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飲酒が原因となる睡眠障害とは
睡眠の質への影響とは
私たちが飲酒すると、胃と小腸から、吸収されていきます。消化管に入ったアルコールは、飲んでから1~2時間で、消化管粘膜から門脈を介して、肝臓に入り代謝されます。
肝臓で処理しきれなかったアルコールは、肝静脈を通って心臓へ、そして、脳を含めた全身に送られます。このとき、アルコールが脳にはたらき、催眠作用が生じます。そのため、私たちは、眠気を感じるようになります。
夜中、血液中のアルコール濃度が下がると、睡眠の前半にあった催眠作用がなくなり、覚醒しやすくなります(浅い眠り)。早朝覚醒の原因にもなります。その他、トイレが近くなります。アルコールは利尿作用があるので、夜中に尿意を催して目が覚めます。
このように、飲酒が睡眠障害を引き起こし、不眠症の症状を呈します。
後述しますが、睡眠時無呼吸、レム睡眠行動障害の病状が悪化することも知られています。
寝酒について
眠れないという悩みがあると、お酒の力を借りて眠ろうとする人がいます。たしかに、飲酒をすると、眠気が出てくるので、寝つきは良くなりますが、浅い眠りが多くなります。そして、レム睡眠が抑制されます。
夜、目が覚めることが多くなります(中途覚醒)。そして、一度、起きると、なかなか寝付かれないこともあります。
寝酒が習慣になると、アルコールで眠るという効果が薄れていくことが分かっており、耐性と言います。そのため、摂取量が増える傾向になります。その結果、肝機能障害、アルコール依存症の問題が生じます。
不眠の症状に対して、睡眠薬の代わりに飲酒で対応することを控えください。
飲酒したときは、睡眠薬を飲まないことが鉄則です。アルコールと睡眠薬が同時に肝臓で代謝されることになるので、処理しきれなくなります。その結果、睡眠導入剤の効果が増強されます。その結果、健忘、ふらつき、異常行動が生じる危険が高くなります。
睡眠障害とアルコール依存について
眠るために飲酒量が多い状況が続くと、入眠作用の耐性が生じてきます。その結果、寝つきが悪い、起床時の爽快感がなくなる症状、不眠を自覚します。
こういった状況があると、不眠を解消しようと、アルコール摂取量が増えていきます。睡眠障害を対処するために、飲酒に頼ると、精神的な依存が生じるきっかけになります。そして、アルコール依存症に発展します。
アルコール依存症になると、不眠のほか、悪夢障害、過眠、昼夜逆転などの症状が出現します。
出典:内村直尚:アルコール依存症に関連する睡眠障害.精神神経学雑誌,112;787-792,2010.
眠れない状況が悪化すると、さらに飲酒に頼り、アルコール摂取量が増えていくという悪循環に陥る危険があります。
出典:睡眠障害 – 減酒.jp
何時間前までに飲酒を済ませるべきか
夜、寝る直前にアルコールを飲むと、酔いが覚めない状態で、睡眠に入ります。成人男性の場合、日本酒1合(180ml)を代謝するのに、3~4時間かかります。そのため、飲酒の時間として、エタノール含有量20gのアルコール飲料であれば、寝る4時間前までが無難です。
最近になって、1ドリンク = アルコール:10gという基準量が使われるようになっています。女性は肝臓でアルコールを分解する力が男性より低いので、2ドリンクより1ドリンクのほうが無難です。
アルコールの摂取量が増えると、より長い時間がかかるので、注意しましょう。翌日に起きる二日酔い症状の原因になります。
いびき・無呼吸が悪化する
アルコールを飲んでから眠ると、上気道にある筋肉、舌が弛緩します。そのため、気道が狭くなります。そのため、いびき、無呼吸が起きやすくなります。
無呼吸があると、通常、呼吸が再開しますが、アルコールの影響のため、覚醒するまでの時間が延長します。そして、無呼吸の時間が長くなります(低酸素血症が重度となる)。
特に、仰向けで眠っているときのレム睡眠中では、呼吸状態が悪化する危険があります。
レム睡眠行動障害と関係
睡眠時随伴症の一つである、レム睡眠行動障害は、夢を見ている状態のとき、夢の内容に対して行動してしまう病気です。大声で叫ぶ、体を動かすなどの症状が問題になります。
高齢者に多い睡眠障害ですが、アルコール摂取が原因になっていることがあります。