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こころの病気に併発する睡眠の問題
精神疾患の睡眠障害とは
精神疾患があるときは、睡眠が不安定になります。不眠、過眠、睡眠覚醒リズムの異常、異常行動などが出現します。
うつ病、双極性障害、統合失調症、パニック障害、全般性不安障害、心的外傷後ストレス障害などの「こころの病気」がある殆どの人において、不眠あるいは過眠が現れます。
出典:内山 真 他; 精神疾患にみられる不眠と過眠への対応,精神神経学雑誌,122,899-905,2010
一般の人において、「精神疾患に併発する不眠」が睡眠障害と同義語として捉えられていることが多いです。
小児の発達障害では、入眠困難、睡眠維持の問題、日中の眠気などが認められることが報告されています。そのため、精神症状のみならず睡眠障害の治療を並行して行うことが大切です。
出典:亀井 雄一 他; 児童精神科疾患に併存する睡眠障害の特徴, 精神神経学雑誌,112:921-927, 2010.
こころの病気と睡眠障害の相互関係
睡眠が安定しない状況が続くと、精神疾患が発症するリスクが高くなります。一方、精神疾患があると、睡眠時間、眠りの質、睡眠と覚醒リズムに悪影響を及ぼします。
うつ病と不眠の関係は、相互に影響を及ぼしていることが知られています。うつ症状があると、眠れない症状がみられます。反対に、眠れない症状が続くときは、うつ病が発症する危険が高くなります。
不眠があると、どのくらいの精神疾患の発症リスクがありますか?
不眠がない人と比較すると、重症の不眠症がある人では5.0倍、中等症では2.6倍、そして、軽症では1.7倍、精神疾患が起こりやすいです。
薬剤の影響
精神疾患があると、病院で薬による治療を受けることが多いです。薬剤は、こころの状態を改善させる作用があります。その反面、薬の副作用として、他の睡眠障害が起きてしまうことがあります。
代表的な例として、睡眠時無呼吸症候群、むずむず脚症候群などが、精神疾患を治療する薬の副作用によって、発症する場合があります。
出典:Sutton EL. Psychiatric disorders and sleep issues. Med Clin North Am. 2014;98:1123-43.
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うつ病
入眠困難、熟眠障害、早朝覚醒などの不眠のほか、過眠が出現します。不眠とうつ病の発症には、双方向の関係があります。
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適応障害
ストレスによって気分の落ち込みが生じて、不眠が出現します。ストレス要因が消失すれば、症状は速やかに軽減する傾向です。
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不安障害
過剰な不安と自律神経症状を伴い、不眠と睡眠不足が生じます。重度の強迫性障害では睡眠相後退型の睡眠障害が現れやすいです。
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統合失調症
急性期では、幻聴、被害妄想のため、入眠困難と中途覚醒が必発します。一方、休息期になると、疲労感、過眠の傾向が現れます。
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双極性障害
うつ病エピソードでは不眠、躁病エピソードでは睡眠時間の短縮が特徴です。単極性うつ病と比べると過眠が現れやすいです。
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認知症
睡眠と覚醒を調節する働きの低下、中枢神経系の障害によって、概日リズム睡眠障害、レム睡眠行動障害の併発がみられます。
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発達障害
ADHDおよびASDの人の半数以上が、睡眠の問題を抱えています。入眠困難、昼夜逆転、起床困難、過眠が現れます。
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自律神経失調症
更年期、加齢、ストレスなどの要因によって、自律神経が乱れます。そして、不快な身体症状とメンタル不調、不眠が生じます。
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心的外傷後ストレス障害
PTSDは悪夢、不眠が現れることが特徴です。過去に受けたトラウマによって、夜間の睡眠が不安定になります。
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治療について
睡眠障害の症状が、こころの病気によって引き起こされているときは、適切な向精神薬を選択することが大切です。病気の種類と病状の程度に合わせて、薬の種類と容量を調整していきます。
精神疾患に伴う不眠を治療する目的のため、睡眠薬が使用されることが多いですが、治療効果が不十分であるときは、他の睡眠障害の合併を考える必要があります。そのときは、終夜睡眠ポリグラフ検査によって眠りの質を調べることを検討します。
こころの病気を持っている人は、睡眠障害の治療を受けることが、精神状態の改善にも役立ちます。
出典:Freeman et al. Sleep disturbance and psychiatric disorders. Lancet Psychiatry. 2020;7:628-637.