- ホーム
- 睡眠・覚醒相後退障害の原因と症状
睡眠・覚醒相後退障害の原因と症状
睡眠相後退症候群はどんな病気か?
体内時計が、普通の人よりも遅れているために、夜、眠くならない、朝起きられないという症状が問題となります。睡眠リズムが後退していることから起きる病気です。概日睡眠覚醒リズム障害に分類されています。
原因について
私たちは、朝起きて、昼間に活動して、夜眠るという生活リズムを持っています。体温、ホルモン、血圧など、さまざまな周期があります。
その中で、ある時間帯になると、眠くなったり、目が覚めたりする、睡眠覚醒リズムがあります。体内時計の働きによるもので、約24時間のリズムであるため、概日リズムと呼ばれています。
自分の睡眠リズムと社会で活動したい時間帯のミスマッチがあり、朝起きられない、眠いなどの症状が出ます。睡眠相後退症候群は、体内時計が遅れていることが原因です。
昔から宵っ張りで朝寝坊という方もいますが、家庭での生活リズムも関係しているようです。思春期以降は次のようなことがきっかけで、睡眠リズムが後退することが多いです。
- 部活動や塾が夜遅い時間まで及ぶ
- 深夜までゲーム、スマホを操作している
- 夜間のアルバイトを始めた
生活が夜型になるときに発症しやすいことが知られています。特に受験時期に増える傾向です。10代ではストレス発散のためにオンラインゲームを夜遅くまで夢中になってやっていることもあります。
夜遅い時間にブルーライトを浴びる環境にいると、体内時計に影響して松果体のメラトニン分泌が抑制されます。その結果、眠くなる時間帯が後退していきます。
思春期に多くみられる病気として、起立性調節障害があります。この病気は、自律神経の機能が低下することで、起床時の倦怠感、頭痛、ふらつきの症状が出現します。春から夏にかけて悪化することが多いです。
朝は体調が良くないのですが、夕方から夜にかけて元気になります。その結果、夜型の生活になる傾向があります。
働く世代では、テレワークの影響も少なくありません。通勤時間がなくなり、普段より朝遅くに起きて、夜更かしをする傾向になりがちです。在宅勤務中に、ゲーム、漫画、スマホなどに没頭することで、就寝時間が遅れることがあります。
症状について
午前1時から3時過ぎまで眠れない
正午近くまで眠っている
アラームの音が聞こえない様子です。学校に遅刻してはいけないと、保護者が何とか起こそうとしますが、無理やり起こされるので、頭痛、頭が重い、だるい、まだ眠たい、食欲がないという症状が問題となります。
出典:eヘルスネット
本人にとって、必要な睡眠時間が確保されていないので、睡眠不足の状態となり、勉強する能力が落ちます。午前中は、ボーっとしていて、居眠りする場合が多いです。眠気の問題が続くので、うつ症状を併発することもあります。
居眠り病のナルコレプシー
睡眠相後退症候群の場合、無理やり起こして午前の授業を受けると、本人は耐えられず眠ってしまいます。思春期において、ナルコレプシーは日中の眠気をきたす鑑別すべき睡眠障害です。
チェックリスト
- 朝起きれない
- 目を覚まそうとすると機嫌が悪い
- いつも寝坊です
- 目覚まし時計に気づかず眠っている
- 午前中はボーっとしている
- 午後から元気になっていく
- 夕方から夜にかけて目が冴えている
- 夜更かしが多い
朝起きれない問題
日常生活において、どんな影響が出ますか?
学生では、遅刻が多く、休みがちになることが多くなります。成績の低下、進級が危なくなりります。大学生では、単位不足による留年あるいは退学になる場合があります。社会人では、勤怠の評価が落ちるので、退職せざるを得ないこともあります。
どんな人が睡眠外来に相談していますか?
中学、高校、大学受験を控えている学生さんの保護者からの「朝起きれない」という悩みを相談されています。夏休み、冬休み明けに睡眠リズムが崩れることが多くなっている印象です。外来で養育者に聞くと、「目覚まし時計に反応しない」、「体を揺すっても、なかなか起きてくれない」などが多い印象です。
発達障害と関係はありますか?
ADHD、自閉スペクトラム症(ASD)では、睡眠障害の症状が出ることが多く、不眠と起床困難が現れる場合あります。
寝坊の習慣によって学校に行けないと、午前中の授業に間に合わないので学業にも影響が出ます。何とか学校に行けても、眠そうにぼーっとしていることが多いと、担任の先生からの評価、友達の視線も気になるところです。
さまざまな影響が出ますが、こういった状況は、本人の意志が弱い、怠けているなどではなく、睡眠相後退症候群という病気が原因であることがあります。甘えの問題ではないことを理解してあげることが重要です。
どのくらいの割合の人にみられる病気ですか?
思春期から若い世代の大人において、7~16%の頻度であると報告されています。
診断の方法
外来の通院によって、睡眠リズムを評価することから始めます。眠りついての問診、寝る時間、起きる時間、生活環境などを聞き取りします。
自宅では、睡眠日誌の記録を2週間行います。毎日、何時に寝たか、起床したか、目が途中で覚めたか、昼寝の時間などを把握するために行います。
基本的に、問診による評価と睡眠リズムの確認によって、睡眠相後退症候群と診断することができます。終夜睡眠ポリグラフ検査を施行することは、殆どありません。
出典:Sleep Education by the AASM
治療法について
生活習慣の見直し
実際には、少しずつ、具体的には10~20分程度でも良いので、就寝時間を早めていきます。就寝前にカフェインを摂取しないこと、部屋の照明を少しずつ落としていくことが大切です。携帯ゲーム、スマホを夕方以降に行う習慣があるときは是正しましょう。
光療法
朝方に光を浴びることで、睡眠リズムが前向きに補正されることを利用して、治療するものです。通常、2500ルクス以上(2時間)の光を浴びることをします。実際には自然に目が覚める1-2時間前に光療法を行います。
薬物療法
メラトニンは、私たちの脳に夜を知らせる松果体から出ているホルモンです。この作用をもつメラトニンアゴニストと呼ばれる薬(薬剤名:ラメルテオン)を治療に用いることがあります。この薬を少量用いると、睡眠リズムを前進させる効果があります。
ビタミンB12には、睡眠相を整える作用があると考えられています。大きな副作用はありません。しかし、睡眠リズム障害に対するメコバラミン処方について、保険適応はありません。
出典:スイミンネット
時間療法
時差療法とも呼ばれています。就寝時刻を少しずつ後退させていく方法です。当然、起床時刻も遅れていきます。徐々に睡眠リズムを後ろ向きに調節していくことで、自分が起きたい時間までコントロールする方法です。
予防法について
- 就寝時間を一定にする
- 夜更かしをしない
- カフェイン、刺激物を避ける
- スマホ、ゲームの時間に決まりを作る
- 夕方以降の照明を徐々に落としていく