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SASがある人【車両の運転許可:診断書交付の流れ】
睡眠時無呼吸症候群があるとき運転しても良い?
睡眠時無呼吸症候群(SAS)は深刻な眠気を引き起こし、特に職業ドライバーにとっては運転事故のリスクをもたらします。この病気がある場合、走行中の集中力と反応速度が落ちるので、車両の運転をする場合は、正確な診断と適切な治療が不可欠と言えます。
睡眠時無呼吸症候群という病気を抱えているドライバーは国内でもみられますが、健康面において運転をして良いという医学的な証明が必要とされるケースがあります。それだったら、睡眠障害の診断書の中でも、SASの運転に関する診断書の情報を詳しく知りたいと思うかもしれません。
今回のブログ記事では、SASのある人が運転の適性を証明する診断書を書いてもらう方法について、具体的な手順と睡眠専門医が知っている情報を提供します。
具体的には、睡眠時無呼吸症候群の診断を受けたドライバーがどのような精密検査を受けて、どのようにして検査結果が判断されるのか、運転許可の更新や取得に要求される基準はどうなっているのかに焦点を当てます。
あなたが睡眠時無呼吸症候群と診断されたときの適切な対応策と、安全運転を続けるためのヒントについて、詳しく解説していきます。
睡眠時無呼吸症候群が運転に及ぼす影響
睡眠時無呼吸症候群が車の運転に与える影響は大きく、無視できません。なぜなら、この病気があると、ぐっすり眠ることができず日中に非常に眠くなることがあるからです。そればかりか、運転中の集中力が落ちてしまい、居眠り運転につながる危険もあります。結果として、事故の発生につながります。
普段、眠気を自覚していない人も多く、車両の走行中にマイクロスリープが発生する危険があります。瞬間的に現れる睡眠は、運転時の反応が遅くしたり、判断力も鈍くしたり、危険な運転の原因になります。
睡眠時無呼吸症候群のある運転者は、そうでない運転者に比べて交通事故を起こす確率が2.5倍も高いと言われています。特に症状が重い場合は、事故のリスクがさらに高くなります。未治療のSASをもっている人が高速道路を運転しているときに追突事故が起き、死傷者が発生した事例も数多くあります。
大切なのは、軽症の睡眠時無呼吸症候群と診断されている場合でも、「眠気がないから大丈夫である」とは言えないことです。そればかりではなく、国内においてSASが未診断であるドライバーが潜在している可能性があります。交通事故を減らすために、睡眠時無呼吸症候群の早期発見が大切である所以です。
運転に関する診断書とは
睡眠時無呼吸症候群の病名、症状と治療の経過、そして、安全に運転するための条件について、医師が記載した文書です。睡眠時無呼吸症候群の人が、運転に関する診断書が必要となる場面は、主として二つです。
- 車両の運転免許の取得と更新手続き
- 業務のときに必要となる車両の運転許可
運転免許を交付している公安委員会は、危険運転をする可能性が高いドライバーの運転免許を保留または停止しなけばなりません。危険運転を防止するために、必要な処置をとっている姿勢と言えます。
一方、事業者は、バス、トラック、タクシーなどの職業ドライバーが車両の運転をしてもよいか、医学的な証明を欲しいと考えます。なぜなら、労災事故を防ぐためにも、睡眠時無呼吸症候群の治療管理が適切にされているか把握しておきたいという背景があるからです。
両者に共通する目的は、睡眠時無呼吸症候群が要因となる「車両の運転事故」を防ぎたいことです。それでは、具体的な診断書の内容および注意点を解説します。
1.運転免許の取得・更新のとき
「睡眠時無呼吸症候群の治療がうまくいっており、医学的に車両の運転に支障なし」と医師が証明している文書」があれば、公安委員会の運転適性の審査に有利にはたらきます。別の見方をすれば、診断書が健康面に関する判断根拠の一つになります。
運転者の健康状態が自分自身だけでなく、公共の交通安全に直接影響を与える可能性があります。そのような理由で、診断書の提出が重要な手続きになっています。
重度の眠気を有する睡眠障害がある人が運転免許を更新するときには、診断書にどのような事項が記載されますか?
病名のほか、現病歴、現在の症状、重症度、治療経過、治療状況などです。つまり、医師は、あなたの健康面に関する医学的判断を公安委員会の審査担当者に理解してもらうために、診断書を作成します。
- いつからその病気で悩んでいるのか
- 今、どのような症状があるのか
- その病気の重症度(軽いのか重いのか)
- これまでどのような治療を受けてきたのか
- 現在の治療の状況はどうなのか
同時に、医師は、病気の改善の見込みがあるのか、重度の眠気が生じる危険があるのかに関する意見を書きます。もちろん、精密検査の結果、「現在、睡眠障害でない」という結論を書くこともあります。
法的な規制において、睡眠時無呼吸症候群による事故リスクを軽減するため、未治療の重度のSASがあると運転免許を更新できないケースがあります。病状によっては、特定の条件下でのみ運転が許可されることがあります。このような運転の制限は、公道を使用するすべての人々の安全を守るためのものです。
2.職場が仕事であなたの運転許可の判断をするとき
運送や旅客業界において、企業がドライバーを抱えている場合は、勤務中の運転事故を防ぐように安全管理をしなければなりません。万が一、事故が発生したときに、企業は法的な責任を問われます。
そのような背景があることから、事業者は法的責任を回避するために、普段から運転手の健康状態を定期的に把握して、産業衛生に関する管理と支援を行っています。
公安委員会が指定する書式ではなく、企業が指定する「業務運転に関する内容」を満たす診断書を作成します。
運転免許の更新のときに公安委員会に提出する内容と類似したものが、企業向けでも要求されることが多いです。
診断書が作成されるまでの流れ
睡眠時無呼吸症候群の診断を受け、運転免許の更新や維持のために必要な診断書、会社で勤務中の乗車が可能であるという診断書をもらうためのプロセスを紹介します。
ステップ1: 初診と基本的な評価
睡眠時無呼吸症候群の疑いがある場合、一般的な内科または耳鼻咽喉科、睡眠外来において、医師の診察を受けます。
初診時には、あなたの睡眠習慣を聞き取り、昼間の疲労感、集中力の低下がないか、他の健康問題がないかなどを確認するなど、基本的な診察が行われます。睡眠時無呼吸症候群が発生した原因についても評価されます。
職場でSAS検診を受けた人は、そのデータを用いて精密検査の必要性と今後の治療への道筋を話し合います。
ステップ2: 睡眠検査の実施
診察の結果、閉塞性睡眠時無呼吸症候群の可能性が高いと判断されると、詳しく病状を評価するために、終夜睡眠ポリグラフ検査が予定されます。
通常、この精密検査を受けるときは、病院あるいは有床診療所に宿泊する必要があります。入院検査ともよばれており、一晩かけてあなたの睡眠中の無呼吸の回数と長さ、いびきの大きさ、血中の酸素レベル、心拍数、などが記録されます。同時に、ビデオカメラで、寝ているときの様子も観察されます。
検査を受けてから、後日、外来で結果の説明と今後の治療方針を決定します。
ステップ3: 診断と治療計画の確定
あなたの症状と経過、および睡眠検査の結果を総合して、医師は睡眠時無呼吸症候群の診断を確定します。同時に、重症度の判定を行います。具体的には、無呼吸低呼吸指数(AHI)、血中酸素レベルの低下の程度、異常呼吸による覚醒の回数などの検査データと、主観的な眠気の程度が重症度の判定に用いられます。
そして、その人のライフスタイル、勤務体系、健康状態などを考慮して、治療計画が決められます。病院で受けられる治療手段して、CPAP治療、口腔内装置、そして、耳鼻科手術があります。
治療を開始してから、眠気がないこと、そして、AHIが基準値範囲内にコントロールされていることを目標とします。
ステップ4: 診断書の取得
治療を開始して一定期間が経過した後、医師はあなたに診断書を交付します。この診断書には、患者の病状、治療経過、運転における安全性に関する医師の意見が書かれています。
運転免許の更新に必要な診断書は、都道府県の公安委員会が指定している書式で作成されます。一方、職場で業務上で車両を運転するために必要な診断書は、職場の指定する診断書あるい医療機関独自の書式で作成されます。
診断書の交付後に注意すべきこと
あなたが睡眠時無呼吸症候群の治療を続けることで運転許可が判定された後でも、いくつかの重要な注意点を守る必要があります。
具体的には、CPAP治療あるいは口腔内装置は睡眠時無呼吸症候群を根本的に治癒させる効果はありません。そのため、CPAP治療であれば睡眠中の鼻マスクの装着を徹底すること、口腔内装置による治療が選択された人はマウスピース装着を毎晩行うことが大切です。
定期的な医師の診察を受けてください。そして、一定期間を経過したら、睡眠時無呼吸症候群の再評価および治療効果の判定をするために検査を検討しましょう。このことは、次回の運転免許の更新にも役立ちます。
治療経過中に、自身の健康状態に変化があった場合は、速やかに産業医や睡眠専門医に相談してください。必要に応じて診断書の内容を更新しなければなりません。
いずれにせよ、睡眠時無呼吸症候群の人が運許許可の診断書をもらったとしても、それで終わりではありません。安全な運転を続けるために、継続的な診察とセルフケアが必要です。
よくある質問と回答
睡眠時無呼吸症候群の治療を受けています。都道府県にある警察本部の運転免許課から、診断書を提出するよう通知書をもらいました。どのような理由でしょうか?
道路交通法の第103条第1項第1号から第3号および道路交通法施行令の第38条の2に記載されている病気に該当する疑いがあると考えられます。具体的な理由として、自動車の安全な運転に支障を及ぼす恐れがある病気の可能性があるからです。その中で、重度の眠気の症状を呈する睡眠障害として、睡眠時無呼吸症候群が含まれています。
警察本部の運転免許課が指示している診断書の提出をしないと、どうなりますか?
あなたの運転免許について、「取消」あるいは「停止」の処分が下ります。その場合、あなたは運転免許の自主返納をすることができません。
診断書の作成には、どの程度の時間がかかりますか?
あなたが診察を受ける医療施設によって異なりますが、精密検査を受けて治療経過を見届けてから、診断書ができあがるまでに、1~2ヶ月かかります。
運送の仕事をしています。睡眠時無呼吸症候群があるので、治療を受けるまでトラックの乗車禁止を指示されました。どうすれば良いですか?
まずは、医師の診察を受けて、睡眠時無呼吸症候群の治療を始めましょう。SAS検診で疑いの場合であれば、精密検査を勧めます。そして、治療を行った上で、医師にあなたの職場にいる産業医宛ての診療情報提供書あるいは診断書を作成してもらいます。その文書には、病名、検査結果、治療経過などが記載されています。その文書によって、事業者があなたの乗車許可の判断をします。
出典:事業用自動車の運転者の健康管理マニュアル - 国土交通省 自動車局