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睡眠中の激しい寝言と暴れる症状に対応する診療科
はじめに

夜中に寝ているはずの家族が、突然大声で怒ったような叫んだり、手足を激しく動かしたりする。あるいは自分自身が、夢の中で何者かに襲われて喧嘩をしていたと思ったら、目が覚めると隣のパートナーをキックしていた。
そんな経験があると、「単なる寝相の悪さ」では片付けられない不安と恐怖を感じるのではないでしょうか。
夢の中の行動がそのまま現実の体の動きとして現れてしまう状態は、医学的にレム睡眠行動障害と呼ばれる病気の症状です。しかし、まだ認知度が高くなく、医療機関に相談すべき状況であるか判断に迷っている場合が少なくありません。さらに、夜間に発生する異常な症状に気づいたとしても、多くの人は次のような疑問を抱くかもしれません。
- これは病院に行くべき症状なのか?
- 何科を受診すればいいのか分からない
- 精神科なのか、内科なのか、睡眠外来ってどこにある?
今回のブログ記事では、「レム睡眠行動障害の疑いがあるとき、何科に行くのが良いか?」という疑問に焦点を当てて、実際の医療現場の状況を踏まえながらわかりやすく解説していきます。
レム睡眠行動障害の症状について

レム睡眠行動障害とは、眠っているとき、そして、夢を見ているときに、その夢の内容と同じような動作を現実に行ってしまう病気です。たとえば、夢の中で誰かと言い争っていた場合に、実際に寝ながら大声で叫んだり、手を振り回したりするような行動が見られます。
通常、恐怖、不安を伴うような夢の内容が多い印象です。具体的には、自分が危険な状況に置かれている感じで、その状況から逃れようと、激しい寝言と一緒に逃避、闘争の言動が現れることが多いです。
患者さんの体験談によれば夢の中で強盗を追い払おうとして布団の中で立ち上がろうとしたり、隣で寝ている人を蹴ってしまったりするというエピソードがありました。
人が夢を見ているとき、すなわちレム睡眠のときには、筋肉が弛緩して動けない状態になるのが正常ですところが、レム睡眠行動障害ではその仕組みがうまく働かず、夢と同時に体が動いてしまうのです。このメカニズムによって、夜間の異常行動が現れます。近年の研究では、パーキンソン病、認知症の前駆症状として注目されています。
出典:REM sleep behavior disorder – Symptoms and causes – Mayo Clinic
何科に行けばいいのか?
結論としては、まずは脳神経内科または睡眠外来が基本です。
レム睡眠行動障害は脳の機能異常が関わっており、脳神経内科が得意とする分野です。脳神経内科では、レム睡眠行動障害がパーキンソン病などの神経変性疾患の初期症状として現れることも踏まえた評価を受けられます。その他の特徴として、眠っているときの異常行動をきたすような病気であるパラソムニア(睡眠時随伴症)の診断と治療が得意です。
一方、睡眠外来は、さまざまな睡眠障害の種類について専門的に扱う窓口であり、レム睡眠行動障害の対応が可能です。そして、確定診断に必要な終夜睡眠ポリグラフ検査が施行できる体制が整っています。
脳神経内科による身体的、神経学的な評価のあとに、睡眠専門医に紹介される場合もあります。
出典:REM Sleep Behavior Disorder – Cleveland Clinic
「精神科あるいは心療内科はどうなのか?」という疑問を持っている方もいるかもしれません。日常生活のストレスによって、症状が激しく、本人または家族が「精神的な問題かも?」と感じる場合は、精神科や心療内科への相談も良いと考えます。その上で、脳神経内科、睡眠外来と連携してもらうと安心です。
地元に適切な診療科がない場合の対処法

地方や郊外に住んでいる方にとって、「睡眠外来が近くにない」「脳神経内科の医師がいない」という状況は珍しくありません。たしかに、脳神経内科を専門としている医師は、内科医の中でも少ないです。
その場合、まずはかかりつけの内科医に相談し、紹介状をもらうという方法が現実的です。医師に困っている症状を伝えて、高次医療施設にある対応できる診療科に予約をとってもらいましょう。
睡眠障害の専門外来を探すときのポイント

自分の症状がレム睡眠行動障害によるものかもしれないと感じたとき、脳神経内科や睡眠外来が推奨されています。しかしながら、「実際に、どの病院で診てもらえるのか? 」という現実的な壁にぶつかる人は少なくありません。
睡眠外来と聞いても、具体的にどの病院にあるのか、どう探せばよいのか分からないという声が多く聞かれます。その回答としては、日本睡眠学会の認定医療機関を活用することが解決につながるかもしれません。
日本睡眠学会の睡眠医療認定一覧のページには、一定の診療実績、終夜睡眠ポリグラフ検査を行っている設備、専門知識を有する医師が掲載されており、レム睡眠行動障害の診察に精通している睡眠専門医の医療を受けられる可能性が高いです。
受診のタイミングについて

以下のような状況に該当する場合は、速やかに医療機関の受診を検討すべきです。特に、中高年の世代は症状がひどくならないうちに診察を受けることが大切です。
- 睡眠中に叫ぶ、怒鳴る、避けるような動きをする
- 手足を振り回す、寝相が激しい、人を叩く行動がある
- 寝ている間に自分やパートナーがケガをしている
- 同じような異常行動が週に1回以上の頻度で起きる
- 症状が数ヶ月以上続き、悪化している
まとめ:今すぐできる三つの行動とは
- 症状を記録する(いつ・どんな動き・何分程度続いたか)
- かかりつけ医に相談する(紹介状を書いてもらう)
- 脳神経内科または睡眠外来を調べる