- ホーム
- 小児が寝ない理由と対策が分かります
小児が寝ない理由と対策が分かります
なぜ子どもが寝ないのか?
睡眠は子どもの成長と発達にとって不可欠な役割を果たします。ぐっすり眠ることは、昼間に疲れた体を回復させたり、脳において記憶の整理をしたり、学習能力の向上に重要です。
しかし、幼児から小学生の子どもたちにおいて、「夜になっても、なかなか寝ない」という問題を抱えている場合があります。子どもが寝ない理由は何か、知りたいという父親、母親がいます。
養育者にとって、子どもの不眠が育児ストレスになり、イライラする場面も少なくありません。朝、起きるのに時間がかかるので、大変な思いをします。そのため、家族全員の生活に影響する懸念があります。さらに、睡眠不足は、健やかな成長の妨げになります。
今回は、睡眠専門医として、幼児から小学生低学年の子どもが入眠困難になっている原因と対処法について、解説します。お子様の健やかな成長と、良い睡眠環境作りの参考にしてください。
寝る前の刺激が多くありませんか
夜遅くまで、テレビを見たり、タブレット、スマホなどの電子機器でゲームをしたり、興奮状態を促す行動をとると、睡眠に悪影響を与えます。その上、寝る前にブルーライトを浴びると、体内時計に影響して、睡眠リズムが後退していきます。その結果、寝つきが悪くなります。
出典:未就学児のための睡眠Q&A保護者の方へ – 未就学児の睡眠・情報通信機器使用研究班 厚生労働科学研究費補助金
対処法として、寝る準備のための環境づくりをしましょう。就寝時刻の2時間前くらいになったら、静かで落ち着いた環境にします。子どもが就寝前に刺激を受けないように、電子機器の使用を制限することが大切です。本の読み聞かせ、リラックスできる音楽を流すなど、子どもがリラックスできる時間を設けましょう。
不規則な生活リズム
子どもの生活リズムが不規則になると、体内時計に悪影響を及ぼします。結果として、寝つきが悪くなります。
夜遅くまで遊ぶことはありませんか。週末、休日の就寝と起床時刻が平日のときと異なると、睡眠リズムが安定しません。テレビ、ゲームなどで夜更かしをすると、翌日に起床困難が現れたり、睡眠不足の影響が出たり、日中の活動に支障をきたします。
養育者が遅い時間まで起きていると、子どもの就寝時刻が遅くなりがちなので注意が必要です。親子で夜遅くまでテレビを見ていると、睡眠リズムに影響することが報告されています。
出典:岡田(有竹)清夏; 乳幼児の睡眠と発達, Japanese Psychological Review;60(3):216-229,2017
夜遅い時間に強い光刺激を受けてしまうと、睡眠を促すメラトニンの分泌が抑えられてしまうので気を付けましょう。
家庭で取り組みむべき内容として、生活リズムを整えることを勧めます。毎日の起床時刻と就寝時刻を一定にして、休みの日であっても、同じ時間に起きるように心掛けましょう。子どもの良い眠りのために、親も夜型の生活を是正することが大切です。
夕方遅い時間に昼寝をしてしまうことも睡眠と覚醒のリズムを乱す要因になります。昼寝の時間が長すぎると、夜になっても寝られないことが多いで、注意しましょう。
こころの状態が不安定である
物心がつく時期、2~3歳くらいから、日常生活で嫌なことに対する不安、悩みを抱えるようになります。幼稚園、小学校での生活において、こころの状態が平穏でないと、入眠困難になります。病状がひどい場合は、嫌な夢ばかり見るというケースもあります。
具体的には、友達、親との関係がうまくいっていないことがあげられます。最近では、受験の低年齢化によって、勉強面でのプレッシャーを抱え込んでいる場合もあります。
年齢の低い子どもは自分から悩みを言い出せないことが多いです。寝なくなった時期から、何に困っているかを知るために、話を聞いてみることが大切です。ストレス解消のために、運動する機会を設けても良いでしょう。
不安、緊張、夜泣きがあったり、神経が高ぶっているときは、漢方薬によって気分を落ち着かせて、眠りを助ける方法もあります。
疲れがたまっている
我が子が少しでも「賢く育っていってほしい」という想いがあり、養育者は幼児期から学習塾、習い事(音楽、スポーツなど)に通わせることがあります。適度なスケジュールであれば問題ないのですが、予定を詰め込み過ぎると、子どもはくたくたに疲れてしまいます。
学業や習い事、遊びなどで過度に疲れてしまうと、興奮状態が続き、寝つきが悪くなります。そのため、眠いのに寝れないということがあります。子どもの疲労の程度を見極めて、習い事と休憩時間のバランスをとりましょう。
運動不足が続いている
子どもが寝ない理由の一つに、運動不足があります。通常、活動的な一日を過ごすことで、子どもは夜に疲れを感じ、良い睡眠をとることができます。しかし、電子機器でゲームをする習慣、室内での習い事あるいは机に座って勉強が続いた生活を送っていると、運動量が不足しています。
適度な疲れがあると寝つきに良い影響があるので、日常生活に運動を取り入れることが大切です。
具体的な方法として、子どもと一緒に公園で遊ぶこと、家族で散歩をすること、そして、スポーツをすることなどです。親子のスキンシップによる満足感があると、気分良く眠れるようになります。
寝室の環境
子どもが寝る部屋の温度や湿度、明るさ、騒音など、睡眠環境が適切でないと、子どもが寝れない原因になります。部屋の温度として、13~29度が許容範囲とされています。
心地よい寝室の環境を整える場合、人によっては、夏と冬において、エアコンで調節することが大切です。冬季に暖房するときの室温の目安は、通常17~22度くらいです。一方、夏季に冷房する目安は25~28度です。湿度は40%~60%の間に調節しましょう。
部屋の照度に関しては、寝室をできるだけ暗くましょう。また、音の対策も同時に行います。怖い音があると、寝ない理由になることがあります。反対に、不眠の対策として、リラックスできるよう睡眠BGMを活用する方法があります。
遮音カーテンを用意するなど、騒音を軽減する方法があります。寝室は寝るためにだけ使用することが理想で、テレビを置かないほうが良いです。
夜遅い時間に帰ってくる養育者から発生する生活音について、配慮しましょう。
発達障害
自閉スペクトラム症、注意欠如・多動症などの発達障害があると、不眠を併発することがあります。寝つきが悪いという問題もありますが、寝室に行きたがらないという子どもがいます。
コミュニケーション、集中力、学習面、情緒面において、気にかかる症状があれば、小児科の診察を受けることを勧めます。
まとめ
子どもの寝つきが悪いときは、過剰な刺激、生活リズムの乱れ、メンタルヘルスの不調、過度な疲労、寝室環境の問題、発達障害など、さまざまな原因が考えられます。これらの原因を把握し、適切な対処法を試すことを勧めます。
自分の子どもの年齢によって、推奨される睡眠時間は異なります。寝不足にならないように、普段から十分な睡眠を確保したいものです。
セルフケアをしても入眠困難が改善せず、朝起きられないという事態を経験するかもしれません。そんなときは、睡眠専門医に話を聞いてもらうのも良いでしょう。