- ホーム
- 寝る前にお酒を飲んだときの影響
寝る前にお酒を飲んだときの影響
寝酒とは
寝酒は、寝る前に酒を飲む行為を意味しています。英語圏ではナイトキャップと呼ばれています。
就寝前の飲酒の目的が、リラックスあるいはストレス発散の場合があります。一方、何とか寝ようとして、睡眠薬の代わりとしてアルコールを飲む人もいるようです。
このページでは、寝酒の効果とリスクを解説し、良質な睡眠に役立つ情報をお伝えします。
寝酒の効果
アルコールは、脳内にあるGABA受容体に働きかけて、入眠を促します。少量であれば、リラックスさせる作用があることが知られています。不安をとったり、ストレスを軽減したり、コミュニケーションを円滑にする効果があります。
節度あるアルコール摂取量であれば「気持ちいい」と感じますが、飲酒量が多く、アルコールの血中濃度が150-250mg/dlになると、鎮静効果が強くなります。その結果、脳の機能が低下して、呂律が回らなくなり、まっすぐに歩けなくなります。いわゆる、千鳥足になります。そして、さらに飲酒量が多くなると、意識障害が生じて危険な状態になります。
寝酒のリスクとは何か?
リスク項目 | 具体的な影響 |
---|---|
睡眠の質の低下 | 飲酒によって、レム睡眠が減少したり、睡眠サイクルが不安定になり、眠りの質が低下します。利尿回数の増加が起きるので、夜間の覚醒が起きやすくなります。 |
翌朝の症状 | 眠っている間に肝臓によるアルコールの代謝が不十分であると、起床時に、頭痛、倦怠感、吐き気、胃もたれ、動悸が現れます。俗に、二日酔いと呼ばれています。 |
依存症 | 寝酒を睡眠薬代わりに使う習慣があると、入眠効果が徐々に弱くなり、より多くの飲酒量が必要になります、さらに、お酒を止めたときに、反動で寝つきが悪くなります。 |
うつ症状に併発した不眠がある人の場合、寝酒で気分を良くして眠ろうとする行動は危険です。飲みすぎによって、神経過敏になったり、衝動的な行為が多くなったり、精神状態が不安定になります。その結果、自傷および自殺のリスクが高くります。
出典:アルコールとうつ – Royal College of Psychiatrists
アルコールの摂取量が増えていくこと、そして、多量の飲酒が当たり前のような生活を送っていると、離脱症状として、不眠、自律神経失調の症状が出現します。
出典:お酒と睡眠 ~「眠るための飲酒」は避けましょう~ – 横浜市
不眠に悩んでいて、お酒を飲んで寝るという生活を長く続けていると、アルコール依存症になるリスクがあることを知っておきましょう。
多量の飲酒を続けると、アルコール性肝障害、認知症、がんになるリスクが高くなります。節度ある適切な飲酒を守らないと、健康被害が生じます。
どんな睡眠障害が発症するのか?
1.不眠症
寝る前にアルコールを飲むと、寝つきは良くなります。しかし、アルコールが体内で分解されると、血中にアセトアルデヒド(アルコールの代謝物質)が多くなり、覚醒しやすくなります。利尿効果があり尿意を感じることが多くなるため、中途覚醒が生じます。
2.睡眠時無呼吸症候群
アルコールは筋弛緩作用をもっており、寝酒をすると舌と喉を構成している筋肉が緩みます。その結果、上気道が狭くなるので、いびきが発生しやすくなります。特に仰向けで寝ているときに悪化します。ひどい場合は、完全に気道が閉塞するので、無呼吸発作が現れます。
3.睡眠時随伴症
アルコールによって、レム睡眠とノンレム睡眠のバランスが乱れたり、覚醒が起きやすくなり、安定した睡眠を保つことができません。そのため、異常行動が起きる危険が高くなります。中には、悪夢ばかり見るという事例もあります。
具体的には、激しい寝言、寝相が悪い、半覚醒で歩く、無意識に食べてしまう行為です。
適切なアルコール量と飲み方について
適切なアルコール摂取の目安は、1日当たり約20gです。ビールであれば中ビン1本、日本酒であれば1合(180ml)、ワインなら2杯(240ml)です。ただし、女性は男性よりも少ない量にするほうが適切で、半分にしたほうが無難です。高齢者も同様で、飲酒量を少なくすることが鉄則です。
健康を維持するためには、休肝日を週2日以上は必ず設けましょう。
飲酒と就寝の間隔は、どのくらいの時間にすれば良いですか?
アルコール20gが肝臓で分解されるのに、男性では2.2時間、女性では3時間かかります。
アルコールが体から完全に抜けるまでの時間を考慮すると、飲み終わってから就寝時刻までの間隔は、3~4時間くらい必要です。
アルコールの分解には個人差、性差、年齢のなどの要因が関わります。そのため、どのくらいのアルコールを飲むと眠りの質の影響するか、日頃から自分の体質を知っておくことは大切です。その上で、適量と適切な間隔を守りましょう。
寝酒の代わりになる「睡眠を助ける方法」
眠れないときに、お酒に頼らずに睡眠を促進する方法として、運動があります。ジョギング、ウォーキング、自転車など、30~60分くらい、体を動かすことが大切です。適度な運動は、睡眠の質を向上させるのに役立ちます。深い眠りを促すので有効です。
何らかの悩みがありストレスを抱えている場合は、瞑想やヨガ、趣味の活動をするなど、気分転換を行いましょう。入浴やアロマセラピー、深呼吸などのリラクゼーション方法を取り入れると、自然な眠りを促す効果があります。
まとめ
寝酒が睡眠に及ぼす効果とリスクを理解し、適切な量とタイミングを知ることが大切です。寝る前にアルコールをたくさん摂取すると、睡眠障害が現れたり、さまざまな病気が発症したり、健康面の危険があります。
寝れないという理由で寝酒に頼るのは止めて、睡眠のセルフケアを行いましょう。それでも、眠れないときは睡眠外来に受診してください。不眠になった原因によって対処法が異なるので、医師の診察を勧めます。