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パラソムニアの診断と治療
睡眠時随伴症とは
入眠の直前、睡眠中、または覚醒したときに起きる異常行動あるいは好ましくない体験を特徴とする病気です。小児だけではなく、成人でも起きる睡眠障害です。
病気がどの睡眠ステージで発症するかによって、ノンレム睡眠あるいはレム睡眠に関係するタイプ、その他のタイプに分類されています。それ以外に、正常範囲の亜型に属する寝言があります。
読み方は、すいみんじずいはんしょうです。英語では、パラソムニアと呼ばれています。
原因について
睡眠の質およびリズムを悪化させる要因と健康の問題によって、睡眠時随伴症が発症します。具体的な原因は、次の通りです。
- 睡眠と覚醒の不完全な移行
- 睡眠不足
- 不規則な睡眠リズム
- 薬剤の副作用
- 他の睡眠障害による影響
- ストレス
- アルコール
- 頭部外傷の既往
- 神経変性疾患、認知症
出典:Parasomnias & Disruptive Sleep Disorders – Cleveland Clinic
子どもの場合は、脳が未発達であるため、睡眠時随伴症が起きやすいです。小児期に発症するノンレムパラソムニアの場合、家族歴が関係する割合が高いです。遺伝の要因も関与しているかもしれません。
その他の要因として、発達障害も症状の発現に関係しているという報告があります。
出典:加藤久美;ノンレムパラソムニア 臨床神経生理学;48(1):45-49,2020
睡眠随伴症状が起きる可能性がある睡眠薬は何ですか?
ルネスタ、アモバン、マイスリー、ハルシオンを服用しているときに、夢遊症状が起きることがあります。頻度は不明ですが、ベルソムラ、デエビゴなどのオレキシン受容体拮抗薬を内服している人において、睡眠時随伴症の発症が報告されています。
種類と特徴について
代表的なパラソムニアについて、臨床的な特徴を紹介します。
1.ノンレム睡眠からの覚醒障害
病名 | 症状の特徴 |
---|---|
錯乱性覚醒 | 夜中に混乱した状態で、周囲を見回します。ベッドの上に留まっています。小児期に好発します。 |
睡眠時遊行症 | ベッドから起き上がり、無意識に歩いてしまいます。複雑な行動をする場合があります。 |
睡眠時驚愕症 | 恐怖を伴って、叫び声を出します。頻脈、発汗、過呼吸などの自律神経症状が併発します。 |
睡眠関連摂食障害 | 夜中に意識がない状態で、食べ物を求めて行動します、食べたり、料理をしたりします。 |
2.レム睡眠中に発症する異常行動と現象
病名 | 症状の特徴 |
---|---|
レム睡眠行動障害 | 夢の内容に反応して、体を動かします。中高年に好発します。認知症との関連があります。 |
反復性孤発性睡眠麻痺 | 金縛りのことで、レム睡眠中に体が動かなくなる症状です。幻覚を合併することがあります。 |
悪夢障害 | 不快な夢を何度も見ることで、ぐっすり眠れず、日中の眠気、集中力の低下が現れます。 |
3.その他の睡眠時随伴症
病名 | 症状の特徴 |
---|---|
頭内爆発音症候群 | 眠りに入るときに、突然、爆発音が聞こえる病気です。目が覚めてしまい、不眠を呈します。 |
睡眠関連幻覚 | 寝入りばな、または、睡眠からの覚醒時に幻覚が現れます。幻触を併発することもあります。 |
睡眠時遺尿症 | 眠っているときに、無意識に排尿が起きて覚醒してしまいます。おねしょと呼ばれています。 |
異常な行動が起きるタイプの睡眠時随伴症は、何ですか?
睡眠時遊行症、夜驚症、錯乱性覚醒、レム睡眠行動障害、セクソムニア、睡眠関連摂食障害などです。
睡眠時随伴症の影響
異常な行動によって、怪我をする危険が出てきます。安定した睡眠がとれず、眠りの質が低下します。その結果、日中の活動に支障をきたすことがあります。
同室で眠っている人は、大きな寝言、暴力的な動き、寝相によって、睡眠が妨害されます。
診断の方法
睡眠時随伴症の症状について、詳しい聞き取りが行われます。本人が気づいていない場合もあり、ベッドパートナー、家族による異常行動の情報が、診断の手がかりになります。子どもの場合は、養育者の観察がとても大切です。
異常行動の動画があれば、参考所見になります。診察を受けるときに医師に記録した動画を見せると良いです。
終夜睡眠ポリグラフ検査による評価が必須である睡眠時随伴症は、レム睡眠行動障害です。その他の疾患については、症状の特徴の組み合わせによって診断されます。
実際には、てんかん発作との鑑別、睡眠時無呼吸症候群および他の睡眠障害の併発を調べることを目的として、終夜睡眠ポリグラフ検査を施行されることが多く、病院あるいはクリニックに宿泊して精査が行われます。
精密検査では、どんな異常な行動が出現するかを記録するため、ビデオ撮影が行われます。
睡眠時随伴症を診断するときに、どんな病気との鑑別が必要ですか?
てんかん、薬剤の副作用、依存性物質の中毒症状、パニック発作、解離性障害などです。
出典:Fleetham et al. Parasomnias. CMAJ. 2014 May 13;186:E273-80.
治療について
小児期に発症することが多いノンレム睡眠からの覚醒障害については、成長の過程で、症状が消失することが多いです。そのため、睡眠不足を避け、規則正しい睡眠リズムを保つことを徹底することが主体になります。
成人の場合も、睡眠習慣の見直しが大切です。寝酒は睡眠構築を不安定にするので、夜間の異常行動を引き起こす要因になります。そのため、アルコール摂取の習慣があれば、飲酒の中止は病状を軽減するのに有効です。
病状が重く日中の活動に影響が出ているとき、あるいは、自傷の恐れがあるときは、薬物による治療を検討します。レム睡眠行動障害、セクソムニアの場合は、周囲への影響があるので、薬物による治療を考慮することが多いです。
睡眠時随伴症の種類および重症度によって異なりますが、一般的には、抗てんかん薬であるクロナゼパム(販売名:ランドセン、リボトリール)、抗うつ薬が用いられることが多いです。
予防法について
- 寝不足を避けること
- 規則正しい生活リズムを保つこと
- アルコール摂取を控えること
- ストレスを抱えないこと
- 就寝の環境(音と光の問題)を整えること