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新型コロナ罹患後症状の長引く眠気
新型コロナウイルス感染症の後遺症で現れる過眠とは
新型コロナウイルス感染症に罹患した後に、感染から回復した後にも関わらず、日中の耐え難い眠気が生じる状態です。
長引く眠気、傾眠の傾向が続くことで、日常生活に支障が出ている場合に過眠症と言います。
子どもが新型コロナウイルスの罹患した後に、睡眠障害は発症することはありますか?
2022年に発表された「思春期の子どもの新型コロナ後遺症」に関するメタアナリシスでは、不眠症、過眠症、睡眠の質の低下などの睡眠障害が報告されています。
原因について
罹患後症状として出現する眠気の原因は分かっていません。
新型コロナウイルス感染症を要因として、中枢神経系にある睡眠と覚醒の機能異常が起きていると考えられます。新型コロナウイルスによる直接的な脳細胞への影響、あるいはウイルス感染によって起きる免疫応答が引き起こす脳への影響などが、関係しているかもしれません。
新型コロナウイルス感染によって、脳のどの部位が影響を受けて眠気を引き起こしていると、考えられていますか?
覚醒系を調節している視床下部あるいは中脳などが、想定されています。
出典:Frange et al. COVID-19 and Central Nervous System Hypersomnias. Curr Sleep Med Rep. 2022;8(3):42-49.
症状について
- 突然襲ってくる耐えられない眠気
- 一日中、ぼーっとして眠い
- 居眠りを繰り返す
- 睡眠不足がないのに、日中眠くなる
- 長時間睡眠があり、目覚めてもすっきりしない
診断の方法
新型コロナウイルス感染症に罹患する前から存在していた睡眠障害があるか調べます。携帯型装置あるいは終夜睡眠ポリグラフ検査によって、睡眠時無呼吸症候群の有無について評価を行います。
閉塞型睡眠時無呼吸、周期性四肢運動障害、てんかん発作、睡眠不足、精神疾患、薬剤の影響を除外します。その上で、異常な眠気の原因が何であるか、説明することができないとき、反復睡眠潜時検査を予定します。
精密検査によって、客観的な眠気の程度、そして、入眠時にレム睡眠が出現するかについて評価することができます。
新型コロナ後遺症で睡眠障害が疑われたときに、どのような検査で評価していますか?
症状によって異なりますが、終夜睡眠ポリグラフ検査、反復睡眠潜時検査などを行います。
考えられる過眠症の種類とは
新型コロナウイルス感染後の後遺症として、二次的に発症したナルコレプシーあるいは過眠症を想定して、解説します。
1.ナルコレプシー1型
新型コロナウイルス感染症の罹患後に、ナルコレプシー1型(カタプレキシーあり)の診断基準を満たすような症状が現れます。Narcolepsy type 1 due to a medical condition と呼ばれています。
一方、カタプレキシーを併発しないナルコレプシー1型であり、脳脊髄液中のオレキシン濃度が低下している場合があります。Narcolepsy type 1 without cataplexy low CDF Hcrt-1 levels という診断名になります。
両者とも、ナルコレプシー1型のサブタイプです。
2.ナルコレプシー2型
新型コロナウイルス感染症の罹患してから過眠が生じるようになり、ナルコレプシー2型(カタプレキシーがない)の診断基準に合致する場合です。
他の要因で過眠を説明することができず、新型コロナ後遺症が過眠の理由になったと考えられるものです。閉塞型睡眠時無呼吸を併発しているときは、その治療を行います。その上で、反復睡眠潜時検査による評価が必要です。
Narcolepsy type 2 due to a medical condition という病名であり、ナルコレプシー2型のサブタイプです。
3.内科疾患による過眠症
新型コロナウイルス感染症から回復してから、少なくとも3ヶ月以上持続し、他の病気によって過眠の症状が説明できないものです。そして、過眠の出現が、新型コロナウイルスに罹患した結果として解釈されるときが該当します。
反復睡眠潜時検査の所見として、平均睡眠潜時:8分未満かつ入眠時レム睡眠の出現:2回未満であることが条件です。
内科疾患に伴う過眠症には、いくつかのサブタイプがありますが、新型コロナ後遺症に伴う過眠症は、Hypersomnia secondary to brain tumors, infections, or other central nervous system lesions と考えられるかもしれません。
出典:American Academy of Sleep Medicine. The International Classification of Sleep Disorders. 3rd ed. Darien, IL: American Academy of Sleep Medicine; 2014.
治療について
新型コロナウイルス感染症の罹患後症状の確定診断は難しく、過眠症の症状が現れたときの治療ガイドラインは発表されていません。
睡眠障害の国際分類に準じた診断をもとに、病名を確定します。その上で、保険適用がある薬剤を検討します。
実際には、過眠症の診断名に準じて、保険適用のある中枢神経刺激薬を処方することで、眠気に対処します。