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注意欠如・多動症と睡眠障害の関係
ADHDとは
注意欠陥・多動性障害は、年齢または発達に見合わない、不注意、落ち着きのなさ、衝動的な行動が問題となる「生まれつきの特性」です。日常生活において、様々な困難に直面することが多いです。子どもでは、勉強面において悪影響を受けます。
発達障害の中で最も多いタイプです。子どもの頃に診断されることが多いですが、大人になっても続く場合があります。
出典:Attention-Deficit/Hyperactivity Disorder – National Institute of Mental Health
原因について
ADHDが発症する詳しい理由は分かっていません。遺伝の影響、脳の構造異常および機能低下などが関わっていると推測されています。早産、低出生体重児、てんかん、脳の損傷などがあると、ADHDの発症リスクが高くなることが報告されています。
出典:Causes – Attention deficit hyperactivity disorder – NHS
症状について
不注意が目立つ場合、多動性・衝動性の症状が優勢になる場合、そして、すべての症状を併発している場合があります。子どもと比較すると、大人の場合は、多動の症状は軽減することが多いです。
多動性・衝動性 | 不注意 | |
---|---|---|
子ども | しっとしていられない 急に走ることがある 高所に上ることがある しゃべり過ぎの傾向 他の人の邪魔をする | 落とし物が多い よそ見が多い 片付けが苦手である 集中力が続かない 宿題を途中で止める |
大人 | 目的のない動きをする 感情が不安定になる 不用意な発言をする 思い付きで行動する 順番を待てない | 忘れ物が多い 物を紛失することが多い 約束をすっぽかす 順序だてて仕事ができない 何かと気が散りやすい |
診断の方法
注意欠如・多動症を適切に診断するためには、米国精神医学会が発表している「精神疾患の診断・統計マニュアル 第5版」を用います。
出典:Symptoms and Diagnosis of ADHD – CDC
不注意、衝動性・多動性の症状がみられるか、問診によって聞き取ります。そして、いくつかの症状が12歳以前から存在していることを確認します。さらに、6ヶ月以上、ADHDの症状が続き、家庭、職場あるいは学校において活動に支障が出ているときに、ADHDの診断が確定されます。
出典:ADHD(注意欠如・多動症)の診断と治療 – eヘルスネット
合併しやすい睡眠障害の特徴
睡眠の問題 | 症状の特徴 |
---|---|
入眠困難 | 夜になっても落ち着かず、寝つかれません。 |
中途覚醒 | 夜中に何度も目が覚めてしまい、眠りが浅い。 |
日中の眠気 | 過眠の傾向が強く、興味がないとすぐに寝る。 |
睡眠リズム異常 | 夜型の生活になりがちで、朝起きられない。 |
ADHDに併発する睡眠障害の特徴は、不眠と過眠の症状です。自分の興味があるものに対して夢中になってしまうので、夜遅くまで起きていることがあります。その結果、睡眠リズムの問題も発生します。
ADHDと睡眠の問題は、どんな関係がありますか?
ADHDの症状によって、睡眠障害が発症する場合があります。そして、睡眠が妨げられることで、多動および不注意の症状が悪化する危険があります。一方、眠れないことで、ADHDに類似した症状が現れることもあり、鑑別が必要です。
日常生活において、ADHDの睡眠障害はどのような影響が起きますか?
10代では、起床困難、昼夜逆転による不登校、日中の強い眠気、授業中の居眠りが問題になります。成人になると、朝寝坊による遅刻、勤務中の集中力の低下が目立つようになります。二次的に、うつ病、適応障害、不安障害などの精神疾患が発症する場合もあります。
子どもの場合、どんな病気と鑑別が必要ですか?
いびきをかく場合、小児の睡眠時無呼吸症候群が多動の原因になっている可能性があります。さらに、中学生、高校生など、10代において過眠が現れているときは、ナルコレプシーまたは特発性過眠症との鑑別を要します。
ADHDに伴う眠気とナルコレプシーの眠気の違いは、何ですか?
一般的に、過眠症では、時間帯および周囲の状況に関わらず、眠気が生じます。一方、ADHDでは、興味がない場面で眠気が現れることが多く、自分が関心のあるものに取り組んでいるときは、眠気を忘れることが多いです。
ADHDに伴う眠気は、退屈になると眠くなるという特徴をもっています。やる気、興味、関心のあることが覚醒度を上げるという脳のメカニズムが働いている可能性が指摘されています。
出典:福永道郎; 注意欠如・多動症(ADHD)と睡眠障害, 脳と発達;54:170-175,2022
AHDHの人にとって、やる気が上がるような環境を作り出せるかが、眠気を解消するためのヒントになるかもしれません。
寝つきが悪いときに、どんな対処法がありますか?
不眠に対してメラトニン製剤を検討します。小児ならメラトベル、成人にはロゼレムを入眠前に内服することで、寝つきを改善させます。子どもの場合、不眠の改善に効能がある漢方薬を使うこともあります。
大人のADHDの場合、不眠に対してどんな治療法がありますか?
睡眠習慣の指導を行った上で、入眠困難あるいは中途覚醒があるときは、睡眠薬の内服を試みることがあります。
治療について
注意欠如・多動症が疑われるときは、最寄りの発達障害者支援センターに相談することを勧めます。
その後、地域にある発達障害の診察を行っている小児科あるいは精神科の診察を受けることが大切です。どの病院がADHDの診療を専門的に行っているか分からないときは、日本小児神経学会の発達障害診療医師のリストが参考になります。
基本的には、脳の覚醒度を上げる作用を有する治療薬を服用して、ADHDの症状を改善します。