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頭痛と睡眠の病気
睡眠に関係している頭痛とは
睡眠関連頭痛は、眠っているとき、あるいは起床時に起きる頭痛の総称です。重症度や症状が続く期間は様々です。片側性あるいは両側性に頭が痛い症状が出現しますが、性質はそれぞれ異なります。
原因について
片頭痛、慢性発作性片側頭痛、群発頭痛などが代表的な病気としてあり、これらは一次性頭痛と言います。ほかに原因となる病気がなく、頭痛そのものが問題である疾患のことです。稀なタイプとして、睡眠時頭痛があります。
一方、体の病気、こころの病気、他の睡眠障害が原因となって、頭が痛い症状が出現することがあり、二次性の頭痛と呼んでいます。
そして、顔面痛、神経痛も原因になります。
出典:徳島県医師会
日中に頭痛が起きる人で、眠っているときにも症状が出現することが多いです。一方で、睡眠時にのみ頭痛が発症する人もいます。一次性の場合は、症状に対する治療が中心になりますが、二次性の場合は、基礎疾患の診断と治療が必要になります。
頭痛と睡眠障害との関係
1.原因と結果
閉塞型睡眠時無呼吸、周期性四肢運動障害は、頭痛の症状を引き起こします。一方、群発頭痛、片頭痛があると、不眠を主体とした睡眠障害が発症します。
このように、眠りの問題と頭部に起きる疼痛について、相互の関係性があります。
2.併存する場合
片頭痛がある小児では、睡眠中に起きて歩くことが多いです。すなわち、夢遊病と片頭痛は合併する傾向があります。
3.内的と外的要因
うつ病の症状として、頭痛が発症することがあります。同時に、うつ症状が、寝つきを悪くさせ、眠りの質を低下させます。すなわち、不眠が発症します。私たちが一つの病気(内的要因)を発病することで、頭痛と睡眠の症状が引き起こされます。
一方、外的な要因として、薬の影響があります。長い期間、鎮痛薬を服用すると薬物乱用頭痛が出現します。また、薬の中止による離脱症状として不眠が生じることもあります。
出典:Miyamoto et al. Headache and sleep disorders. Rinsho Shinkeigaku 2014,54,991–993.
このように、睡眠と頭痛は、相互に影響する関係にあることが分かっています。どちらも日中の活動に支障をきたし生活の質が低下するので、両方に対して適切な診断と対処法が必要です。
頭痛のタイプについて
種類 | 特徴 |
---|---|
片頭痛 | 痛みが拍動性である特徴があり、4~72時間程度続きます。運動によって症状は増悪し、吐き気を伴うことがあります。光や音に過敏になります。頭痛の発作は、日中だけではなく、睡眠中にも起きます。レム睡眠中に発作が起きると、目が覚めることがあります。体を動かすことにより、痛みが増強します。 |
群発頭痛 | 片側性の激痛が、1~2ヶ月の間に毎日同じ時間に出現します。疼痛の持続時間は、15分から3時間程度です。発作が起きる時間帯は、午後9時から午前10時に起きることが多いです。結膜の充血、鼻水と鼻づまり、顔面の発汗、眼瞼の浮腫などを伴います。睡眠中に発症することがあり、レム睡眠に関係しています。 |
慢性発作性片側頭痛 | 片側性の重度の疼痛が、眼窩、眼窩上部、側頭部のいずれかに2~30分程度続きます。自律神経症状(落涙、鼻閉または鼻漏、前頭部および顔面の発汗、眼瞼浮腫など)を合併することが特徴です。発作の頻度は1日当たり5回以上です。群発頭痛と比較すると、インドメタシンが著効します。頭痛の発作は、レム睡眠と強い関連があります。 |
睡眠時頭痛 | 夜間に眠っているときにのみ頭痛が生じて、目が覚めます。1ヶ月あたり15回以上の発作が起こり、頭痛によって覚醒してから15分以上続きます。初発年齢は、50歳以上です。頭痛は、一晩に3回以上起きることがあり、夜間帯の同時刻に起きることが多いです。頭部の自律神経症状は認められません。リチウム、カフェインが効きます。 |
他の病気に伴う頭痛 | 高血圧、脳腫瘍、頭部外傷、脳動静脈奇形、うつ病、睡眠時無呼吸症候群などは、眠っているときに頭痛を引き起こし、目が覚める原因になります。脳内血種、脳腫瘍によって頭蓋内圧が亢進すると、朝方の頭痛が生じます。通常、起床してから30~60分で改善します。同時に吐き気、局所症状が出現することがあります。 |
出典:American Academy of Sleep Medicine. The International Classification of Sleep Disorders. 3rd ed. Darien, IL: American Academy of Sleep Medicine; 2014.
睡眠に及ぼす影響
睡眠関連頭痛は、眠りの質を低下させたり、不眠を引き起こします。一般的には、頭部の疼痛による覚醒回数の上昇、体動の増加、深いノンレム睡眠の減少がみられます。総睡眠時間が減少するため、睡眠不足になります。
さらに、むずむず脚症候群の症状を発症することが多いことが分かっています。
出典:宮本 雅之; 頭痛疾患における睡眠障害とその対策 神経治療 2018,35:556-560
片頭痛は、有病率が高いことから、痛みのコントロールだけではなく、眠りに対する治療も大切です。中には、別の病気が見つかることもあります。
睡眠時無呼吸症候群との関係
眠っているときに気道が閉塞して、いびき、無呼吸が生じます。空気の取り込みが不足する低酸素血症が起きるほか、換気が不十分になるので高炭酸ガス血症が起きて、頭痛が生じます。夜間の覚醒回数、血圧の上昇などが関与している可能性があります。CPAP治療によって閉塞性睡眠時無呼吸の病態が改善すると、症状が軽減することがあります。
睡眠時間との関係
寝不足による頭痛 | 寝すぎによる頭痛 | |
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特徴 | 睡眠不足になると、筋肉が常に緊張した状態になります。 筋肉のこわばりが肩こり、首周囲の筋肉のこりを引き起こし、緊張型頭痛が発病します。ストレスも加わり、吐き気、めまいを伴う人もいます。 | 寝る姿勢が悪いことで起きる緊張型頭痛が起きます。寝過ぎると副交感神経が優位になるため、脳内の血管が拡張します。起床時に血流増加に伴う血管の拍動が三叉神経を刺激して、片頭痛を発症します。 |
対処法について
長期に渡って、頭痛が続いている場合や薬による治療が効かないときは、睡眠障害が存在していないか睡眠専門医による評価を受けることが重要です。
睡眠不足や睡眠リズムの問題があれば、見直す必要があります。睡眠の質に影響を及ぼす睡眠時無呼吸症候群、周期性四肢運動障害などは、終夜睡眠ポリグラフ検査による精査を検討しましょう。
何科を受診すべきか悩んでいる方は、まずは脳神経内科の診察を受けることを勧めます。そして、眠りの問題が関与していると判断されるときは、睡眠外来を受診してください。