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SASがあると自動車の運転禁止処分になる?
運転免許と睡眠時無呼吸:安全運転のための知識
通勤で自動車を使ったり、買い物や送迎のために運転したり、あなたにとって、運転免許は生活に必須の資格と言えるかもしれません。特にバス、タクシー、トラックなどの職業ドライバーの皆さんにとって、運転免許は生計を立てる上で欠かせません。
ところで、睡眠時無呼吸症候群(SAS)が原因で運転免許が取り消されるかもしれないという不安はありませんか。そのことは、あなたの心に深い影を落としていることでしょう。「日常生活、仕事の面で、自動車がない生活なんて考えられない」という人も多いかもしれませんね。
SASが引き起こす日中の眠気や集中力の低下は、危険な運転につながり、交通事故を引き起こすリスクが高くなります。そのため、重度の眠気がある睡眠時無呼吸症候群の治療を受けていない場合は、運転免許の更新が保留になります。
今回のブログ記事では、睡眠時無呼吸症候群がある運転手が直面する運転免許に関する話題を取り上げます、そして、課題を乗り越えるためのガイドをお伝えします。
睡眠時無呼吸症候群とは?
睡眠時無呼吸症候群は、眠っているときに呼吸が不十分であったり、一時的に停止したり、異常呼吸が繰り返し発生する病気です。主な症状には、夜間の息苦しさやいびき、日中の過剰な眠気や集中力の低下があります。
この病気は、上気道の狭窄や閉塞によって引き起こされ、肥満、年齢の増加、扁桃肥大、アルコール摂取などが原因として知られています。
無呼吸が引き起こす低酸素血症、不安定な睡眠、覚醒回数の増加は、高血圧、心臓病、脳卒中の発症リスクを高める可能性があります。
そればかりではなく、日常生活における仕事効率の低下と生産性にも及ぼします。特に、集中力の低下が引き起こす産業事故が問題になっています。
警察庁が実施した研究によれば、運転免許の所有者において、睡眠時無呼吸症候群の疑いがある人が相当数いること、そして、居眠り運転のリスクが高くなることが報告されています。
自動車、トラック、バスなど、車両の運転に関する側の視点からみると、運転中に突然眠ってしまうことがあるため、自分自身だけでなく他者の生命も危険に晒す可能性があります。
法的要件と運転免許
睡眠時無呼吸症候群がある人が車両の運転免許を取得または更新するときには、特定の法的要件を満たさなければなりません。これらの要件は、運転者の安全性を確保し、公道上での事故リスクを最小限に抑えることを目的としています。
運転免許を申請する際、または更新時には、公安委員会の質問票に回答しなければなりません。なぜなら、病気の影響のため運転適性に問題がある人を調べる必要があるからです。このシステムは、公安委員会が管理しており、車両の運転免許を取得・更新する人の全てに対して義務付けられています。
運転免許に関する質問票の中で、睡眠に関する項目があります。運転者に対して眠気の程度を回答させる項目であり、運転に支障があるかを判断するための根拠の一つになります。
具体的には、「過去5年以内において、十分な睡眠時間を取っているにもかかわらず、日中の活動中に眠り込んでしまった回数が週3回以上あるか」という設問です。
もしも、その設問に該当するような眠気があれば、医療機関による睡眠障害の診察を受けるよう求められることが一般的です。
睡眠時無呼吸症候群の診断を受けている場合は、その治療状況や症状の管理状態を示す診断書の提出が必要になります。
著者が診察をしている睡眠外来の経験では、質問票の回答によってすぐに運転免許の取り消しにはならない印象です。よくあるケースでは、適性検査を受けたり、医師の診断書を提出するように指示があったり、地域にある運転者講習センターの職員の指示に従いましょう。
睡眠時無呼吸症候群の治療を受けている場合、例えばCPAP機器を使用している場合は、その使用状況や治療効果のデータについて診断書に記載しています。そして、治療を行った状況下では、眠気が解消されており、集中力が保たれていることを書いています。
日常生活に支障をきたすような眠気を引き起こす睡眠関連疾患には、どのような病名がありますか?
睡眠時無呼吸症候群、ナルコレプシー、特発性過眠症などです。
自分が日中の眠気と集中力の低下があり、病気があるのに、運転免許申請あるいは更新のときに告知しないとどうなりますか?
虚偽の記載があると、1年以下の懲役または30万円以下の罰金に処せられます。公安委員会の判断によりますが、自動車の安全な運転に支障を及ぼす病気があり、適切な治療を受けない状況が続くと、運転免許の取り消し又は停止になります。
重症の睡眠時無呼吸症候群と診断されており、運転に支障が及ぼす程度の眠気がある状態で、運転事故を起こすと、どうなりますか?
人を負傷させると12年以下の懲役に、人を死亡させた場合は15年以下の懲役になります。
出典:自動車の運転により人を死傷させる行為等の処罰に関する法律 – 衆議院
自分が睡眠時無呼吸症候群の治療を受けていて、運転の不安があるとき、あるいは、運転免許証の取得と更新に疑問があるときは、どこに相談すれば良いですか?
地域の警察本部において、運転免許の相談をすることができます。
車両の運転リスクと対策
睡眠時無呼吸症候群は、運転中の安全性に重大なリスクをもたらします。最も怖い症状は、日中の強い眠気です。これは、睡眠の質が低下することで発生し、運転時の集中力および判断力の低下や運転操作に必要な反応速度の遅れが現れます。
出典:Driving When You Have Sleep Apnea – Federal Motor Carrier Safety Administration
最悪の場合、運転中に寝落ちしてしまうこともあり、事故を起こして気づくという事例もあります。これらはすべて、取り返しのつかない人身および対物の交通事故を引き起こす懸念があります。
もし、あなたが眠気がひどくて重症の睡眠時無呼吸症候群と診断されていたら、運転中のリスクを最小限に抑えるためには、次に示すような対策を勧めます。
中等症から重症の睡眠時無呼吸症候群があれば、CPAP治療を検討します。そして、定期的な通院とCPAP治療中の毎月のデータの確認をしましょう。CPAP治療は睡眠の質を改善し、日中の眠気を軽減する効果があります。一般的に、CPAP機器の使用について、毎晩4時間以上、そして、週に70%以上のマスク装着が推奨されています。
一方、CPAP治療が保険適用ではない場合、何らかの事情によってマスク装着ができない場合は、歯科で睡眠時無呼吸症候群に用いるマウスピースを考えましょう。
長時間運転を避け、定期的に休憩を取ることも大切です。運転前には十分な睡眠をとることを基本として、眠気を感じた場合は無理をせず、安全な場所に車を停めて休息を取りましょう。
さらに、健康的な生活習慣を心がけ、体重管理やアルコールの摂取制限をすることも、セルフケアとして望まれます。
治療法と運転免許の維持
睡眠時無呼吸症候群の治療は、運転免許を継続して保持するために、重要な役割を果たします。
先ほど述べたCPAP治療は、無呼吸低呼吸指数(AHI)が20以上の中等症から重症の睡眠時無呼吸症候群に対して、保険適用があります。治療の原理は、睡眠中に一定の空気圧を上気道にかけることで、気道の開存性を保ちます。これにより、呼吸が正常化して、睡眠の質が安定化します。その結果、昼間の眠気が解消され、本来の集中力を取り戻すことができるのです。
それに対して、マウスピース治療が選択された場合はどうなのか。筆者の経験では、マウスピースを装着した状況で、無呼吸低呼吸指数(AHI)が基準値範囲内に入っており、日中の主観的な眠気がなく集中力が保たれていることが必要です。
医師の指導に従い適切な治療を継続することは、公安委員会が「運転適性に問題なし」と判断する上で不可欠です。これにより、運転免許の取得や更新時の必要基準を満たすために、根気よく治療を続けましょう。
CPAP治療、口腔内装置の他にも、耳鼻科の病気が睡眠時無呼吸症候群の原因となっていると考えられるときには、外科的手術が選択肢として考えられます。
すべての人に共通することですが、生活習慣の改善、例えば体重管理やアルコール摂取の制限も、睡眠関連の症状の軽減に役立ちます。
当院の睡眠外来での経験によれば、医師による睡眠時無呼吸症候群の治療管理が適切に行われていれば、運転免許の取得や更新時に必要な健康基準を満たす印象です。
あなたが治療を真面目に続けていること、そして、検査の結果で治療効果が十分であることについて、医師が診断書に書きます。この文書は、公安委員会による「安全な車両の運転を継続できるか」の審査に用いられます。