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眠りの種類:レムとノンレムを比較してみる
はじめに
睡眠は私たちの生活に欠かせない重要な要素です。良い眠りは、疲労を回復させるだけではなく、心身の健康維持、記憶力の向上、情緒の安定性、そして日中のパフォーマンス向上に必要です。しかし、忙しい毎日に追われている現代社会では、多くの人が寝不足や睡眠の質の低下に悩まされています。
ぐっすり眠ることは、免疫系を強化し、心臓病やがんなどの深刻な病気のリスクを減らしてくれます。そして、脳の働きにも良い影響があり、仕事の効率、生産性の向上にも大きく貢献します。
ところで、睡眠には主に「レム睡眠」と「ノンレム睡眠」という2つの種類があります。これらは交互に現れ、一晩の間に数回のサイクルを繰り返します。それぞれ異なる働きを持っていますが、どちらも私たちの健康に不可欠なものです。
この記事では、レム睡眠とノンレム睡眠の特徴を比較して、その働きについて理解を深めます、そして、あなたにとって、より良い睡眠を得るためのヒントになれば嬉しいです。
レム睡眠とは
レム睡眠は、眠っているときに目が急速に動く特徴をもっている睡眠段階です。
この睡眠段階では、脳が非常に活発で、夢を見ることが多いとされています。また、体は筋肉が一時的に麻痺状態になり、動けなくなります。これは、夢の中での行動を実際に行うことを防ぐためであると考えられています。夜の後半、特に明け方に多くみられます。
レム睡眠は夜の睡眠全体の約20~25%を占めており、記憶の定着や感情の処理に重要な役割を果たします。
出典:レム睡眠 – 日本薬学会
ノンレム睡眠とは
ノンレム睡眠では、レム睡眠とは異なり、眼球の急速運動はみられません。眠りの深さによって、N1、N2、N3に分類されています。
睡眠段階N3は深い睡眠と呼ばれており、脳波上ではデルタ波が出現します。別名は徐波睡眠です。夜の前半に多くみられます。
体の修復や成長ホルモンの分泌が行われる重要な睡眠ステージです。この段階では脳波が遅くなり、体温や心拍数も低下します。ノンレム睡眠は夜の睡眠の約75~80%に及んでおり、私たちの身体の修復や免疫システムの強化に欠かせないものです。
睡眠周期について
睡眠サイクルは、私たちが眠っている間に規則的に繰り返される一連の睡眠段階のパターンという意味です。
一般的に、一つの睡眠サイクルは約90~110分続き、一晩に4~6回繰り返されます。そして、就寝から起床まで、次のような流れで進行していきます。
ノンレム睡眠:ステージN1
眠りに落ちる最初の段階で、まどろみの状態です。脳波がアルファ波からシータ波に変化し始め、筋肉がリラックスします。この段階は通常数分間続きます。
ノンレム睡眠:ステージN2
本格的な睡眠状態に入ります。脳波に特徴的な睡眠紡錘波とK複合波が現れ、体温が低下し始めます。一晩の睡眠の約50%をこの段階が占めます。
ノンレム睡眠:ステージN3
デルタ波と呼ばれるゆっくりとした大きな脳波が現れ、最も深い睡眠状態となります。体の回復や成長ホルモンの分泌が活発になります。
レム睡眠:ステージR
脳が活性化し、眼球が素早く動く現象がみられます。夢を見やすい状態で、筋肉は一時的に麻痺します。記憶の固定化や感情の処理が行われます。
レム睡眠とノンレム睡眠は何が違うのか?
レム睡眠 | ノンレム睡眠 | |
---|---|---|
脳波 | 覚醒時に近い活発な状態。速い周波数の波形。 | 睡眠が深くなるにつれてゆっくりとした大きな波(特にデルタ波)。 |
筋肉の状態 | ほぼ完全に弛緩している(眼球と呼吸筋は例外)。 | 筋肉の緊張は減少するが、完全に弛緩していない。寝返りができる。 |
夢見 | 頻度が高く、鮮明で物語性のある夢。感情的要素が強い。 | 頻度は低く、単純で断片的な夢。記憶に残りにくい。 |
割合 | 20~25% | 75~80% |
出現時期 | 各サイクルの最後に出現し、夜の後半に多くみられる。 | 各サイクルの前半に現れ、ステージN3は、夜の前半に多い。 |
眼球運動 | 急速眼球運動がみられる。 | 覚醒からステージN1の移行期に、緩徐眼球運動がみられる。 |
心拍数・呼吸数 | 不規則になる傾向。 | 規則的で徐々に低下。 |
睡眠の深さ | 浅い。 | N1からN3にかけて深くなっていく。 |
覚醒のしやすさ | 比較的覚醒しやすい。 | ステージN3では覚醒しにくい。 |
年齢による変化 | 加齢とともに減少する傾向。 | 加齢とともにステージN3が減少する。 |
睡眠障害との関連 | ナルコレプシー、レム睡眠行動障害、悪夢障害、反復性孤発性睡眠麻痺など。 | 夢遊病、夜驚症、錯乱性覚醒、睡眠関連摂食障害、セクソムニアなど。 |
出典:What Are the Sleep Stages? – National Sleep Foundation
よくある質問と回答について
年齢によって睡眠サイクルは変化しますか?
新生児期はレム睡眠の割合が高く、成長とともにノンレム睡眠の割合が増加します。ただし、高齢になるにつれて深いノンレム睡眠(ステージN3)の割合が減少していきます。同時に、レム睡眠の割合も小さくなります。
体の健康を維持するためには、レム睡眠とノンレム睡眠のどちらが良いですか?
それぞれの睡眠が異なる重要な役割をもっており、バランスの取れた睡眠サイクルが、心身の健康維持と回復に大切です。そのため、どちらの睡眠段階が優れているというわけではなく、両方がバランス良く存在することが重要です。
スマホの睡眠アプリを用いて、レム睡眠とノンレム睡眠の違いを正確に測定できますか?
睡眠アプリのデータには病気の診断に使用されるような脳波の精度はなく、正確な判定はできません。ただし、おおまかな睡眠パターンを知るのに役立ちます。終夜睡眠ポリグラフ検査ほどの正確性はありません。
睡眠の質を向上させるための具体的な方法はありますか?
規則正しい就寝と起床時間を継続すること、寝室環境の整備(暗く、静かで、快適な室温)、就寝前のリラックス習慣(本を読む、音楽を聴く)、日中の適度な運動、夕方以降のカフェインや就寝前のアルコールの制限などが効果的です。
出典:Brain Basics: Understanding Sleep – National Institute of Neurological Disorders and Stroke