- ホーム
- 寝すぎが健康に及ぼす影響
寝すぎが健康に及ぼす影響
寝すぎとは何か?
私たちが健康な状態のときに、体が必要としている以上に長く眠ることを、寝すぎと言います。必要以上に長く眠ると、身体や心にさまざな弊害が生じることが知られています。
寝すぎの時間の目安は、9時間以上です。
一般的に、成人では7~9時間の睡眠が推奨されていますが、健康の状態。生活スタイル、体質などの要因で、睡眠時間は変わります。
出典:Sleep Science Friday: Oversleeping – European Sleep Research Society
どのくらいの睡眠時間が十分と言えますか?
年代別に異なりますが、年代別に日中の眠気、集中力の低下がない時間が適切です。ただし、体質的な要因も考慮すべきです。
出典:Ohayon et al. Excessive sleep duration and quality of life. Ann Neurol. 2013;73:785-94.
午前の遅くまで目が覚めることなく眠っている人、目覚まし時計のボタンを押してから再び眠りに入る人など、寝すぎのケースはさまざまです。昼寝もするけど、夜間の睡眠時間も長い場合もあります。
今回、寝すぎの特徴について、睡眠専門医が解説します。
寝すぎの理由について
原因 | 特徴 |
---|---|
年齢 | 一般的に、子どもでは成人と比較して睡眠時間が長くなります。思春期までの年齢であれば、1日当たり9時間以上、眠ることもあります。 |
体質 | 成人になっても、10時間以上の睡眠が必要である体質を持っている人を長時間睡眠者と呼んでいます。寝不足がなければ、支障が出ません。 |
疲労 | 身体的に疲労が溜まっていると、体の状態を回復させるために、普段より多く休息が必要になります。その結果、より長く眠るようになります。 |
睡眠不足 | 平日に眠れない状況が続くと、週末に睡眠時間が長くなります。普段の寝不足を代償するためです。休日に、正午近くまで眠ってしまう人もいます。 |
睡眠障害 | 眠りの病気の中で、特発性過眠症およびナルコレプシーは居眠りが多いことが特徴です。睡眠時無呼吸では、夜眠っても、昼間も居眠りすることがあります。 |
体の病気 | 風邪、外傷、術後など、身体の回復が必要なときは、多くの睡眠を要します。甲状腺機能低下症、アルツハイマー病、パーキンソン病があると、睡眠が多くなります。 |
こころの病気 | うつ病あるいは季節性感情障害では、過眠を呈することがあります。一方、統合失調症の消耗期では、過眠が特徴的です。発達障害でも、寝すぎの症状が出現します。 |
薬と嗜好品 | 睡眠薬、精神安定剤を服用していると、起床時にも薬の作用が残ることがあります。アルコールの摂取は、眠りの質の低下、翌日の疲労感を引き起こります。 |
症状について
寝すぎによって起きる症状の中で、頻度の高いものは頭痛と疲労、筋肉痛です。
必要以上に睡眠時間が長くなることで、脳血管が拡張し周辺にある神経を刺激します。その結果、頭が痛いという症状が問題になります。
睡眠と覚醒を調節している体内時計にも影響し、睡眠リズムが乱れます。寝すぎによって、末梢にある臓器の働きにも変化が生じ、気持ち悪いという症状と体調不良の原因になります。いわゆる、時差ボケような症状が出現し、全身の倦怠感を感じることになります。
いつもより長く眠ることで、同じ姿勢が続くことで筋肉の血行不良が生じて、腰、肩、首周りの筋肉に影響します。その結果、筋肉痛を引き起こします。
寝すぎが身体に及ぼす影響
体重の増加
疫学調査によれば、5~6時間の睡眠あるいは9~10時間以上の睡眠をとっている人は、将来的に体重が増えやすい傾向があることが分かっています。この報告では、寝すぎの場合は、肥満になるリスクを示唆しています。
寝すぎによって、運動不足になることや、活動する時間帯が短くなることが影響しているかもしれません。寝ている時間が長いと、カロリー消費の減少が考えられます。
記憶と思考力の低下
70歳以上の世代において、5時間未満あるいは9時間以上の睡眠をとった場合は、年齢で推奨されている睡眠時間をとっている人と比較して、認知機能の低下が報告されています。
心臓と血管の病気の発症が高くなる
9時間以上の睡眠をとっている人は、心筋梗塞、狭心症などの虚血性心疾患、高血圧、脳梗塞による死亡リスクが有意に高いことが知られています。
寝すぎによって、肥満、病気が起きるリスクがあります。あなたが健康な状態のときに、必要以上に眠ることは、避けるべきです。
対処法について
規則正しい就寝と起床時間を一定にすることが大切です。寝すぎによって、睡眠リズムの乱れを避けるためです。特に、平日と休日の睡眠時間が大きく異なるときは、注意してください。
睡眠時間が短くても、長すぎても、健康に悪影響を及ぼすことが分かっています。睡眠衛生について、日頃から見直すことが大切です。
もちろん、良い眠りと身体の休息のために、睡眠の質も大切な要素です。
寝すぎの場合でも、睡眠の質が低下しているため、長く眠っている場合があります。
症状が続いている場合は、眠りの質について、医師に相談することを勧めます。睡眠障害によって、あなたの睡眠時間が延長している可能性があるからです。寝ても寝ても眠いという悩みはありませんか?
睡眠専門医に相談する前に、2週間ほど睡眠日誌を書いて、診察を受けるときに提出すると診療が円滑に進みます。