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心房細動が見つかれば睡眠時無呼吸を対処しましょう
心房細動と睡眠時無呼吸の深い関わりとは?
大きないびき、無呼吸などの睡眠中の症状と脈が不規則になる不整脈の心房細動は、どのように関連しているのか疑問に思う方も多いでしょう。一見すると、心臓の脈の異常と睡眠中の呼吸の問題は、別々の領域のように思えます。しかし、これら二つの病気は、実は深く結びついています。
高齢化社会になり、加齢にともなって発症しやすくなる心房細動は、脳梗塞や心不全を引き起こすので、予防が重要です。一方、中高年に多い睡眠時無呼吸は、眠っている間に無呼吸発作が繰り返され、睡眠を不安定にさせます。その結果、眠気、集中力の低下が現れます。
では、この二つの疾患がどのように繋がっているのでしょうか。実は、睡眠時無呼吸症候群が存在することで、酸素不足になり、自律神経が変化することが、心房細動の一因となることが知られています。反対に、心房細動が存在することで、睡眠時無呼吸症候群の症状が悪化するリスクもあるのです。
今回のブログ記事では、二つの病気の関連性や、健康への影響について解説していきます。
心房細動とは何か?
心房細動は、心臓の上部に位置する「心房」という部分が、通常のリズムを保てずに不規則に高速に収縮する状態を指します。この不規則な心臓の収縮が起こると、心臓から体への血液の供給が乱れ、体全体の血流が不安定になります。
高齢化とともに増えている心臓の病気として、心房細動は注目すべき不整脈です。自覚症状がない人もいて、健康診断で初めて指摘されて気づく場合が少なくありません。一方、高血圧、糖尿病、狭心症および心筋梗塞、心臓弁膜症などに併発することが多いです。
症状として動悸、めまい、立ちくらみ、呼吸困難が起こることがあります。この不整脈は心不全の原因になったり、心房内で血栓を生じさせて脳梗塞を引き起こしたり、さまざまな健康リスクがあります。
出典:あなたの脈 乱れていませんか?~心房細動のお話 -国立長寿医療研究センター
睡眠時無呼吸症候群とは
眠っている間に、上気道の閉塞によって呼吸が止まることが何度も繰り返される睡眠呼吸障害のことです。無呼吸発作に伴う低酸素血症が生じるので、努力して換気しようとして、眠りの妨げになります、浅い眠りが続くため、日中の眠気を自覚したり、集中力が低下したり、日中の症状が現れます。
睡眠時無呼吸症候群は中高年に多い病気です。肥満との関連がありますが、日本人では下顎の後退、小顎などの骨格的な要因も、関与することが多いです。アルコール摂取による喉の筋肉が弛緩することも原因になります。
この病気を発見する手がかりとして、最も有名なサインは、大きないびきと昼間の眠気です。しかし、自分では気づきにくいことも多いので、家族やパートナーからの指摘されて発見されることが少なくありません。なぜなら、寝ているとき状況なので、自分では詳しく分からないからです。
なぜ睡眠時無呼吸が心房細動を発症させるか?
睡眠時無呼吸症候群があると、循環器系の調節に悪影響が起きることが知られています。近年の医学的研究において、心房細動が発症するリスクのメカニズムについて、明らかになってきました。具体的にどのようなメカニズムで因果関係があるのか、述べていきます。
要因 | メカニズム |
---|---|
低酸素血症 | 無呼吸が発生すると動脈中の酸素飽和度が低下します。この酸素不足は心臓にストレスをかけ、心筋細胞の異常な興奮やリモデリング(再構築)を引き起こします。この心筋の変化は、心房細動の発症リスクを高めます。 |
交感神経の活性化 | 無呼吸が起きてから、正常な呼吸が再開されるときに交感神経が亢進します。この自律神経の変化によって、心拍数の増加や心臓の電気生理学的な乱れが発生することで、心房細動が起きやすくなります。 |
血圧の上昇 | 睡眠時無呼吸症候群では、異常呼吸によって交感神経が刺激されるので、夜間の血圧を上昇させます。夜間帯の血圧の変動が激しくなり、心臓に負担をかけます。その結果、心房細動のリスクを高めてしまいます。 |
上の表に示したような複数の要因が組み合わさることで、心臓の構造的、機能的な変化が進行していきます。睡眠時無呼吸が体内の炎症反応を促進させる背景もあり、特に左心房の拡大や心筋の肥厚などの変化が、心房細動の発症リスクを増大させます。
心房細動がない人を長期に渡って追跡した医学研究の結果によれば、閉塞型睡眠時無呼吸があると心房細動の発生が多くなることが確認されています。65歳以下の人では、肥満および夜間の酸素欠乏が、心房細動を発症する独立したリスク因子となっていることが報告されています。
米国で行われたコホート研究では、重度の睡眠時無呼吸があると、健常人と比較して、心房細動の発生頻度が4倍以上高くなることが明らかになりました。
これらの結果からも、閉塞型睡眠時無呼吸の治療をしっかりと受けていくことは、心房細動の発症を予防するのに大切であることが分かります。
治療後の心房細動の再発と睡眠時無呼吸の関係
心房細動を正常の洞調律に戻す治療法として、電気的除細動やカテーテルアブレーションがあります。しかし、これらの治療後に未治療の睡眠時無呼吸症候群があると、心房細動が再発リスクが上昇することが分かっています。
この事実からも、心房細動の治療を受けたとしても、自分がいびきをかいていないか、眠っているとき呼吸が止まっていないか、パートナーに聞いてみることを勧めます。心房細動のカテーテルアブレーション治療を受けた後に、睡眠呼吸障害の評価を受けるべきです。
診断の方法
診察では、どれくらいよく眠れているか、夜中に何度起きるか、昼間に眠たくなることがあるかなどを確認します。夜、寝ている時に脈がドキドキして目が覚めたり、いびきや呼吸が止まることがあるかも確認します。
担当医は、コーヒーやお酒、たばこなど、睡眠と不整脈に関係する生活習慣について尋ねるかと思います。また、飲んでいる薬やサプリメントも教えてください。
どんな睡眠の質になっているか、呼吸の状態がどうなっていか、脈拍がどのように変化しているかを同時に調べるためには、終夜睡眠ポリグラフ検査を行います。この精密検査には、心電図も含まれており、不整脈が起きている時間やタイプ、時間帯が分かります。これにより、睡眠時無呼吸症候群と不整脈、低酸素血症の重症度など、一度に観察することができます。
治療法について
心房細動がある人に睡眠時無呼吸症候群が併存している場合、日中の集中力や気分に影響して、生活の質が下がります。しかし、適切な治療で、これらの症状は改善することができます。
不整脈の治療には、症状の程度や原因に応じて、抗不整脈薬やカテーテルアブレーション、電気的除細動などが選択されます。これらの治療が効果的であれば、心房細動から正常な洞調律に戻ります。心機能が改善することが期待できます。
睡眠時無呼吸症候群の症状がある方は、CPAP治療あるいは口腔内装置という治療が適しています。これにより、夜間の呼吸が安定して低酸素血症が改善されます。心臓の働きにも良い影響をもたらします。さらに、呼吸が正常化することで、安定した眠りが得られるので、日中の症状が解消されます。同時に、心房細動が発症するリスクが減少します。
健康診断で心房細動が見つかりました。自覚症状はないのですが、病院に行ったほうが良いですか?
心房細動が原因となって脳梗塞が起きる危険があるので、早めに循環器内科の診察を受けてください。そして、治療を受けることが大切です。同時に、睡眠時無呼吸症候群が合併しないか、評価を受けてください。