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新型コロナ後遺症で発症する睡眠障害の症状
新型コロナウイルス感染症の罹患後症状とは
新型コロナウイルス感染症に罹患した人が回復した後に、さまざまな症状が長引いたり、新たな症状が出現することを意味します。英語では、Long COVIDと呼ばれることもあります。感染の症状が現れてから三ヶ月経過しても、別の診断では説明できない症状と定義されています。
出典: Post COVID-19 condition – WHO
新型コロナウイルス感染症の療養が終わってからも、何らかの症状が残存して体調が回復しないので、一般の人には、後遺症として認知されています。
原因について
罹患後症状が出現する明確なメカニズムは分かっていません。しかし、新型コロナウイルス感染症に伴う全身の炎症、肺、心臓、腎臓、脳の炎症および自己免疫反応による影響によって、種々の症状が発症すると推測されています。
出典:Long COVID or Post-COVID Conditions – CDC
代表的な罹患後の症状
新型コロナウイルス感染症の症状が出現してから、4週間経過しても症状が続いたり、他の症状が現れるものは次の通りです。
種類 | 特徴 |
---|---|
呼吸器 | 咳、息苦しさ |
心臓 | 動悸、胸痛 |
脳 | 頭痛、集中力の低下、ブレインフォグ |
精神 | うつ・不安、睡眠障害 |
筋・関節 | 筋力の低下、関節痛 |
その他 | 疲労感、脱毛、筋力低下、味覚・嗅覚障害 |
出典:Nalbandian et al. Post-acute COVID-19 syndrome. Nat Med. 2021;27:601-615.
新型コロナウイルス感染症に罹患して病院で治療を受けて4ヶ月が経過してから、どんな症状で困っているか調査した研究論文では、約50%の人が罹患後症状を有していました。具体的な症状として、疲労感(31%)、認知機能の問題(21%)、息苦しさ(16%)でした。一方、質問紙を用いた評価では、不眠の問題を有している割合が、53.6%でした。
新型コロナウイルス感染症に罹患してから、呼吸器だけではなく中枢神経系への働きにも影響を及ぼしていることが考えられます。さらに、睡眠の問題が現れることが多い印象です。
COVID-19の罹患後に発症する睡眠障害の割合
新型コロナ感染症に診断された6か月後の時点で、約10%の人において睡眠障害が認められたことが、報告されています。
出典:新型コロナウイルス感染症診療の手引き:罹患後症状のマネジメント – 厚生労働省
罹患後症状が数ヶ月以降も長引く場合もあることが、厚生労働省による報告によって明らかになっています。新型コロナ感染症から回復して1年経過した時点で、睡眠障害を訴える人の割合は7%でした。
出典:第86回新型コロナウイルス感染症対策アドバイザリーボード – 厚生労働省
COVID-19の罹患者が療養を終えた後、睡眠の悩みを抱えるようになる可能性があることを示唆しています。
罹患後に起きる睡眠障害の特徴
新型コロナ感染にかかった人は、急性期の病状から回復しても。睡眠と覚醒リズムの異常、眠気、そして、うつおよび不安に関連した不眠の症状が起きやすいです。
新型コロナ感染のため長期に療養していたことがストレスになり、以前ほど眠れなくなったという人もいます。退院した後に、不眠症はよくみられる睡眠障害の一つと言えます。
出典:Kryger M et al. COVID-19 and Sleep. In: Kryger M, Roth T, Goldstein CA, editors. Principles and Practice of Sleep Medicine. 7th. Philadelphia, PA: Elsevier; 2022.
新型コロナウイルス感染症に罹患した中高年の人の睡眠の状態について追跡調査した研究論文があります。その結果によれば、非罹患者と比較すると、新型コロナ罹患者では、睡眠の質が低下したという割合が増えていました。
新型コロナに罹患して体調が回復しても、睡眠がうまくとれいない場合は、後遺症の可能性があるかもしれません。不眠が気になるときは、最寄の睡眠外来に相談してみましょう。
新型コロナウイルス感染症の罹患後に、睡眠時無呼吸の病状が悪化することがあります。
新型コロナ感染症による肺炎から急性呼吸窮迫症候群に移行した人が回復した人について調査された研究論文によれば、退院後の4~6週後に中等症から重症の閉塞型睡眠時無呼吸が多くみられました。
新型コロナウイルス感染症は、肺だけではなく上気道にも炎症がおよび睡眠呼吸障害の発症に影響している可能性があります。眠っているときに、大きないびきをかいたり、呼吸が止まる症状があるなら、終夜睡眠ポリグラフ検査による評価を考えましょう。
睡眠障害の中で、過眠が現れるようになった人もいます。新型コロナウイルスの罹患後症状として発症する過眠症の可能性があります。ナルコレプシー、内科疾患による過眠症を呈する症状があれば、反復睡眠潜時検査による精査を検討しましょう。
治療について
根本的な解決方法が見つかっていません。そのため、罹患後の症状への対処法は、症状を抑える治療が中心です。
睡眠障害の症状として出現した不眠と過眠の症状については、保険診療の範囲内での投薬による治療を行います。
新型コロナの後遺症かもしれないので、診てもらえますか?
当院では、睡眠障害の症状に限り、相談を受けています。新型コロナの診断を受けた人(16歳以上)で、解熱後4週以上経過しており、来院時に発熱していない場合が対象です。
健康保険を使うことはできますか?
保険診療になるので、治療費について、3割の自己負担が発生します。
予約は必要ですか?
診察には1時間程度かかるので、予約をお願いします。