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季節性感情障害による睡眠の問題
冬季うつとは
秋から冬にかけて、気分の落ち込みが見られる病気です。季節の変化によって、精神症状が発症するので、季節性感情障害と呼ばれています。抑うつ気分のほか、過眠と食欲の亢進を合わせもつ特徴を有しています。
原因について
冬期では、日照量が不足することが多くなり、目から取り込まれる光量が不足します。その結果、脳内において、セロトニンと呼ばれる神経伝達物質の合成が低下します。
セロトニンは、私たちの気持ちを落ち着かせる作用があります。しかし、光を浴びる量が不足するので、セロトニン機能の低下によって、うつの症状を発症するメカニズムと考えられています。
出典:季節性感情障害 – Royal College of Psychiatrists
緯度の高い地方では、冬期には日光に含まれる紫外線が少なくなるので、ビタミンDの産生が減少します。その結果、セロトニンの生成に影響して気分の問題が生じます。
出典:Seasonal Depression – Cleveland Clinic
日照量は、地理的な要因、気象の条件によっても変わります。
北欧の場合、冬季において夜の時間が長くなります。冬季うつが北国に多く発症しやすいのは、冬の日照時間が短くなることが関与しています。
降雪量が多い土地では、日照量が減少します。北陸、北海道などの雪国と呼ばれる地域では、降雪のため太陽光を浴びる機会が少なくなることも、冬季うつが起きる理由の一つとなっています。
ところで、降雪量の多い地域では、外出すると寒いので屋内に閉じこもりがちになる傾向になります。そのため、運動不足になることも、うつ症状を増悪させている要因になっている可能性もあります。
昨今では、テレワークが普及したので、自宅にいる時間が長くなり、外出の機会が減っています。行動様式の変化によって、光暴露が減っていることも影響しているかもしれません。
症状について
冬になると気分が落ち込んで、たくさん寝ても眠く、朝起きるのが辛いことが出現します。そして、食事の志向として、甘いものを食べたくなることが特徴です。
精神症状のほか、自律神経のバランスにも影響として、だるい、吐き気、息苦しい感じがする、動悸などの身体症状が生じることもあります。
炭水化物の摂取を好む傾向になることから、太る人もいます。女性に多く発症することが多く、体重増加で困ることがあります。
病気が発症しやすい時期はいつですか?
10月から11月に、こころの不調が感じることが多く、冬期まで続きます。通常、春になると症状が軽減していきます。毎年、症状を繰り返すことがあります。
どのくらいの割合で発症しますか?
一般人口の0.5~3%と概算されています。うつ病あるい双極性障害があると、10~25%の割合になります。
出典:Seasonal affective disorder – MedlinePlus
チェックリスト
- 気分が落ち込む
- 興味がわかない
- 無気力となる
- 集中力が低下して、家事と仕事ができない
- 人つきあいが悪くなる
- 睡眠時間が長くなり、眠気が生じる
- 食欲が増し、甘いものを食べたくなる
冬において、抑うつ症状があり、過眠と食行動の変化があると、冬季うつの可能性が高くなります。
冬季うつと夏季うつの違い
季節性感情障害には、冬と夏に発症する二つのタイプが存在します。うつ症状は両者に共通しています。
冬季うつ | 夏季うつ | |
---|---|---|
時期 | 10~3月 | 5~9月 |
特徴 | 冬期において、日照量低下によって発症する | 夏期の暑さ、日光の浴びすぎによって発症する |
食欲 | 亢進する | 低下する |
体重 | 増加することが多い | 減少することが多い |
睡眠 | 眠気、寝すぎ、起床困難 | 眠れない |
精神 | 疲労感、気力の低下 | 焦燥感、不安 |
出典:Mayo Clinic
一年の中で、特定の季節において、思いあたるストレスがないのに、うつ症状が出現したり、食欲の変化が出るときに考えるべき病気です。
どんな睡眠が問題になるか
普段より睡眠時間が長くなる傾向になり、過眠が生じます。周りからは、寝すぎと言われることもあります。メラトニン分泌の調節が安定せず、過剰にメラトニンが産生されるためです。
体内時計による睡眠と覚醒リズムの調節が不安定になるので、朝起きられないという症状も問題になります。
冬季うつの人は、悪夢を見ることが多いことが報告されています。
出典:How seasonal affective disorder disrupts sleep – Sleep Education by AASM
診断の方法
自覚症状と臨床経過、および季節性に起きているうつ症状、食欲の亢進、過眠があることを総合して、冬季うつ病を診断することができます。
対策について
10000ルクス程度の太陽光と同じくらいの強さの人工の光を、毎朝15~30分くらい浴びることで、症状を解消させます。高照度光療法と呼ばれています。
この治療法は健康保険の適応外ですが、ライトを発生させる装置を市販で入手することができます。一部の医療施設では、レンタルをしているようです。睡眠外来に相談してみましょう。
セロトニンの働きを高める目的として、SSRIと呼ばれる抗うつ薬を使うこともあります。セルトラリンが使われることが多いです。
その他、認知行動療法を行うこともあります。
予防法について
冬期は、なるべく日光に当たることを心掛けて、セロトニンが不足しないようにしましょう。屋外で活動する機会を設けてください。冬の寒さのため出不精になりがちですが、運動する習慣を持つことは大切です。いつも決まった就寝と起床時刻を守るなど、生活リズムを整えることもお忘れなく。
食事については、セロトニンの分泌を保つために、必須アミノ酸であるトリプトファンを含む食品を摂取することが大切です。具体的には、チーズ、ヨーグルトなどの乳製品、バナナ、ナッツ類などが該当します。
出典:健康通信(令和2年12月1日:第72号) – 北海道登別市