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妊婦のいびきが悪化したときの改善策とは
妊娠といびき:妊婦とパートナーのためのガイド
妊娠中のいびきは、パートナーにとって音の問題が気になるかもしれません。また、「自分のいびきが入院中に相部屋で迷惑をかけてしまうかもしれない」と心配している女性も少なからずいます。
しかし、それだけではないのです。実は、妊婦のいびきは、健康にも影響を及ぼす可能性があることを知っていますか。
妊娠の経過に伴って起きる体重の増加やホルモンの変動は、高血圧、糖尿病だけではなく睡眠時無呼吸症候群と呼ばれる睡眠の病気を併発することもあります。母体のみならず、胎児への潜在的なリスクをもたらす可能性もあります。
妊婦のいびきが引き起こす可能性のあるリスクについて、深く掘り下げて考えたことはありますか。今回のブログ記事では、いびきの潜在的なリスクを理解して、安心して妊娠期を過ごすための具体的な対策を伝えます。
妊娠中のいびきの原因
妊娠期間にいびきをかく理由は、母体のさまざまな変化によって、気道が狭くなることで引き起こされます。この時期に見られる体重の増加は、気道周囲の軟部組織が気道を圧迫して空気の通り道を狭くします。特に、妊娠後期にこの傾向が強いことが分かっています。
妊娠ホルモンの一つ、エストロゲン増加は、いびき発生に関与しています。ホルモンの働きによって、鼻の粘膜が腫れやすくなり、通常よりも鼻詰まりが生じやすくなります。鼻閉が口呼吸を促し、夜間にいびきをかく一因になります。
さらに、妊娠中期から後期にかけてプロゲステロンが増えます。このホルモンには、呼吸器系の筋肉をリラックスさせる作用があります。そのため、のどの筋肉が通常よりも弛緩するので、気道が狭小化します。呼吸の回数を増やす効果もあるため、気道粘膜が振動しやすくなるというメカニズムも、いびき発生に関係しています。
いびきが妊婦に及ぼす影響
妊娠中のいびきは、母体だけでなく、胎児にも影響を及ぼす可能性があります。
まず、いびきは母体の睡眠の質を低下させます。繰り返し生じるいびき呼吸によって、脳が何度も覚醒します。つまり、眠りが浅くなり寝不足になります、日中の症状として、眠気、疲労感が問題になります、ぐっすり眠れていないため、妊婦の場合、うつ、不安など心理的なストレスを引き起こすこともあるのです。
さらに深刻な問題として、妊娠中のいびきは妊娠高血圧症候群のリスクを高めることが指摘されています。妊娠高血圧症候群は、妊娠経過中に血圧が高くなる病態のことで、妊娠後期に発症することが多いです、蛋白尿が出現することもあり、腎障害と密接に関係しています。重度になると、母体および胎児の生命維持にとって、危険な事態になります。
いびきをかく妊婦は、この症状のリスクが高まるとされています。その理由として、睡眠時無呼吸症候群の関与が指摘されています。夜間帯に、上気道の部分閉塞によって努力呼吸が増えるので、交感神経が優位になります。この変化によって血圧が高くなります。
睡眠時無呼吸症候群とは?
先ほど述べたように、いびきは、睡眠時無呼吸症候群の症状の一つです。この病気は、眠っているときに繰り返し呼吸が止まり、体内が酸素不足になります。何とかして呼吸しようとする結果、脳が覚醒してしまいます。この病態によって、深い睡眠が妨げられ、昼間の過度な眠気や集中力の低下を引き起こします。
いびきと無呼吸の違いは何ですか?
いびきは気道の部分的な閉塞によって、呼吸に伴って気道粘膜が振動する音のことです。一方、無呼吸は気道の完全閉塞によって起きるので、気流が停止します。両者とも、異常呼吸として考えられています。
妊娠中の女性では、体重の増加やホルモンの変化が気道を狭め、睡眠時無呼吸症候群のリスクを高めます。一般的に、睡眠時無呼吸症候群があると、高血圧と糖尿病が発症しやすくなります。この二つの病気は、母体の健康状態に悪影響を及ぼします。
米国で行われた研究において、無呼吸低呼吸指数(AHI)が高い女性は、妊娠糖尿病のリスクが高いことが報告されています。特にレム睡眠のときの異常呼吸の回数が多いこと、そして、低酸素血症の程度が重いと、その傾向が高くなるようです。
重度の閉塞型睡眠時無呼吸があると、夜間の母体の低酸素血症が、胎児の成長に影響を与える懸念があります。赤ちゃんは胎盤とへそを介して、酸素と栄養が供給されています。しかし、無呼吸発作が頻回にあると酸素供給が不十分になり、胎児の発育遅延や低出生体重のリスクが高まると考えられています。
出典:妊娠中の睡眠時無呼吸による低酸素血症が胎児に及ぼす悪影響の病態解明に関する研究 – KAKEN
診断の方法
診察では、いびきの程度、日中の眠気などの症状に関する質問から始まります。また、パートナーからは、あなたの睡眠中の様子、いびきをかく頻度や呼吸が止まることがあるかどうかを聞き取ります。スマホによる動画撮影があれば、診断の助けになります。
正確に調べるために、終夜睡眠ポリグラフ検査を検討します。この精密検査によって、睡眠の深さ、いびきの頻度と強度、無呼吸の回数、酸素不足の程度などが分かります。
つわりがひどい時期あるいは妊娠後期であると、入院による検査が困難になります。そのときは、代替案として自宅で行うことが可能な携帯型の装置による評価が行われます。
いずれにせよ、治療を開始するにあたり、病状の評価はとても大切です。そして、自覚症状と検査の結果を総合して、睡眠時無呼吸症候群の診断と重症度が確定されます。
治療法について
妊娠中のいびきがひどいことへの対策は、生活習慣の見直しから始まります。
健康的な食生活と適度な運動は、体重の増加を防ぎ、いびきのリスクを減らすのに役立ちます。また、塩分や糖分の摂取を控え、妊娠中に推奨される栄養バランスを考慮した食事を心がけることが大切です。肥満体型にならないようにすることは、高血圧と糖尿病の発症を予防するにも役立ちます。妊娠中の運動については、産婦人科のかかりつけ医師のアドバイスを受けましょう。
睡眠時の姿勢もいびきを減らす工夫の一つです。仰向けの姿勢は、舌と喉の軟組織が気道を塞ぐ原因となりやすいため、いびきを悪化させる可能性があります。
妊娠中は、左側を下にして寝る(左側臥位の姿勢)が推奨されます。これは血流を改善し、胎児への酸素供給を促進するとともに、いびきのリスクを減らす効果があります。横向きの寝姿勢を保つために抱き枕を使う方法もあります。
これらのセルフケアを行っても、いびきが改善されない、または睡眠時無呼吸症候群の症状が疑われる場合は、医師に相談してください。特に、昼間の眠気、朝の頭痛、夜間の頻繁な目覚めなどの症状がある場合、専門的な評価と治療が必要になります。大きないびきをかいていて血圧が高いときは、睡眠時無呼吸による影響が潜んでいる可能性があります。
診断結果によって、あなたの状態と希望に応じて適切な治療法が提案されます。軽症の場合は、生活習慣の療養指導や口腔内装置による対策が行われます。国内では、医科で診断がなされた後に、歯科で口腔内装置を作成する手順になっています。
それに対して、重症の睡眠時無呼吸症候群が確認された場合は、母体と胎児への影響を考え、CPAP治療を検討することがあります。