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発達障害(ADHD / ASD)による日中の眠気
発達障害に多い眠気の問題
子どもの睡眠障害の症状は、入眠困難、いびき、中途覚醒、起床困難、昼夜逆転、寝言、無意識に歩き回る症状など、さまざまです。
これらは夜間に起きる事象ですが、日中に起きる症状として問題になるものは、強い眠気です。
自閉症スペクトラム障害(ASD)および注意欠陥多動性障害(ADHD)などの発達障害を有している子どもでは、眠気を訴えることが多いです。
出典:神林 崇 他, 過眠性障害:日中の眠気と夜間睡眠の延長 神経治療学 2016;33(5),S101-S101
特に、小学校の高学年から中学生以降、10代になってくると、日中の過度の眠気が、学校生活に大きく影響します。
授業中の居眠りが繰り返して起きると、成績の低下、遅刻、不登校の問題が出てきます。
特にADHDの子どもを持つ養育者は、子どもの睡眠のトラブルに頭を悩ませ、ストレス、うつ、不安の症状で困っています。
出典:Sleep problems are common in children with ADHD – Sleep Education by AASM
成人になっても、症状が持続すると、職場での不適応が問題となります。中には、小児期に適切な診断を受けずに、眠気を呈する睡眠障害を診察する過程で、発達障害が見つかる場合もあります。
眠気の特徴
一般的には、寝不足および睡眠の質が低下することで、眠気を訴えることが多いです。しかし、眠気は、慢性的な疲労、気分と意欲の落ち込み、そして、持続的な注意力の低下などの要因も関係しています。
発達障害の一種であるADHDでは、注意力の低下、多動による疲労、本人の気分や意欲の程度などの複数の原因によって、眠気が生じている可能性があります。さらに、不眠、睡眠リズムの問題も、日中に眠くなる理由として考えられます。
具体的な眠気の訴えを紹介します。
- 興味ない授業では、強い眠気が出る
- 退屈なことをすると、よく寝る
- 関心のあることに夢中になり、眠気を忘れる
睡眠不足による眠気とは異なり、自分が興味を持っているもの、関心があることに取り組んでいるときは、眠くなることが少ない傾向です。
発達障害に伴う眠気の問題は、子どもだけではなく大人になっても起こり得ることが分かっています。
成人のADHDと日中の眠気を調査した医学論文によれば、ADHDを有する患者の約85%において、日中の過度の眠気と睡眠の質の低下がありました。
居眠りが多いので、周りの人から寝すぎと言われることが少なくありません。もしかして、寝ても寝ても眠いという悩みはありませんか?
原因について
なぜ発達障害の人において、眠気が出現しやすいかという理由として、注意力、やる気の低下および覚醒維持の力が低下している可能性が仮説として考えられています。
ADHDの病態として、脳内で覚醒を司るドパミンやノルアドレナリンの働きが低下していることが、主観的な眠気に関係しているかもしれません。
もちろん、睡眠不足、眠りの質の低下、睡眠と覚醒のリズムの問題も、日中の眠気に関与しています。
さらに、居眠り病とも呼ばれているナルコレプシーとADHDにみられる多動性・衝動性と不注意症状には、共通して関与する遺伝子があることが報告されました。そのため、ADHDの特性を有している人が日中の過度の眠気を感じる理由として、遺伝子の影響が関与している可能性が示唆されています。
発達障害の眠気は、複数の要因によって起きていると推測されます。その中でも、臨床症状の特徴から、脳内にある覚醒と意欲に関係する神経伝達物質のバランスの問題、および遺伝子レベルでの体質が関わっていると考えられます。
対処法について
治療を始めるにあたり大切なことは、発達障害に詳しい医師の診断を受けることです。あなたが困っている症状と成育歴から、病型を判断することが重要です。
これから相談しようか迷っている場合は、発達障害者支援センターに相談すると、適切な助言を受けることができます。
医師に診察によって薬物療法の適応があると判断されたときに、不注意症状および過眠に対して治療薬を検討します。
日中の眠気を解消させるために、メチルフェニデート徐放剤(コンサータ)を使います。この薬剤は、脳内のドパミンとノルアドレナリンを増加させて神経系の機能を高める働きがあり、不注意や多動性などを改善します。比較的、コンサータは即効性があります。
コンサータは厳重な流通管理のもと、登録医師のみ処方ができるシステムになっています。
もう一つの治療薬として、アトモキセチン塩酸塩(ストラテラ)があります。この薬剤は、脳内のノルアドレナリンを高めることで、注意力を改善させる作用があります。コンサータと比較すると効果が発現するのに時間がかかり、1~2ヶ月経過すると薬効が出始めます。