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睡眠時遺尿症の症状と対処法
夜尿症とは
5歳以上で、少なくとも週2回以上の頻度で、眠っているときに尿失禁が出現し、3か月以上続くと夜尿症と言います。医学的には睡眠時随伴症の一種であり、別名は、睡眠時遺尿症です。
乳幼児の頃から夜尿症が継続している場合を一次性夜尿症と言います。一方、少なくとも6ヶ月以上において夜尿症がない期間があって夜尿が出現した場合を、二次性夜尿症と呼んでいます。
原因について
赤ちゃんの頃から5歳以上になっても夜尿が続く一次性夜尿症の場合では、精神ストレスの要因が関与することは少なく、家族歴、遺伝が関わっていることがあります。男児に多くみられます。
二次性夜尿症では、両親の離婚、虐待、育児放棄などが原因で起きることがあります。便秘や遺糞症の併発もあります。
夜尿を引き起こす病気として、糖尿病、尿路感染症、てんかん、心不全、閉塞型睡眠時無呼吸、認知症、脳腫瘍などがあります。高齢者になると、持病や薬による影響が多くなってきます。
ところで、夜尿が起きるメカニズムは複雑ですが、次の三つのパターンがあります。
- 夜間帯の尿量の産生が多い
- 膀胱の過活動がある
- 尿意による睡眠から覚醒が困難となっている
成人の夜尿症では、膀胱機能が不安定であること、薬剤(利尿剤、睡眠薬)の副作用、体の冷え、夕方から寝る前までに水分の摂取量が多いこと、就寝前のアルコール、カフェインの飲み物の影響があります。
発達障害との関係について、ADHDの子どもでは夜尿症の合併が多いことが報告されています。
症状について
無意識の状態で排尿をします。そのため、パジャマ、布団に尿が浸み込んで、いやな臭いが生じます。朝方になって、シーツが濡れていることに気づいてショックを受けることもあります。小学生、中学生の場合、修学旅行や林間学校でおねしょをすると周りの目が気になり、トラウマになります。
子どもにおける夜尿症の有病率は、次の通りです。
年齢 | 一次性夜尿症の割合 |
---|---|
6歳 | 10% |
7歳 | 7% |
10歳 | 5% |
12歳 | 3% |
18歳 | 1~2% |
出典:Bedwetting – Sleep Education by AASM
子どもの場合、自然に治りますか?
小児の夜尿症の経過として、毎年15%ずつの割合で自然に治ることが知られていますが、一部は成人になっても続きます。
出典:日本泌尿器科学会
夜尿とおねしょの違いは何ですか?
夜尿は、睡眠中に無意識に排尿して衣服、寝具を濡らすことです。一方、おねしょは幼児期におもらしをする現象です。
大人の場合でも症状がひどいときは、毎晩、おねしょをする人もいます。そのため、紙おむつをはく習慣になります。結婚、同棲などのパートナーとの共同生活があるときは、夜尿があると大きな障害になります。中には、うつ病の症状が併発することもあります。
睡眠との関係について
尿意を催したり、排尿したりすると目が覚める症状が出現します。その結果、中途覚醒を主体とした不眠症が発症します。何度もトイレに行くので、睡眠時間が十分にとれなくなります。その結果、睡眠不足になります。
睡眠障害の中で睡眠時無呼吸症候群があると、夜間の低酸素血症が生じて心臓に負担がかかります。そして、心臓から利尿ホルモンが分泌されて尿量が増えるので、夜尿症を引き起こします。
出典:徳島県医師会
子どもの睡眠時無呼吸でも、おねしょが止まらない原因になっていることがあります。その他、夢遊病にも夜尿症が合併することがあります。
もし、眠っているときに、大きないびき、無呼吸があり、夜尿が問題となっているときは、睡眠外来の診察を受けるべきです。特に肥満体型があるときは、パートナーに眠っているときの様子を聞いてみてください。
診断の方法
夜尿症の診断は、臨床症状、尿検査などによって行われます。腎臓、膀胱、尿路に異常がないか調べる目的として、血液検査、腹部超音波検査を施行する場合もあります。検尿によって尿量や尿比重が分かります。
排尿の記録用紙を記載して、頻度や量についても評価します。最近では、睡眠アプリを利用することができるので、普段のおねしょの状況、治療の経過を記録するのに役立ちます。
通常、夜尿症の診断を受けるためには、泌尿器科、小児科、腎臓内科に相談することを勧めます。
治療法について
最初は、生活習慣の見直しを行います。寝る前の水分制限を徹底すること、カフェイン摂取を中止することが重要です。そして、就寝前は必ずトイレにいき排尿を済ましておいてください。
子どもの場合は、おねしょアラームをパンツに装着して夜間帯に排尿があったときに起こす習慣をつけるように指導します。
治療効果が乏しいときは、抗コリン薬、抗利尿ホルモン剤であるデスモプレシン、三環系抗うつ薬のトフラニールまたはアナフラニールなどを用います。
出典:大友 義之他, 単一症候性夜尿症(monosymptomatic nocturnal enuresis)の薬物治療, 日本小児腎臓病学会雑誌 2016;29,122-129
成人になってから発症する二次性夜尿症では、原因によって対処法が異なるので、泌尿器科で精密検査を受けることを勧めます。
睡眠に異常がある場合は、睡眠外来で治療を行います。