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子どもの寝不足の症状と健康に及ぼす影響
なぜ子どもの睡眠が大切であるか?
睡眠は、身体とこころの健康を維持するために欠かせない要素ですが、小児では発達と成長に大きく関わります。発育に必要な成長ホルモン分泌が正常に行われるためには、十分な睡眠の長さと質の良い眠りが必要です。
しかし、24時間社会、デジタル化が進んでいる生活に突入した昨今、大人だけではなく、子どもの睡眠不足が深刻な問題になってます。
このページでは、睡眠専門医が、養育者向けに「子どもの睡眠不足」について詳しく説明しています。あなたのお子様が健やかに育つヒントに役立てて下さい。
子どもの睡眠不足とは
子供の睡眠不足とは、睡眠時間が十分でない状態が続いていることを意味します。
睡眠時間の短縮に加えて、日常生活に支障をきたしている症状があると、睡眠不足症候群と呼ばれています。
正常な睡眠時間の目安はどのくらいですか?
年齢、体質によって推奨される時間は異なります。米国の国立睡眠財団によれば、3~5歳では10~13時間、6~13歳では9~11時間、14~17歳では8~10時間が、推奨されています。
出典:How Much Sleep Do You Really Need? – National Sleep Foundation
子どもが寝不足になる原因
デジタル機器の普及による夜更かし、深夜までの受験勉強、学校や家庭内で起きるもめ事があって眠れないなど、子どもの睡眠時間が短くなっている傾向があります。
寝不足になる要因として、以下のようなものが挙げられます。
- 夜更かしの生活をしている
- スマホ、タブレットを深夜まで見ている
- 勉強と宿題が多くて就寝時間が遅い
- 部活の朝練があるので起床時間が早い
- 養育者の帰宅が遅いので就寝時刻が遅くなる
睡眠の質が低下していることも、寝不足の原因となることがあります。具体的には、病気、睡眠障害、精神状態、環境などの要因があると眠りが浅くなります。結果として、しっかり寝たつもりでも眠いと感じるようになります。
出典:Fadzil A. Factors Affecting the Quality of Sleep in Children. Children (Basel). 2021;8(2):122.
思春期の悩み、不安、ストレスで眠れない、あるいは、眠りが浅い状況が続くことは、よくある寝不足の要因の一つです。
幼児、小学校低学年の子どもでは、なかなか寝ないので、睡眠が足りていないという場合も少なくありません。
注意すべき症状について
子どもの睡眠が不足しているときに現れる症状のチェックリストをご覧ください。
- 居眠り
- あくびが多い
- 疲れやすい
- イライラ感、不安など、情緒が不安定になる
- 食欲が低下している
- 元気がない
- 集中力がなく多動になる
- 記憶力が落ちる
子どもの睡眠が足りていないときの症状は、大人と異なる点があるので注意しましょう。具体的には、子供が寝不足によって生じた眠気の表現として、多動、注意散漫、衝動的行動が現れることがあります。これらの症状はADHDと特徴と類似しているので、鑑別が大切です。
小児は、「自分が寝不足の状態になっているか」に、気づかないことがあります。さらに、短時間の睡眠不足が長期になると、睡眠負債が発生します。
睡眠不足が及ぼす影響ついて
睡眠時間が短い子どもは、身体と精神にさまざまな影響を受けます。眠りの質と量が適切でない生活をずっと送っていると、健康上の問題を引き起こします。そればかりでなく、成長段階にある子どもの発達の遅れにつながります。
1.身体に与える影響
寝不足があると、体の発育に欠かせない成長ホルモンの分泌が不十分になります。その結果、成長の遅れが生じる危険があります。身長が伸びない、体重が増えないという問題が生じる可能性があります。
食欲に関係するホルモンへの影響もあり、肥満になりやすいです。
出典:睡眠不足や睡眠障害、子どもへの大きな影響 – eヘルスネット
寝ない子どもは、日中に疲れた体を、十分に休息させることができないので、疲労感が蓄積します。免疫系にも影響するので、風邪をひいたり、感染症にかかりやすくなったり、病気になるリスクが高くなります。
2.中枢神経系に与える影響
睡眠不足は、情緒面に悪影響を与えます。自分の衝動面をコントロールできないことや異常行動が現れやすくなります。落ち着きのない行動が多くなるので、授業中の集中力が低下します。記憶する力も落ちるので学習面にも影響します。
十分な睡眠がとれていない生活が続くと、うつ病の発症リスクが高くなります。
出典:Sleep deprivation – Better Health Channel
落ち着きがない、怒りっぽい、攻撃的な言動がある子どもは、睡眠不足が影響している可能性があるかもしれません。あなたのお子様が感情のコントロールがうまくいっていない思ったら、寝不足がないか、注意しましょう。
思春期の子どもの寝不足は、知識や経験などで問題を解決する能力に影響することが知られています。
十分に眠っていない状況は、メンタルヘルス不調と学習能力の低下を引き起こします。健やかな成長のためには、毎日の睡眠時間をしっかりと確保することが大切です。
診断する方法
外来で生活時間の聞き取りを行い、睡眠日誌で睡眠時間とリズムについて評価します。同世代の睡眠時間より短くなっていないか確認します。
睡眠習慣の評価に加えて、子供に以下のような症状があるか、確かめます。
- 活動時間帯に、眠りたいという感じがある
- 日中に「うっかりミス」が多い
- 眠気の症状として行動の異常がある
起床時の様子に関する聞き取りも参考になります。具体的には、目覚まし時計、養育者によって、朝起きる習慣があり、寝起きの機嫌が悪く、ぼーっとしていることです。さらに、週末や休日になると、普段より2~3時間長く寝ているという生活です。
通学の途中、塾の送迎のときの車の中で寝てしまうことは、睡眠が足りていない徴候です。
最後に、睡眠時無呼吸症候群、過眠症、眠気を引き起こす薬剤の影響が除外されていることを確認してください。睡眠不足の場合、睡眠時間を長くした生活を続けていると眠気が消失します。この現象は、ナルコレプシーとの鑑別点の一つです。
症状の経過、睡眠日誌の記録などを総合的に判断して、睡眠不足症候群の診断が行われます。
子どもの睡眠不足を改善する方法
睡眠を長くすると、体調の回復、情緒面の安定につながります。そのために、以下のような習慣を身につけましょう。
初めに、家族で子どもの規則的な睡眠リズムを決めることが大切です。毎日同じ時間に寝ることや起きること、食事をする時間などを決めてください。そして、スマホ、タブレットなどの電子機器の使用時間を制限することが大切です。
運動不足は睡眠の質を低下させている要因の一つになります。机に座って勉強ばかりの生活をしているよりは、日中、適度に体を動かす方が身体が疲れるので、よく眠れるようになります。
夕食の後は、照明を徐々に暗くしていくことが重要です。なぜなら、ブルーライトの影響があると、寝つきが悪くなるからです。就寝前にリラックスできる時間を作るのも良いでしょう。
子どもの寝室の環境にも注意しなければなりません。寝室は静かで暗く、快適な温度と湿度を保つ配慮が必要です。音の問題にも注意を払いましょう。養育者の帰りが遅いと、物音が睡眠を邪魔することがあるので、防音の対策が欠かせません。
出典:Promoting adequate sleep in young people – Australian Institute of Family Studies
「寝る子は育つと」いう言葉があります。幼児の頃から、早寝早起きの生活習慣を身につけることが、賢く、そして健やかに育つために大切です。「寝ない子ども」は、将来、「寝ない大人」になる可能性があるので、注意しましょう。