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ナルコレプシーの検査と診断
ナルコレプシーを疑うときに行う検査とは
あなたの過眠の症状がナルコレプシーという病気によるものか医学的に調べるためには、睡眠検査、腰椎穿刺検査、そして、血液検査があります。
終夜睡眠ポリグラフ検査
ナルコレプシーが疑われるときに行う精密検査の一種です。脳波、筋電図、眼電図、オトガイ筋筋電図、心電図、鼻の気流、酸素飽和度、胸郭と下肢の動きなどを計測します。一晩、病院に泊まって調べる入院検査です。
この検査の目的は二つあります。第一番目の目的は、眠気の原因となる可能性がある睡眠時無呼吸症候群、周期性四肢運動障害などの睡眠障害を除外するために検査が行われます。同時に、睡眠時間が不足なく記録されていくことも確認します。
二番目の目的は、ナルコレプシーの人にみられる特徴的な脳波の所見の有無を調べるためです。ナルコレプシー患者では、眠りに入ってから15分以内にレム睡眠が観察されることがあります。入眠時レム睡眠期と呼ばれており、SOREMPと表現されています。
ナルコレプシー患者は寝入りばなに金縛り、鮮明な悪夢を経験することが多いです。これらの現象は、入眠時レム睡眠が原因です。
反復睡眠潜時検査
昼間の眠気の重症度を評価するための精密検査です。脳波検査の一種で、MSLTと呼ばれています。終夜睡眠ポリグラフ検査を施行した翌日の朝から、検査を開始します。
出典:日本睡眠学会
午前9時から2時間ごとに「20分間の昼寝テスト」を5回行います。5回の検査において、寝つくまでの平均時間が8分以内であるときに、客観的な眠気があると判定します。
ナルコレプシーでは、平均睡眠潜時の短縮に加えて、入眠時のレム睡眠が2回以上観察されることが、診断の条件になっています。
この検査によって、特発性過眠症と呼ばれるナルコレプシーに類似した病気を鑑別することができます。
ナルコレプシーを診断するのに費用はどのくらいかかりますか?
病院によって入院基本料が異なりますが、20,000~30,000円程度の料金がかかります。
脳脊髄液中のオレキシン濃度検査
腰椎穿刺を行って脳脊髄液を採取します。そして、脳脊髄液中のオレキシン濃度を測定する方法です。侵襲をともなう検査で、現在のところ保険適応がありません。国内では、大学病院にある睡眠の研究施設などで行われています。
情動脱力発作を伴うナルコレプシー患者の場合、脳脊髄液中のオレキシンAが測定限界以下であることが分かっています。具体的には、オレキシン濃度が110pg/ml以下あるいは正常者の平均値の3分の1以下の濃度であることが条件です。
一方、情動脱力発作がないナルコレプシーでも、この脳脊髄液中のオレキシン濃度の異常低値を検出することで、確定診断が可能になります。
ナルコレプシー患者では、脳内にあるオレキシンを産生する神経細胞が何らからの原因によって機能しないことが分かっています。
出典:e-ヘルスネット
白血球の血液型検査
ナルコレプシー患者では、白血球の血液型であるHLAが特定のタイプを有することが分かっています。HLAは様々な自己免疫疾患および臓器移植の免疫反応などにも関連しています。HLAのサブタイプであるDRB1*1501とDQB1*0602という遺伝子型の組み合わせが、ナルコレプシーに関係しています。
ただし、一般人口でも同様の遺伝子型を持っている人がいるので、ナルコレプシーを診断するときの参考所見になりますが、確定診断には用いられていません。2021年現在では、保険適応はありません。
ナルコレプシー診断テスト
下記にあるチェック項目のうち、あなたの症状に多く当てはまる場合は、ナルコレプシーの可能性があります。
- 日中の耐え難い眠気が三ヶ月以上続く
- 急に眠くなることが多い
- 夜しっかり寝ているのに、昼間の眠気がある
- 短時間の居眠りが多い
- 昼寝をすると一時的に眠気が解消する
- 夜の睡眠は中途覚醒が多い傾向である
- 怒ったり笑ったりするときに脱力感がある
- 金縛りの症状がある
- 寝入りばなに鮮明な夢を見る
- 眠気で意識が朦朧として普段の行為をするが覚えていない
一般的に、ナルコレプシーは思春期に発症することが多く、繰り返す日中の過度の眠気が特徴である病気です。カタプレキシーと呼ばれる情動脱力発作はナルコレプシーに特徴的な症状であるので、診断に有用です。ただし、情動脱力発作がないタイプもあります。
睡眠麻痺と入眠時幻覚は、健康な成人、睡眠不足、不規則な睡眠リズム、睡眠時無呼吸などでもみられるので、これらの病気の影響がないか確かめることが重要です。
ナルコレプシーが診断できる病院とは
昼間の眠気が強くナルコレプシーの可能性があるときは、睡眠専門医に相談しましょう。
具体的には、ナルコレプシーの確定診断を受けるめに必要となる反復睡眠潜時検査が施行できる病院を探してください。そして、治療薬モディオダールを新規に処方することが認められた「確定診断を行う医師」の診察を受けることが重要です。
日本睡眠学会専門医療機関A型であれば、診断が可能です。
10代の中学生、高校生で睡眠不足がなくても眠気が日常生活に支障をきたしているときは、睡眠専門医によるナルコレプシーの診断を受けることを勧めます。