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自律神経障害が睡眠に及ぼす影響
自律神経とは
臓器のはたらき、血管の収縮と拡張、心拍数、血圧、呼吸、睡眠の状態など、私たちの生命維持に必要な機能を調節する神経系のことです。交感神経と副交感神経の二つがあり、視床下部が指令を出して、両者のバランスを保っています。
交感神経 | 副交感神経 | |
---|---|---|
特徴 | 日中の活動のとき優位になる。緊張、興奮、ストレスを受けているときに高まる。 | 夜間帯に優位になる。身体をリラックスさせる作用があり、休息、睡眠のときに高まる。 |
脳 | 興奮する | リラックスする |
気管支 | 拡張する | 収縮する |
心臓 | 脈拍と血圧の上昇 | 脈拍と血圧の低下 |
血管 | 収縮する | 弛緩する |
胃腸 | 蠕動の亢進、消化液の分泌の減少 | 蠕動の低下、消化液の分泌の増加 |
筋肉 | 緊張する | 弛緩する |
ストレスに対する心身の反応として、闘争と逃走しなければならない状況のときと同様に、交感神経系が亢進することが知られています。身体面の反応として、睡眠障害を引き起こします。
出典:文部科学省
自律神経のバランスが崩れると、どうなりますか?
体の臓器、生理の機能が不安定になるので、めまい、疲労、肩こり、冷え、不眠などの問題が生じます。自律神経失調症と呼ばれています。
出典:eヘルスネット
睡眠中の自律神経の活動について
夜間帯になると副交感神経の働きが優位になり、体をリラックスさせて休息の状態に導きます。同時に、身体の回復させます。一方、交感神経の働きは抑えられます。起床すると、交感神経が活発になります。
レム睡眠のときは、自律神経の活動はどうなっていますか?
交感神経の活動が、覚醒しているときに近い状況になります。脈拍、呼吸、血圧などが不規則に変化するので、「自律神経系の嵐」と呼ばれています。
出典:白川 修一郎: S2-2.自律神経と睡眠(第43回日本女性心身医学会学術集会). 女性心身医学 2014;19,65-66
どんな睡眠障害が問題になる?
自律神経の働きが不安定になることで、さまざまな睡眠の病気が発症します。代表的なものは、不眠症です。さらに、体内時計が乱れるため、睡眠覚醒リズム障害が発症することがあります。
強いストレス(不安、恐怖の体験)、過重労働と残業などがきっかけとなって、自律神経が乱れると、夜間になっても交感神経の活動が高い状態になります。その結果、就寝時刻になっても、心と体の緊張状態が続きます。そして、眠れない問題、寝不足が出現します。
眠いのに寝れないという悩みを抱えている人もいるようです。
生理の前になると、睡眠障害が起きやすい理由として、自律神経は関係していますか?
月経前症候群と呼ばれる病気が考えられます。生理に伴って体内時計の変化として、ホルモンのバランス、体温の日内変動が変わります。自律神経の調節にも影響し、睡眠の問題が現れます。
症状について
自律神経のバランスが不安定になると、寝つきが悪い、途中で目が覚める、眠りが浅い症状が出現します。睡眠の質が低下するので、熟睡感を得られません。そのため、日中の眠気、疲労感を引き起こします。睡眠不足になると言えます。
眠れない状況が続くと、精神面にも影響を及ぼし、うつ症状を引き起こします。
治療法について
自律神経が不調になる原因、ストレスなどの誘因があれば、その対処を行うことが大切です。眠りの問題に対しては、薬物治療を考えます。具体的には、睡眠導入剤の服用によって、入眠困難と中途覚醒の症状を解消します。
うつ状態、不安、焦燥感などの精神症状を合併しているときは、抗不安薬、抗うつ薬による治療を行います。これらの薬は、こころの状態を改善することで、睡眠の質を向上させる効果があります。具体的な抗不安薬の種類として、ソラナックス、ワイパックス、セルシンがあります。
その他の手段として、睡眠と精神の症状を緩和する作用のある漢方薬を併用することがあります。
予防法について
交感神経と副交感神経の切り替えが安定するような行動を心掛けましょう。夕方から夜にかけて、交感神経が高い状態を避けるような工夫をすることが重要です。一方、眠りやすい体の状態にするために、副交感神経を優位にするような取り組みをしてください。
具体的には、寝る前の光刺激を避けることを勧めます。スマホ、テレビ、照度の高い室内照明は、交感神経が活性化しするので避けて下さい。
反対に、副交感神経を高める目的で、38~40度くらいの温度の風呂に15分程度入ると効果的です。その他、リラックスできる音楽を聴くこと、アロマオイルを試すことも、方法の一つです。
眠れないときは、どうすれば良いですか?
頑張って眠ろうとすると、交感神経が高まり、心が動揺します。そのため、ますます眠れない状況になります。対処法として、ベッドから出て、自律神経を鎮めるために、リラックスできることをして下さい。そして、眠気が出たときに、再びベッドに戻ることを勧めます。