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MWTの方法と検査結果の解釈について
覚醒維持検査とは
暗く静かな眠気を誘う状況において、どのくらい起きていられるかを評価する検査です。覚醒を維持する能力を判定することができます。Maintenance of Wakefulness Testの頭文字をとって、MWTと呼ばれることが多いです。
検査の目的
MWTは、自動車、バス、電車、新幹線、ヘリコプターなどの運転適性を評価したり、眠気に対する治療効果の判定をするために行われます。具体的には、睡眠時無呼吸症候群のCPAP治療後、ナルコレプシー、特発性過眠症などの薬物治療後において、覚醒を維持する能力が分かります。
方法について
検査室を光から遮蔽して、薄暗い照度に設定します。被験者はベッドの上で座椅子に座った状態で目を開けた状態で、覚醒を維持するように指示されます。普段着のままで検査を受けます。
午前9時から開始し、1回あたりのセッションは40分です。もし、眠ってしまったら、90秒後に起こされます。通常、2時間おきに合計4回の検査を行います。MWTの20分法もありますが、殆ど用いられていません。
各セッションにおいて、どのくらいの時間で睡眠に入ったかを脳波で判定して、睡眠潜時を記録します。すべてのセッションが終了したら、睡眠潜時の平均値を計算して、覚醒する能力を判断します。
通常、MWTを施行する前夜に終夜睡眠ポリグラフ検査を実施します。睡眠の段階と覚醒を判定するために、脳波、眼電図(眼球運動の観察)、オトガイ筋筋電図、心電図などのセンサーを装着します。
検査結果の解釈について
4回のセッションの平均睡眠潜時について、MWT40分法での健常者の平均は、30.4±11.2分と報告されています。数値が低いほど、覚醒を維持する能力が低いと判定します。
MWT40分法において、眠気が強く事故を起こす危険が高い状態を示す平均睡眠潜時のカットオフ値は、19分とされています。一方、運転に支障がない安全域のカットオフ値は、34分です。
ただし、職業の内容によっては、より高い覚醒維持能力が要求されるので、40分の平均睡眠潜時を要する場合があります。現実的には、4回の検査で一度も脳波上で睡眠が確認されない状況です。
覚醒維持検査を受けるときの注意事項
MWTを施行するときは、検査前に十分な睡眠時間をとり、睡眠リズムを一定にしておくことが必要です。外来において、あなたの睡眠日誌(2週間分の記録)を見ることで、直近の睡眠の状況について確認します。
MWTの当日に注意すべき事項は次の通りです。
- カフェイン、刺激物の飲食を中止する
- 喫煙の禁止
- 次の検査時間まで眠らないようにする
- 太陽光、強い光を避ける(外出禁止)
- 食事をセッションの1時間前に終える
- 運動をしない
MWTのセッション中は、話をする、歌う、自分の皮膚をつまむなどの行為をしてはいけません。
MWT を受ける前夜の終夜睡眠ポリグラフ検査の実施は必須ではなく、医師の裁量に任されています。この点は、MSLTの前夜との違いと言えます。
メリットについて
職業ドライバー、公共交通機関の運転業務がある人の覚醒維持能力が数値化されることが利点です。さらに、睡眠時無呼吸症候群、過眠症などの日中の眠気が問題となる睡眠障害の治療効果の判定に使うことができます。
睡眠時無呼吸症候群のCPAP治療を行っている人の運転適性を客観的に証明する根拠となります。様々な仕事をしているときに、覚醒が維持されて安全な状態であることを数値で示すことができます。
人事担当者、衛生管理者、産業医が、労働者の居眠り事故をなくすために、MWTのデータを活用することができます。
デメリットについて
国内でMWTが施行可能な病院が少ないことがあります。
日常生活において、睡眠衛生の不良(寝不足、不規則な睡眠リズムなど)がある場合での覚醒維持の能力がどう変化するか不明です。
新幹線の運転士、パイロット、長距離トラックドライバーなど、仕事の内容によっては、40分以上の覚醒維持を要する場合があります。そのため、それらの職務に従事している人について、MWTのみで運転中や作業中に眠気を生じないという根拠にならないことが課題です。
MWTとMSLTの違い
MWT | MSLT | |
---|---|---|
評価項目 | 眠くなりやすい環境で、どのくらい起きていられるかを調べる | 日中どのくらい眠いのか、入眠時にレム睡眠が出現するかを調べる |
検査で分かること | 覚醒維持の能力、運転適性 | ナルコレプシー、特発過眠症の診断 |
セッションの回数 | 4回 | 4~5回 |
各セッションの時間 | 40分 | 20分(最大35分) |
出典:Arand et al. The clinical use of the MSLT and MWT. Sleep. 2005;28:123-44.
保険適用について
過眠症状を伴う睡眠障害の重症度または治療効果の判定を目的として、健康保険を使って覚醒維持検査を受けることができます。令和6年6月から、MWTは保険適用になりました。
出典:令和6年度診療報酬改定の概要【医療技術】 令和6年3月5日版
費用について
検査自体の保険点数が5000点なので、検査費用は50,000円です。したがって、3割負担の場合の金額は、15,000円です。実際には、脳波検査判断料(180点)、再診料(医師の診察)などが加算されるので、窓口負担は15,700円程度になる見込みです。
MWTを受けたいときは、検査前に診察と注意事項の説明があるので、ご予約をお願いします。検査を受ける前に、睡眠習慣を適切に整える必要があります。