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睡眠時驚愕症の症状と対処法
夜驚症とは
睡眠中に突然、恐怖、興奮した表情で悲鳴のような声を上げて覚醒してしまう病気です。異常行動が起きているときは、外部からの反応に乏しく、本人はエピソードを覚えていません。子どもに多い睡眠障害です。深いノンレム睡眠からの覚醒障害の一つであり、睡眠時随伴症に分類されています。医学用語では、睡眠時驚愕症と呼ばれています。
原因について
夜驚症が発症する正確な原因は分かっていません。しかし、環境、身体、心理面、遺伝の要因が、発病の引き金になっていると考えられています。家族歴も関係しています。
さまざまな報告がありますが、原因として想定されているものを紹介します。
- 睡眠不足
- 騒音の環境
- 発熱のある病気に罹患している
- 睡眠中に膀胱内に尿が充満する
- ストレスと不安
- 睡眠時無呼吸症候群
- ADHD
- 向精神薬、精神安定剤、睡眠薬の副作用
出典:Leung et al. Sleep Terrors: An Updated Review. Curr Pediatr Rev. 2020;16:176-182.
子どもが成長する過程において、睡眠から覚醒するときの脳の働きが発達段階にあることが、夜驚症の発症に関与しています。
症状について
夜驚症は子どもの2~7%が発症すると言われており、4歳から7歳が好発年齢です。普通に成長している小児でみられます。通常、思春期までに症状が消失することが多いですが、一部の子どもでは、大人になるまで症状が続きます。
出典:What Are Night Terrors? And What To Do About Them – Cleveland Clinic
夜驚症の症状が起きるタイミングとして、深いノンレム睡眠が出やすい睡眠時間の最初の3分の1に起きることが多いです。
出典:加藤 久美: ノンレムパラソムニア, 臨床神経生理学 2020;48(1),45-49
チェックすべき症状は次の通りです。
- 深い眠りから突然目が覚める
- 叫び声、悲鳴があり、泣き出す
- 恐怖、不安の表情をしている
- 脈拍、呼吸が速くなり、発汗をともなう
- 顔が赤くなり、瞳孔が開いている
- 周りからの刺激に反応せず、混乱している
- 翌朝、本人はエピソードを覚えていない
夜驚症の症状が起きているときに、他の人が無理に起こしたり、行動を抑えるよう介入をすると、本人はベッドから抜け出して走ったり、攻撃的な行動が出現したりします。夜驚症は睡眠時遊行症の症状に移行することがあります。
出典:Sleep terrors – Mayo Clinic
一般的に、幼児に多い睡眠障害です。しかし、小学生高学年から高校生にかけての年代で夜驚症が続いていると、修学旅行、合宿などで困ります。そのため、外泊時の対応に悩んでいる両親からの相談が多いです。家庭では、叫び声が近所迷惑になる懸念があり、苦情を受けないか心配になることもあります。
診断について
夜驚症を適切に診断するためには、詳細な病歴の聴取が重要です。子どもの場合、養育者から夜間の異常行動のエピソードを聞き取ります。そして、他の覚醒障害である錯乱性覚醒、夢遊病、悪夢障害、夜間前頭葉てんかんと鑑別します。
最近では、スマホで動画撮影した映像があれば、診断の助けになります。夜驚症が起きる頻度や時間帯の傾向を把握するために、睡眠日誌を記録することは大切です。
ビデオ撮影を含めた終夜睡眠ポリグラフ検査は、他の睡眠障害の合併があったり、てんかんの疑いがあるときに施行します。
夜驚症と夜間前頭葉てんかんの見分け方は、次の通りです。
夜驚症 | 夜間前頭葉てんかん | |
---|---|---|
好発年齢 | 幼児に多い | 7~12歳 |
発作の回数 | 1~2回 | 一晩に何度も起きることがある |
発作の時間 | 30秒以上が多い | 数秒から3分程度 |
症状 | 多彩な動きをする、歩き回ることがある | 症状がステレオタイプで、同じ動作を繰り返す |
発症時期 | 睡眠時間の前半3分の1に多い | 夜間帯のどの時間でも起きる |
脳波の所見 | 徐派睡眠 | てんかん波形 |
経過 | 殆どの場合、思春期までに消失する | しばしば、成人になっても発作が続く |
治療法について
夜驚症の頻度が少ないときは、睡眠衛生の徹底を行い様子をみることが殆どです。一般的には、睡眠リズムを一定にして、十分な睡眠時間をとってください。寝室の環境を安全にしておくことが重要な対策です。家具をベッドから離してください。
もし、他の睡眠障害、特に睡眠時無呼吸症候群が見つかれば、その治療を行います。
出典:Sleep Terrors – Sleep Education by AASM
症状の回数が多いとき、危険な行動があるとき、そして、日中の活動に支障が出ているときは、睡眠専門医の診察を受けてください。
病状が重いときは、ベンゾジアゼピン系の抗てんかん薬であるクロナゼパム、抗うつ薬などの内服を検討します。
どんな漢方薬が、夜驚症の症状を抑えるために使われていますか?
抑肝散加陳皮半夏、抑肝散、甘麦大棗湯などがあります。処方薬あるいは市販薬として入手することができます。子どもの精神不安を和らげて、寝つきやすくする効能があります。