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糖尿病と睡眠障害:原因と対処法
糖尿病と睡眠:医学的な関連性について
糖尿病と睡眠障害は、生活の質と健康に深刻な影響を与える病気です。高血糖と眠りの異常は、別物として考えている人も多いかもしれません。しかし、いくつかの医学論文によって、両者は相互に関連し、影響を及ぼし合っていることが分かっています。
現在、糖尿病の治療を受けている人、健康診断で予備軍と判定された人は、日々の睡眠を見直すことで病状を軽減させることができます。逆に、ぐっすり眠れていない人は、眠りの問題を抱えたまま過ごしていると、糖代謝異常が発症するリスクが高くなります。
このページでは、睡眠不足、不眠、睡眠時無呼吸症候群と糖尿病に関係する健康情報をお伝えします。
糖尿病はどんな病気か?
糖尿病は、体が血糖(ブドウ糖)を適切にコントロールできないという病気です。
ブドウ糖は私たちの体のエネルギー源で、食べ物から摂取します。消化管から吸収された糖分は、血液を介して、細胞に運ばれます。血糖とは、血液の中に入ったブドウ糖のことを意味しており、血液中に含まれるブドウ糖の濃度は、血糖値と呼ばれています。
血糖値を下げるホルモンとして、インスリンが有名です。このホルモンは膵臓のβ細胞から分泌されており、適切な血糖にするために、重要な役割を果たしています。糖尿病の発症には、インスリンが大きく関わっています。
糖尿病には2つのタイプがあり、1型糖尿病と2型糖尿病が存在します。1型糖尿病は、膵臓においてインスリンが作られないことが発症要因です。一方、2型糖尿病では、インスリン分泌が低下したり、遅れたり、あるいは、インスリンの反応が鈍くなったりして、血糖が高くなる病態が存在します。
高血糖が持続すると、疲労感、頻尿、喉の渇きなどの症状が現れます。そして、治療せずに放置すると、腎臓病、視力障害、神経障害などの3大合併症を引き起こすリスクがあります。動脈硬化を引き起こすので、脳卒中、狭心症、心筋梗塞の原因になります。
出典:糖尿病情報センター
糖尿病の初期には自覚症状がないことが多いです。職場で行われる健康診断の血液検査で、「自分の血糖値が高いこと」に気づくことが少なくありません。知らず知らずのうちに進行していく生活習慣病であるので、注意が必要です。もし、健診結果で空腹時血糖値、HbA1cが高いことが分かったら、早目に医師の診察を受けて下さい。
睡眠障害とは
睡眠障害は、質の良い眠りが得られなかったり、睡眠時間が不足していたり、何らかの問題があって、安定した睡眠がとれない病気を意味します。
代表的なものとして、入眠困難、中途覚醒、早朝覚醒などの不眠症があります。さらに外来で多い睡眠障害として、睡眠時無呼吸症候群があげられます。その他、睡眠不足症候群、過眠症、異常行動を伴う睡眠異常もあります。
寝不足があると、高血圧、脳卒中、糖尿病、肥満症、うつ病など、さまざまな慢性疾患の発症リスクがが高くなります。
出典:Sleep and Chronic Disease – CDC
糖尿病と睡眠障害の相互関係
最近の研究によれば、糖尿病と睡眠障害は密接に関連しています。
睡眠不足や睡眠の質が低いこと、睡眠リズムの乱れは、インスリン抵抗性を増加させます。さらに、糖尿病患者の中には、睡眠時無呼吸症候群を併発している割合が多いと報告されています。
これらの要因は、2型糖尿病の発症リスクを高めます。逆に、糖尿病をもっている人は、夜間に頻繁に尿を排泄する症状に悩ませられることもあります(夜間頻尿)。これによって、睡眠が分断化されるので、質の良い睡眠をとることができなくなります。つまり、不眠症が問題になるのです。
出典:刑部彰一 他; 糖尿病における睡眠障害の臨床, 日本内科学会雑誌;110(4):753-760,2021
「糖尿病で寝付きが悪いのはなぜか?」や「糖尿病は不眠に影響するのか?」といった疑問が生じます。高血糖による頻尿、病状の不安、糖尿病の合併症である神経症状(脚のしびれ、痛み)などが、寝つきを悪くしている要因になっています。より詳しいメカニズムは、こらからの研究で明らかになるかもしれません。
睡眠時無呼吸症候群と糖尿病の関連性
夜間に繰り返される無呼吸発作によって、低酸素血症が生じたり、睡眠が何度も中断されてしまいます。そして、頻回の覚醒が、交感神経の亢進およびインスリン抵抗性を引き起こしています。
体の細胞がインスリンに対して、反応しにくくなるので、高血糖が発生します。長期に持続すると、2型糖尿病を発症すると考えられています。また、逆に、糖尿病があると、睡眠時無呼吸症候群を発症するリスクも高くなると報告されています。
「なぜ、糖尿病があると、睡眠時無呼吸症候群を発症しやすくなるか?」という理由として、肥満の影響、高血糖による呼吸機能を調節する自律神経への影響が考えられています。
このような関係があることから、糖尿病を治療している場合、自分がいびきをかいていなか、パートナーに確かめてみましょう。そして、閉塞型睡眠時無呼吸があなたの病状に影響していないか、評価を受けると良いでしょう。
糖尿病の管理と睡眠の改善
糖尿病と睡眠障害の両方に言えることとして、規則正しい生活習慣、十分な睡眠時間を確立することが、健康管理の上で、大切です。
「糖尿病の人は睡眠時間はどのくらいがよいのか?」という問いに対しては、一般的に成人の場合、毎晩7-9時間の睡眠が推奨されます。しかし、年齢によって必要となる睡眠時間は変化していきます。
少なくとも日中の眠気がなく、集中力の低下がないということを目安にして、眠ることを勧めます。また、いびき、無呼吸を指摘されているときは、睡眠専門医の診察を受けましょう。
まとめ
糖尿病と睡眠障害は密接な関係にあり、互いに影響し合うことを理解しましょう。糖尿病があると睡眠の質を低下させ、一方、不眠、睡眠不足、睡眠障害のある人は、糖代謝異常が起きやすくなります。
糖尿病による多尿、頻尿、病気への不安は、眠りを妨げる可能性があります。血糖コントロールに加えて、睡眠ケアも必要になります。特に、糖尿病に肥満が合併すると、治療管理の上で、睡眠時無呼吸症候群の評価が大切です。