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肥満は大きなイビキの原因になります
肥満はイビキを引き起こします
中高年の男性で、20代の頃より、体重が増えていませんか。結婚を契機に、食事内容が変わり、メタボ体型になった方もいます。いびきは、空気の通り道である気道が狭くなることで、息を吸ったり、吐いたりするときに、音が生じるものです。
メタボ体型というと、ウエストが大きくなる、お腹が出てきたなどの状態を思い浮かべる方が多いですが、実は、内臓脂肪だけではなく、首の周りにも脂肪が増えています。気道の周囲になる脂肪組織が増えると、空気の通り道が狭くなります。その結果、いびき呼吸が発生します。
さらに、舌にも脂肪が付着するので、舌が大きくなります。その結果、舌根部が喉の奥を塞ぎやすくなります。
どのくらいの体重で肥満と呼ぶのか
肥満の目安となる指標として、BMI(体格指数)を用います。BMIは、体重(kg)÷ 身長(m)÷ 身長(m)で求めることができます。数字が高いほど、肥満の程度が重いことを意味しますが、BMI:25以上の場合が肥満です。
・BMI:35以上を「高度肥満」と呼びます。
肥満度の分類は次の通りです。
BMI(kg/m2) | 判定 |
---|---|
<18.5未満 | 低体重 |
18.5以上 25未満 | 普通体重 |
25以上 30未満 | 肥満1度 |
30以上 35未満 | 肥満2度 |
35以上 40未満 | 肥満3度 |
40以上 | 肥満4度 |
国内の調査報告における肥満の割合
平成29年11月に実施された、厚生労働省の「国民健康・栄養調査」によると、男性30.7%、女性21.7%が、肥満者の基準を満たしています。年代別では、男性では、40代が多く、35.3%、一方、女性では、加齢に伴う傾向がありますが、50代では22.2%となっています。
女性の場合、出産、閉経などが、体重増加、肥満の頻度に関係しているかもしれません。一般的には、閉経後に、いびき、睡眠時無呼吸の症状が出現しやすい状況になります。
肥満は様々な病気を引き起こします
体重が増えることで、内臓脂肪が蓄積する、あるいは健康の問題が生じます。肥満に加えて、次のような病気、病態が生じ、減量が必要となるケースを、肥満症と呼びます。
- 血糖、脂質、尿酸が高い
- 脂質、尿酸が高い
- 血圧が上昇する
- 狭心症、心筋梗塞、脳梗塞
- 肝臓の病気(脂肪肝)
- 月経異常
- 睡眠時無呼吸症候群
- 変形性関節症(膝、股関節)
- 腎臓機能異常
・肥満体型でイビキがあれば病院に相談を
上記の中で、睡眠時無呼吸症候群があります。主な症状として、眠っているときのイビキ、無呼吸発作、日中の眠気があります。眠っているときに、呼吸が苦しいと感じる人もいます。
肥満とメタボリックシンドロームの関係とは?
肥満者の中で、内臓脂肪が蓄積している状態があり、血圧が高い、血糖が高い、血中脂質の異常があると、心臓の病気、脳卒中を発症する危険が高くなります。
内臓脂肪の程度は、腹部CT検査で計測すると正確に評価できます。しかし、簡便に評価するために、外来では、腹囲(ウエスト周囲径)を測定することで代用します。
単に体重が増加した状況ではなく、内臓脂肪型肥満に加えて、複数の高血圧、高血糖、脂質代謝異常が組み合わさった病態を、メタボリックシンドロームと呼んでいます。
ところで、睡眠時無呼吸の場合、重症度が上がると、メタボリックシンドロームの合併率が高くなることが分かっています。1時間当たりの無呼吸と低呼吸の回数(Apnea-hypopnea index: AHI)が30以上である重症の睡眠時無呼吸では、約60%にメタボリックシンドロームの合併があります。
いびき、無呼吸の症状があるときには、メタボ合併があるかを調べることが大切です。その上で、睡眠時無呼吸だけではなく、生活習慣病への介入も必要です。
肥満者に多い睡眠時無呼吸症候群
・太るといびきをかきやすい
体重が増加すると、イビキ症状が出現しやすくなります。上気道が狭くなるために、いびき、無呼吸が生じますが、肥満者において、睡眠時無呼吸の頻度が高くなります。
海外の調査では、BMI: 25kg/m2から28kg/m2の肥満度を持った成人の25%に、軽症の睡眠時無呼吸症があると概算されています。4人に1人とも言えるので、体重が増えて肥満1度になると、いびきをかく頻度が高くなることを示しています。
・高度肥満ではいびきの頻度が高い
肥満を治療する目的のため減量手術を受ける方において、77.2%が睡眠時無呼吸を合併するという報告があります。一般的には、病的肥満(BMI:35kg/m2以上)に対して減量手術が行われることが多いです。
肥満3度(BMI:35kg/m2以上 40未満)となると、いびき、無呼吸の症状が起こりやすいを示唆しています。そのため、健康診断で肥満と判定された方は、睡眠の状況について確認することが大切です。
・首の太さがいびきのサインになります
首周りサイズと睡眠時無呼吸の関係として、男性では、カラーサイズが43cm、女性では、41cm以上になると、睡眠時無呼吸症候群の危険が高くなります。
出典:National Institutes of Health. Obstructive sleep apnea.
肥満があると首周りの脂肪組織が増えるので、上気道が狭窄しやすい理由になっています。結果として、いびき呼吸が出現します。「二重あご」になっている方は注意しましょう。旦那のいびきで困っているときは、結婚した頃と比較してメタボ体型になっていないか確かめることがポイントです。
治療法について
肥満者の場合、いびきを根本的に改善する方法は、減量です。食事、運動の習慣を見直すことから始めます。
・軽症なら口腔内装置を用います
歯科で作製するもので、下顎を前方に誘導するタイプのマウスピースです。手軽にイビキを防止することができます。
・重度の場合はCPAP治療を行います
いびきの原因として、喉の上部にある口蓋垂や軟口蓋よりは、首周囲の脂肪(舌根レベル)による気道の狭窄が起きています。そのため、耳鼻科手術のみであると、睡眠時無呼吸に対する治療効果が限定的です。減量しながら、CPAP機器を用いることが多いです。
肥満を解消するための減量手術とは
激しいイビキを伴った睡眠時無呼吸症候群では、CPAP治療が有効です。肥満が合併していると、「いつまで、CPAP機器のマスクを夜間の装着しなければならないのか」という疑問を持つ方もいます。
いびきをかいていなかったときの体重を目安に減量することが大切ですが、重度の肥満では、短期間で目標体重まで減量することが困難です。
減量手術は、肥満症による健康障害(血圧、糖代謝異常、関節疾患など)の防止、または軽減するために、胃を小さくする外科的治療です。
重度の肥満がある睡眠時無呼吸症候群の場合、術後に体重が減り、結果として、いびき呼吸の改善がみられることがあります。
体重コントロールがイビキの予防に
いびきの程度が軽い段階であれば、減量を進めることが大切です。また、横向きに眠ることで、舌根の沈下を防ぐことができます。
横向きに寝ることに慣れていない場合は、市販の抱き枕を活用する方法があります。簡便に側臥位を保つ方法としては、タオル、毛布などを丸くして背中に当てることがあります。