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視覚障害者に多い睡眠障害の特徴
非24時間睡眠覚醒症候群とは
毎日、30分から1時間程度、就寝と起床時間が後退していく特徴を有する睡眠障害です。体内時計が24時間よりも長い周期で自由に継続しているために発症します。概日リズム睡眠覚醒障害の非24時間型と呼ばれています。
どのくらいの割合でみられる病気ですか?
視覚障害者の50%において、発症することが報告されています。
原因について
私たちの睡眠と覚醒のリズムを調節している部位が脳内の視床下部にあり、調節する仕組みは体内時計と呼ばれています。通常、ヒトの体内時計は24時間よりも長い周期になっています。
自分の睡眠と覚醒のリズムを地球の24時間の明暗周期に同調させるために、主に朝の太陽光によって体内時計のリズムを補正しています。しかし、視覚障害者では、光による体内時計の修正が不十分になるので、睡眠覚醒リズムが徐々に後退していくと考えられています。
全盲の人に多く発症することが多いですが、健常者の場合は、太陽光が届きにくい居住環境で長期に過ごしているときに見られます。不登校、引きこもり生活が続いており、外出による光暴露がないと体内時計の同調機能が働かなくなります。
非24時間睡眠覚醒リズム障害が発症しやすい要因はありますか?
こころの病気、頭部外傷、認知症などが報告されています。
出典:Non-24-Hour Sleep-Wake Rhythm – Sleep Education
症状について
不眠と日中の過度の眠気が生じます。人によっては、両方の症状で悩んでいることもあります。しかし、無症状である期間も存在します。
一般的には、睡眠と覚醒のリズムが徐々に遅れていくので、寝つきが悪くなり、起床困難が生じます。そして、活動時間帯に眠気が生じます。睡眠相後退症候群と類似した症状になります。
入眠困難に対して、アルコール、睡眠薬に頼ったり、活動時間帯に生じる眠気を紛らわせようとしてカフェイン摂取をする傾向がみられます。
体内時計のリズムが昼夜逆転の期間に入ったときは、昼間の眠気に耐えられず、仕事ができません。何度も昼寝をしてしまうことが多いです。
非24時間睡眠覚醒症候群は、日常生活にどんな影響を及ぼしますか。
定期的に昼夜逆転の生活パターンになるので、学生では朝起きられない症状、不登校の問題が生じます。一方、社会人では、遅刻、欠勤を繰り返すことがあるので仕事を続けられなくなります。
診断の方法
非24時間睡眠覚醒症候群を診断するためには、睡眠日誌あるいはアクチグラフィによって「睡眠と覚醒のリズム」の経時的な変化を捉えます。少なくとも2週以上に渡って、睡眠相が24時間以上の周期で徐々に遅れている様子を確認します。そして、3ヶ月以上、症状が続いているときに、診断を確定します。
何科の医師に相談すれば良いですか?
脳神経内科、精神科です。
終夜睡眠ポリグラフ検査は診断に必要ですか?
原則として必要ありません。ただし、他の睡眠障害の合併が考えられるときに検討します。
チェックリスト
次に示すような条件に該当すると、非24時間睡眠覚醒症候群の疑いがあります。
- 就寝時刻と起床時刻が徐々に遅れていく
- 昼夜逆転になることがある
- 視覚障害がある
- 太陽光を浴びる機会が少ない
- 引きこもり生活が続いている
治療法について
睡眠と覚醒のリズムを一定にさせるため、メラトニンを投与する方法があります。メラトニンには体内時計の同調を促す効果があり、入眠困難が改善します。視覚障害者に対して有効性が確認されています。
国内では、メラトニンの働きを持っているメラトニンアゴニストを処方することが多いです。ロゼレムという名称の治療薬ですが、一般名はラメルテオンです。
米国では、タシメルテオンと呼ばれるメラトニン受容体作動薬が非24時間睡眠覚醒症候群の治療薬として、承認されています。
出典:HETLIOZ (tasimelteon) – FDA
光療法は、視覚異常がない人に対して用いられる代替の治療法です。国内では保険適応がないので、自分で照明器具を購入するか、医療機関から借りて、自宅で睡眠リズムを整えます。