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発達障害に併発しやすい睡眠の問題
発達障害とは
生まれつき脳機能の発達に障害があることで、小児期から行動面と情緒面に問題が生じることを意味しています。
自閉症、アスペルガー症候群、広汎性発達障害、学習障害、注意欠陥多動性障害が、発達障害に含まれており、コミュニケーションの問題が生じやすいこと、および対人関係を築くことが苦手である傾向があります。
出典:政府広報オンライン
全国の公立小中学校にある通常の学級に在籍している生徒を対象とした調査では、発達障害の可能性がある子どもは、6.5%と報告されています。
出典:文部科学省
ところで、発達障害の中で、自閉症スペクトラム障害(ASD)と注意欠陥多動性障害(ADHD)は併存することが多く、睡眠障害を合併しやすいことが知られています。
出典:厚生労働省
このページでは、発達障害と睡眠の関係を知りたい人のために、睡眠専門医が解説します。
発達障害の人に睡眠の問題が多い原因
詳しいメカニズムは分かっていません。しかし、成長の過程において脳の機能が不十分であるため、睡眠と覚醒を調節する中枢神経系の機能不全の可能性が考えられます。
持続的な注意力の低下、対人関係と学習面でのストレス、気分や意欲の状態などが影響しているかもしれません。結果として、睡眠の長さと質、リズムなどが、不安定になることが推測されています。
もちろん、子どもだけではなく大人でも、眠りの問題は生じます。
睡眠障害の特徴
- 寝つきが悪い
- ベッドに行きたがらない
- 途中で目が覚める
- 不規則な睡眠リズム、昼夜逆転
- 朝起きられない
- 朝に目覚めない
- 起床時の疲労感がある
- 日中の眠気
- いびき
小学校、中学校に通っている子どもでは、不安定な睡眠のため不登校の問題が多くなります。さらに、授業中に居眠り、集中力の低下が出現しやすいです。学校の宿題に取り組もうとしても頭が働かないので、時間がかかってしまい、ミスが多いこともあります。
ADHDの子どもにおける頻度を調査した研究論文によれば、73.3%に睡眠障害の症状がみられました。
ASDを有している子どもでは、60~86%の割合で不眠を主体とした睡眠障害がありました。
発達障害の小児では、少なくとも50%以上において睡眠の問題を抱えていることが言えます。
朝起きれない病気あるいは過眠症の疑いがあるときは、発達障害についても評価を受けることが重要です。
幼児では、ノンレム睡眠からの覚醒障害である錯乱性覚醒、睡眠時遊行症(夢遊病)、夜驚症などがみられることがあります。
自閉症の傾向があると、睡眠関連律動性運動障害の症状が10代になっても続くことがあります。
診断の方法について
適切な診断と診察を行う診療科は、小児科、精神科、心療内科です。現在までの育ちの過程(生育歴)の聴取が主体になります。
一方、大人の場合は、どのような生活を送ってきたか、精神症状の有無、学校、職場での様子、問題となっている症状、睡眠への影響などを聞き取り、診断の参考にします。さらに、認知機能検査を行うことがあります。
診察で得られた情報と検査の結果によって、医師が発達障害の診断を確定します。
どこに相談すれば良いか?
発達障害について相談がしたいときは、地域にある発達障害者支援センターを利用することを勧めます。
睡眠障害を治療するメリット
発達障害に合併している睡眠の問題を治療することで、精神症状の改善、対人関係と注意力の問題が改善したという研究報告があります。
眠りの問題を解消することは、脳機能に対する良い影響を及ぼす可能性があります。
クリニック、病院などで、発達障害の治療を受けた上で、睡眠障害の精密検査が必要であると判断されたときは、睡眠専門医の診察を考えてください。
対処法について
睡眠衛生の徹底が大切です。規則正しい食事をとること、そして、朝に光に十分な光を浴びることが良い眠りにするために有効です。反対に、夜は暗い環境で過ごしましょう。これらの習慣は、体内時計を安定させて、睡眠と覚醒のリズムに良い効果をもたらします。
出典:神山 潤;発達障害児の睡眠関連病態,脳と発達:2005,37,150-156
良い生活習慣を継続した上で、薬物療法を検討します。発達障害に多くみられる入眠困難には、メラトニンを処方することがあります。具体的には、メラトベルと呼ばれる薬が小児期の神経発達症に伴う入眠困難」に対して保険適用があります。睡眠を誘導する作用があります。
漢方薬による治療によって自律神経を整えて、睡眠を助ける方法もあります。睡眠時無呼吸症候群の症状があれば、CPAP治療、口腔内装置、手術などを検討します。