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脳卒中と睡眠障害は関係があります
脳梗塞と睡眠の深い関わりとは?
脳梗塞は中高年になると発症リスクが高くなります。実は、睡眠障害との意外な関係があることが知られています。眠りの問題の中で注目したいものは、睡眠時無呼吸症候群です。寝ている間に、無呼吸発作によって低酸素血症、血圧の変動が引き起こされるので、脳梗塞が起きやすくなります。
脳梗塞に対する恐怖と不安を持っている場合は、セルフケアとして睡眠を見直すことも大切です。今回のブログでは、脳梗塞と睡眠障害の関係について、解説します。
脳梗塞とは?
脳梗塞とは、脳の血管が閉塞して、血液の流れが途絶えてしまい、脳にダメージが現れる病気です。
血流によって十分な酸素と栄養が脳内の神経細胞に供給されないので、影響を受けた脳の領域の機能に障害が出現します。その結果、運動麻痺、感覚の異常、言語障害、および意識障害がみられます。
病状の程度にもよりますが、半身不随、寝たきりの後遺症が問題になります。病状が重い場合は、死亡する原因になる「危険な病気」です。
睡眠不足は影響するか?
睡眠不足は脳梗塞のリスクを高めることが明らかになってきました。さらに、自分が気づかないうちに少しずつ睡眠不足が積み重なることで生じる睡眠負債も、脳梗塞のリスクを増加させる要因となっています。
「なぜ寝不足があると、体調不良や慢性的な健康問題を引き起こすのか?」という疑問をもつ人がいるかもしれません。その理由については、体内の炎症反応が起きやすくなること、そして、自律神経のバランスの乱れの関与が考えられます。
これらの要因は、脳血管の動脈硬化、血栓の形成を促進したり、血圧を上昇させたり、脳へのストレスを高めます。
残業が多く寝不足になっている人、深夜や早朝の仕事など、不規則な生活習慣になっている人は、十分に意識して、良い眠りをとるように心掛けることが大切です。一般的に、不眠はさまざまな病気を引き起こす原因になります。その中でも、脳卒中は重篤な病気の一つと言えます。
脳梗塞と睡眠時無呼吸症候群の関係
脳梗塞を予防したい人、リハビリテーションを行っている人が知っておきたい「睡眠呼吸障害の治療管理の重要性」について、解説します。
一般的に、睡眠時無呼吸症候群と言えば、上気道の閉塞が原因となって発症する閉塞型睡眠時無呼吸を指すことが多いです。眠っているときに、大きないびき、呼吸が止まる状態が繰り返されて生じるので、低酸素血症、自律神経の乱れ、高血圧が出現します。その結果、脳梗塞の発症リスクが高くなることが知られています。
脳梗塞を発症した後に起きやすい病気として、中枢型睡眠時無呼吸症候群があります。これは脳が呼吸の調節を適切に行えなくなることで生じるもので、閉塞型睡眠時無呼吸とは発症するメカニズムが異なります。具体的に言うと、中枢性睡眠時無呼吸がある人では、脳梗塞が呼吸中枢に影響して、呼吸のリズムが不安定になっていると理解しましょう。
慢性心不全の患者にみられるチェーンストークス呼吸は、実は脳梗塞後に現れることがあります。
脳梗塞を罹患した人に、睡眠時無呼吸が併発していると、再発の危険や死亡リスクが高くなります。そして、リハビリの遅れにつながることが知られています。つまり、睡眠呼吸障害は、予後を悪化させる要因になります。
診断の方法
眠っているときの様子を、本人あるいはパートナーに聞きます。具体的には、日中の眠気、いびきの大きさや頻度、夜間の呼吸の停止などを確認することが大切です。
夜にトイレで起きる回数、起床時の頭痛、不眠の程度なども、診断の助けになります。
睡眠時無呼吸症候群について、閉塞型と中枢型の鑑別、チェーンストークス呼吸の有無、睡眠の質、低酸素血症の程度を調べるためには、終夜睡眠ポリグラフ検査が有用です。通常、1泊2日の検査入院の形式をとることが多いです。
どんな症状があると、睡眠時無呼吸を発見する手がかりになりますか?
いびき、起床時の頭痛、日中の眠気、高血圧があれば、閉塞型睡眠時無呼吸が疑われます。一方、中枢型睡眠時無呼吸の場合は、不眠を訴えることがあります。ぐっすり眠れない、眠りが浅いという症状があるか確認してみましょう。
自宅で睡眠時無呼吸を評価するために使用される携帯用睡眠時無呼吸検査装置は、終夜睡眠ポリグラフ検査と比較するとセンサーの数が少ないことが特徴です。簡便なテストであるという利点がありますが、睡眠時無呼吸について閉塞型と中枢型の鑑別には向きません。
治療法について
治療の種類 | 具体的な特徴 |
---|---|
生活習慣の見直し | 肥満は睡眠時無呼吸のリスクを高めるため、適切な体重の維持や減量が大切です。また、アルコールの摂取や喫煙も、無呼吸を引き起こす要因になるので、控えることが望ましいです。 |
睡眠環境の整備 | 適切な枕の選択や、仰向けでの睡眠を避けることで、気道の閉塞を減少させることができます。また、快適な睡眠環境(室温、湿度、照度、音の対策)も良い眠りをとるために整えましょう。 |
薬物療法 | 不眠がある場合は、睡眠衛生を徹底した上で、睡眠薬による治療を検討します。特定の薬が原因で睡眠障害が起こる場合があるので、治療薬の変更や調整をすることもあります。 |
CPAP治療 | 中等症から重症の閉塞型睡眠時無呼吸が確認された場合、CPAP機器を用いた治療を行います。鼻マスクから気道に陽圧をかけることで、上気道が拡大し、無呼吸を防ぐことができます。 |
口腔内装置 | 軽症から中等症の睡眠時無呼吸の場合、あるいは、CPAP治療に耐えられない場合に、検討します。下顎を前方に誘導することで、気道を拡げます。歯科でマウスピースが作成されます。 |
夜間在宅酸素療法 | 中枢性の睡眠時無呼吸症候群、チェーン・ストークス呼吸がみられる場合に、夜間に鼻カニューラから低流量の酸素を吸入する方法です。眠っている間の低酸素状態を改善する効果があります。 |
リハビリテーション | 脳梗塞を発症した後の機能回復を目指すリハビリテーションは、睡眠の質を向上させるのに役立ちます。主治医と相談して、負担がかからないように少しずつ運動の習慣を取り入れます。 |
脳梗塞に関係のある睡眠障害として、不眠症、睡眠時無呼吸症候群のほか、後遺症として過眠症が現れることもあります。どんな症状が問題になっているかによって、対処法は異なります。適切な治療管理を受けるために、睡眠専門医に相談しましょう。
脳梗塞を予防するため睡眠のヒント
睡眠障害は、脳卒中を引き起こす要因になるので、自分の睡眠習慣で問題点があれば、修正することが健康管理の上で役立ちます。
さまざまな国の研究機関が共同して行った睡眠研究の結果によれば、次のような因子があると、脳卒中のリスクが高くなることが報告されています。具体的な項目をお伝えします。あなたの症状に該当するものがないか、チェックしてみましょう。
- 5時間未満の睡眠時間
- 9時間以上の睡眠時間
- 睡眠の質の低下
- 入眠困難
- 睡眠維持の困難
- 予定外の昼寝
- 1時間以上の昼寝
- いびき
- 荒い寝息
- 無呼吸発作
上記以外にも、閉塞型睡眠時無呼吸スコアが2~3点、あるいは、睡眠障害の症状が5つ超えると、脳卒中の発症リスクが高くなることが明らかになりました。
睡眠習慣の見直しは脳卒中の再発防止に効果があるので、毎日の眠りを改善することは、とても大切です。
脳卒中を予防するために、自分と家族の眠りについて見直す良い機会になれば幸いです。気になる症状があれば、睡眠外来に相談しましょう。