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夜間に横になると不整脈が出現?【睡眠障害の影響かも】
不整脈と睡眠の深い関わりとは?
不整脈と睡眠、一見すると関連が薄いように思えるこの二つのテーマと思われるかもしれません。しかし、実はこれらの間には深い関わりがあることを知っていますか。
不整脈は、心臓のリズムが通常と異なる状態のことを言います。その結果、胸がドキドキしたり、ドクンを感じたりします。胸の違和感、体調不良になることがあります。その一方、睡眠は体を回復させるために不可欠なのもので、質の良い眠りが健康を保つことに役立ちます。
さまざまな研究報告から、睡眠時無呼吸症候群や睡眠不足は、不整脈が発症するリスクを増加させる可能性が指摘されています。今回のブログ記事では、心臓のリズム異常と睡眠障害は関係について、学んでいきます。
不整脈とは何か?
不整脈とは、心臓の拍動が正常なリズムからずれる状態を意味します。具体的には、脈が速くなったり、遅くなったり、不規則に打ったり、心臓の調律が乱れます。
心臓は私たちの体に酸素や栄養を運ぶためのポンプの役割を果たしています。通常は一定のリズム、適度な拍動数であれば、その機能は問題ありません。しかし、不整脈が生じると、さまざまな症状や合併症を引き起こします。なぜなら、さまざまな臓器に十分な酸素や栄養が供給されなくなるからです。
例えば、息切れ、めまい、胸の痛み、不安感などの症状を感じることがあります。病状が重い場合には、失神、心不全が起きて、死亡の原因になります。
睡眠不足は影響するか?
睡眠不足とは、十分な睡眠をとっていない状態を指します。自分自身が必要とされている睡眠時間より短い状態であると、本人が気づかないうちに寝不足が蓄積されることもあります。この長期に渡って睡眠不足が続いた状況は、睡眠負債と呼ばれています。
実は、睡眠不足は、心臓の病気の発症リスクを高めることが知られています。
「なぜ寝不足があると、心臓のリズムに異常を引き起こすのか?」という疑問をもつ人がいるかもしれません。次のような背景が、その不整脈が出現する原因として挙げられます。
出典:葛西 隆敏; 睡眠関連障害と全身性疾患をめぐって 5)循環器疾患と睡眠, 日本内科学会雑誌;105(9):1683-1687,2016
女性では、更年期になると、自律神経の乱れが起きやすく、ホルモンのバランスが不安定になります。睡眠不足があると、不整脈の発生を助長しやすいという背景があります。筆者の経験では、60歳以上になると脈の問題を抱えて相談に来る人が増えてくる印象です。
不眠症と不整脈の関連性について
ぐっすり眠れないと、体や心のストレスが高まりがちです。このようなストレスは、心臓にも影響を及ぼし、不整脈の原因となることがあります。具体的には、コルチゾールの分泌が増加し、心臓の負担が増え、心臓のリズムを乱します。
反対に、夜横になると不整脈が起きる人がいます。その胸部の違和感が不眠症を引き起こします。心臓のリズムが乱れたり、バクバクするような鼓動を感じると、不快感が現れます。同時に、心臓の病気に対する不安も出てきます。そして、寝つきだけではなく、途中で目が覚めやすくなるので、睡眠の質が低下します。
つまり、不整脈と不眠症は、相互に影響し合う関係にあることが分かります。
不整脈と睡眠時無呼吸症候群の関係
睡眠時無呼吸症候群とは、睡眠中に呼吸が一時的に停止したり、不十分になったりする病気です。夜間に異常呼吸が何度も繰り返されるので、脳が覚醒する回数が増えます。それにより、睡眠の質が低下します。
さらに、上気道の閉塞による胸腔内圧の変化、低酸素血症、交感神経の亢進などが、心臓への負担をかけます。それが原因で、不整脈のリスクが高まります。
睡眠時無呼吸症候群の人には、どんなタイプの不整脈が観察されることがありますか?
高度の徐脈、洞停止、2度房室ブロック、心室性期外収縮、心室頻拍などです徐脈性と頻脈性の両方の不整脈が高頻度に現れることが報告されています。
出典:大塚 邦明 他; 不整脈と睡眠, 心電図;4(6):649-667,1984
不整脈の中でも、脳梗塞を引き起こすことがある心房細動は、睡眠時無呼吸があると発症リスクが高くなることで注目されています。閉塞性睡眠時無呼吸を治療せずに放置すると、低酸素血症のみならず心筋の構造の変化が生じます。それらの要因によって、不整脈が現れやすい心臓になってしまうことが考えられています。
出典:岩崎 雄樹; 閉塞性睡眠時無呼吸症候群における不整脈発生と自律神経の関係, 心電図;36(1):55-63,2016
「閉塞性呼吸イベント」と「低酸素血症」の頻度が高いと、心臓の不整脈が起こる可能性が高くなることが分かっています。このことは、睡眠時無呼吸がある人において、夜間の突然死の要因にもなっているかもしれません。
診断の方法
診察では、医師はあなたの体調の変化や生活習慣の中での特定の要因(カフェイン、アルコール、ニコチンなど)があるか、確認します。服用している薬剤、サプリについても聞き取ります。
睡眠の質や時間、夜間に目が覚める回数、昼間の眠気の有無など、具体的な症状を問診します。夜、ベッドで横になると心臓がドクドクして目覚めることがないか、そして、いびき、無呼吸の症状が併発していないか、確かめます。
眠りの質、呼吸の状態、脈の乱れを同時に調べるためには、終夜睡眠ポリグラフ検査を施行します。心電図も含まれているので、不整脈の発生している時間帯、頻度やタイプ、持続時間などを正確に知ることができます。そのため、睡眠時無呼吸と不整脈を同時に捉えられるメリットがあります。
治療法について
不整脈を抱えている人が、睡眠障害の症状で悩んでいる場合は、仕事中の集中力、気分に影響します。したがって、生活の質が低下します。そのため、適切な治療によって、両者の症状を解消することがゴールです。
まず、不整脈の治療は、原因や症状の重さによりますが、薬物療法やカテーテルアブレーションなどの治療法が考えられます。これらの治療により、不整脈のコントロールがうまくいけば、胸の不快感がなくなるので、眠りの質の安定化が期待できます。
睡眠時無呼吸症候群がある場合は、CPAP治療、あるいは口腔内装置による治療を検討しましょう。治療によって眠っているときの睡眠が安定し、夜間の低酸素血症が改善します。眠っているときの異常呼吸がなくなるので、心臓への負担も軽くなります。そのことで、不整脈の発生が少なくなります。
生活習慣に関するセルフケアとしては、規則正しい就寝と起床時刻を定めること、カフェインやアルコールの摂取を控えること、リラックスを促す活動の取り入れることから始めてみましょう。
さまざまなストレスおよび不安は、睡眠の質に悪影響を及ぼすだけではなく、不整脈の原因にもなります。寝ようとすると動悸がする場合、ストレスが関与している場合もあります。対策として、ストレス発散、リラクゼーションも大切です。メンタルヘルス不調なら、やカウンセリングを受けることも検討しましょう。
不整脈と睡眠の困りごとが同時に出てきたら、循環器専門医と睡眠専門医が協力することが必要です。2人の先生が一緒になって、あなたの健康を守るための計画を作成します。
不整脈の予防に役立つ睡眠のコツ
毎日の睡眠は心身の健康を維持する上で欠かせない要素です。特に心臓の健康において、質の良い睡眠は不整脈のリスクを減らすことを理解しましょう。
次に示す一覧表は、不整脈を予防するための睡眠のヒントです。
方法 | 特徴 |
---|---|
規則正しい生活リズム | 毎日同じ時間に就寝し、起床することは、体内時計が安定するのに効果があります。それによって、睡眠リズムが保たれて、質の良い眠りになります。 |
寝る前のリラックス | 風呂に入ること、ヨガ、瞑想など、緊張をほぐす方法を見つけ、日常に取り入れましょう。自律神経が安定すると、不整脈のリスクを減らせます。 |
嗜好品の見直し | カフェインやアルコールの飲み方について、確認しましょう。特に就寝前の摂取は避けるほうが無難です。その理由は、睡眠の質を低下させてしまうからです。 |
寝室環境を調整する | 適切な室温と湿度を設定することは大切です。また、夕方以降の強い光刺激があると、睡眠リズムが後退するので、入眠困難を引き起こすことがあります。 |
適度な運動 | 日中に適度な運動をすることで、眠りの質を高めることができます。ただし、運動は就寝の2~3時間前までに終えることを忘れないようにしましょう。 |
ストレス管理 | 私たちが何らかのストレスを受けると、不整脈が起きやすくなります。リラクゼーション、趣味の活動などで、心の平穏を保ちましょう。 |