると、インスリン、コルチゾール、レプチンなどの肥満に関係するホルモン調節にも影響が出現することが知られています。その結果として、食欲と摂食行動にも変化が生じるようになります。
出典:Bayon et al. Sleep debt and obesity. Ann Med. 2014;46:264-72.
精神面においては、眠れていない状況が続くため、メンタルヘルスの不調が起きやすくなります。具体的には、うつ病の発症にも関わってきます。
子どもの場合は、眠気によって、情緒不安定になったり、多動になったり、行動の異常が現れることがあります。
認知症との関連はありますか?
海外の研究報告では、睡眠不足によってアミロイドβが脳内の蓄積するというエビデンスがあります。睡眠不足は、アルツハイマー型認知症の発症の一因になっていると言えます。
出典:大阪府医師会
治し方について
睡眠負債を解消するためには、毎日、あなたにとって必要な睡眠時間の確保することが大切です。同時に、生活リズムを安定させることが大切です。
週末の寝だめでは、「長期間かかって失われた睡眠」をすぐに取り戻すことができません。
年齢、体質によっても、必要な睡眠時間は異なります。日中の眠気がなく、集中力を保つことができる時間を目安にして、ぐっすり眠ることが目標です。
十分な時間を眠っても眠気が残るようであれば、睡眠の質が低下している可能性があります。そのときは、睡眠専門医による評価を勧めます。