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終夜睡眠ポリグラフ検査は何を評価しているのか?
PSG検査とは?
PSG検査は、一晩を通して睡眠中の身体の様々な生理的変化を測定する検査です。この検査によって、脳波、眼球運動、心電図、筋電図、呼吸状態、いびき、および血中酸素飽和度などが同時に記録され、終夜睡眠ポリグラフ検査と呼ばれています。
PSGは「ポリソムノグラフィー」の略称で、英語で表記するとPolysomnographyですが、ギリシャ、ラテン語の「poly(多くの)」「somnus(睡眠)」「graphein(記録する)」の頭文字をとったものです。この精密検査によって、睡眠の質および睡眠障害の有無を客観的に評価することができます。
患者さん向けには、睡眠の検査入院と説明されることもあります。
検査結果で分かること
終夜睡眠ポリグラフ検査では、脳波を測定することで睡眠の深さや睡眠段階(レム睡眠、ノンレム睡眠)の割合を正確に把握できます。
このデータによって、睡眠の質を客観的に評価することが可能になります。さらに、覚醒回数、下肢の運動、無呼吸と低呼吸の回数、低酸素血症の程度を知ることができます。つまり、PSG検査は睡眠医療においてゴールデンスタンダードと言えるでしょう。
出典:Polysomnography – Mount Sinai
項目 | 内容 |
---|---|
総睡眠時間 | 実際に眠っていた時間 |
睡眠効率 | ベッドで過ごした時間に対する実際の睡眠時間の割合 |
睡眠潜時 | 就寝してから眠りにつくまでの時間 |
睡眠ステージの割合 | 各睡眠段階(N1、N2、N3、REM睡眠)の割合 |
無呼吸低呼吸指数(AHI) | 1時間あたりの無呼吸と低呼吸の回数 |
酸素飽和度(SpO2) | 血中酸素濃度の変化 |
パルスオキシメーター | 血中酸素飽和度の推移。低酸素血症の程度 |
心拍数と不整脈 | 平均心拍数と変動、不整脈の有無と頻度 |
周期性四肢運動指数(PLMI) | 1時間あたりの周期性四肢運動の回数 |
いびき | いびきの頻度と大きさ |
装着するセンサーの種類
さまざまな測定機器を使用することで、睡眠の質のみならず睡眠中の生理活動を多角的に調べることができます。
センサー | 測定する内容 |
---|---|
脳波 | 睡眠ステージ(眠りの質)、覚醒の回数。 |
眼電図 | 急速眼球運動の検出、レム睡眠の識別。 |
頤の筋電図 | レム睡眠の判定、歯ぎしりの活動。 |
心電図 | 心拍数の変化、不整脈の有無。 |
下肢の筋電図 | 足の筋肉の活動の程度。 |
パルスオキシメーター | 血中酸素飽和度の推移。低酸素血症の程度 |
呼吸運動のセンサー | 胸と腹部の動き、呼吸状態。 |
呼吸センサー(鼻と口) | 鼻と口の気流の程度。 |
マイク | いびきの音 |
体位 | 体の向き |
SpO2(経皮的動脈血酸素飽和度)に加え、ETCO2(呼気終末二酸化炭素分圧)を測定することも可能です。ETCO2のデータにより、換気不全の程度を正確に評価することができ、特に肥満低換気症候群の病態を調べるときに有用です。
PSG検査は、通常、プライバシーに注意しながらビデオカメラの監視と撮影が同時に行わます。映像のデータによって、睡眠中の体の動きを観察することができるので、診断の精度が上がります。
出典:Sleep Study – Cleveland Clinic
小児でもPSG検査を受けることができますか?
子どものいびき、無呼吸の診断には、PSG検査によるデータが生活な診断が必要です。通常、3歳以上になると、検査を受けられる医療施設が多いです。
緊張して眠れなかった場合は、どうすれば良いですか?
睡眠に関するデータがとれないので、眠れないときには睡眠薬の使用によって対処します。検査前に、眠れない場合を想定して、当直の医師、臨床検査技師と不眠時の打ち合わせをしておくと良いでしょう。
PSG検査で起きる有害事象として、何がありますか?
電極を取り付けた部位による皮膚の炎症、センサーを固定するために使用したテープによる皮膚かぶれです。検査が終わり電極が取り外れたときに、皮膚が赤くなったり、痒み、痛みなどを感じたり、皮膚の症状が出現したら、医師に相談してください。
PSG検査の種類について
終夜睡眠ポリグラフ検査の目的によって、次の3種類に分類されます。それぞれの特徴について紹介します。
検査のタイプ | 特徴 |
---|---|
診断的評価 | 何も治療を行わずにあなたの睡眠を測定します。主に、睡眠障害の診断や除外のために行われます。普段の睡眠状態をそのまま観察します。睡眠時無呼吸症候群の診断を目的として施行されることが多いです。 |
CPAPタイトレーション | 睡眠時無呼吸症候群のCPAP治療を受けている場合に行われます。臨床検査技師が、CPAP機器の圧設定を調整しながら睡眠検査を施行します。適切な空気圧を決定し、治療効果の判定を行います。 |
スプリットナイト検査 | 診断的評価とCPAPタイトレーションを組み合わせた検査です。夜の前半で睡眠時無呼吸の診断を行い、2~3時間経過してから、患者さんを起こします。そして、CPAP治療を開始して、圧調整を行います。 |
出典:Overnight, Attended Sleep Study – Stanford Health Care
ナルコレプシー、特発性過眠症の評価を行うためには、診断的評価のPSG検査を施行して、その翌日にMSLTを予定します。
検査の流れ
PSG検査を受ける際の流れと準備について、患者さんが知っておいたほうがよい情報をご説明します。
検査前の注意事項
カフェインやアルコールの摂取を控えましょう。なぜなら、これらの嗜好品は睡眠に影響を与える可能性があるからです。普段通りの生活リズムを維持して、検査前日は、いつも通りの時間に就寝・起床するよう心がけてください。
持病があり、薬を飲んでいる人は、検査入院の案内のときに医師に相談し、指示に従ってください。検査を受ける医療施設で、シャワーを浴びることができます。その際、センサーの装着を容易にするため、化粧や髪のスタイリング剤の使用を控えめにしてください。
当日の流れ
まず、指定された時間に医療機関に来院し、保険証の確認をします。その後、病室に移動して、検査の準備に入ります。頭部、顔、胸部、手足など、体の各部位に様々なセンサーを取り付けます。この作業には、30分から1時間ほどかかります。
センサーの装着が完了したら、あなたの就寝時間に合わせてベッドに横になります。そこから朝まで、あなたの睡眠状態が継続的にモニタリングされます。夜中にトイレに行く必要がある場合は、遠慮なくスタッフに声をかけてください。
「どのくらい時間がかかりますか?」という質問を受けることがありますが、原則8時間以上連続して記録されます。
朝になると、スタッフがセンサーを外し、検査は終了します。脳波のペーストが頭部に付着しているので、シャワーを浴びることができます。最後に、あなたの睡眠状況をより詳しく理解するため、簡単なアンケートにお答えいただくことがあります。
この一連の流れを通して、あなたの睡眠の質、いびき、無呼吸の回数、睡眠障害の有無について、詳しい情報が得られます。
検査結果は1~2週後に、臨床検査技師、睡眠専門医によって詳しく解析され、適切な治療方針が提案されます。
費用について
終夜睡眠ポリグラフ検査の保険点数は、3,570点です。ただし、安全精度管理下で行うものは、4,760点が算定されます。そして、脳波検査判断料(180点)が加点されます。通常は医療施設に宿泊して検査を受けるので、入院基本料が2日分かかります。
あなたが精密検査を受けようと思っている有床診療所あるいは病院の種類によって、料金は異なります。一般的には、健康保険の3割負担の場合で、自己負担分が、15,000円から20,000円くらいです。詳しくは、受診される医療施設にお尋ねください。
一般的には、睡眠時無呼吸症候群、睡眠中のてんかん発作、うつ病またはナルコレプシーで重度の睡眠、覚醒リズムの障害の病状を評価する必要があるときに、保険適用になります。さらに、安全精度管理下で行われるPSG検査では、パラソムニアや睡眠関連運動障害、中枢性過眠症といった睡眠障害の診断を目的とするときに、健康保険が適用されます。