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依存性のリスクが低い睡眠薬の種類と特徴
睡眠薬の依存性について
ベンゾジアゼピン系睡眠薬あるいは非ベンゾジアゼピン系睡眠薬などの睡眠導入剤を長期に飲み続けると、精神的に薬に頼ってしまったり、体が薬に慣れて効果が弱くなったりすることがあります。依存性と呼ばれています。
だんだん効き目が悪くなると、睡眠薬の用量が増えるという耐性の問題、離脱できないかもしれないという心配事も出てきます。長い間、睡眠薬を使って眠ってきた人が急に服薬を中止すると、不眠、不安、焦燥感が出現することが知られています。
睡眠導入剤を飲んでいると癖になることが気になって、不眠症の治療をどうすべきか悩んでいる人のために、依存性のない睡眠薬の特徴について解説します。
依存性がない睡眠薬の作用機序
ベンゾジアゼピン系の薬剤とは異なる作用機序をもったオレキシン受容体拮抗薬およびメラトニン受容体作動薬は、依存性がないと考えられています。
1.オレキシン受容体拮抗薬
私たちの脳内には、覚醒を維持するオレキシンと呼ばれる神経ペプチドがあります。オレキシン受容体を阻害することで、脳を生理的に覚醒状態から睡眠状態に移行させます。
2.メラトニン受容体作動薬
メラトニンと呼ばれる睡眠ホルモンは夜間に分泌量が増えて、寝つきやすくする効果をもっています。メラトニンの作用をもった薬は体内時計を調整して、睡眠と覚醒のリズムを整え、自然な睡眠状態に導きます。
依存性のない睡眠薬の種類
1.スボレキサント
オレキシン受容体拮抗薬に分類される新しい睡眠薬です。夜間の途中に目が覚めたり、朝早い時間に目覚めてしまう症状を改善する効果があります。過剰に働いている覚醒システムを抑制することで、睡眠を促します。
商品名はベルソムラです。ベンゾジアゼピン系の睡眠薬にみられるような依存性がないメリットがあります。
2.レンボレキサント
オレキシンの受容体の中で、覚醒の安定に関与しているオレキシン2受容体を阻害する効果が強いことが特徴です。覚醒システムを抑えることで、入眠困難、中途覚醒、および早朝覚醒の症状を改善する効果があります。
販売名は、デエビゴです。反跳性不眠、離脱症状、身体的依存がないというメリットがあります。
不眠症の薬物治療を始めるときに、依存性の問題を考慮すると、レンボレキサント、スボレキサントの選択を考えてもよいかもしれません。
海外で承認されているオレキシン受容体拮抗薬は何ですか?
ダリドレキサントです。この睡眠薬はEUと米国で承認されています。一方、日本ではネクセラファーマジャパン株式会社がダリドレキサントの医薬品の製造販売について、厚生労働省に承認申請をしました。商品名はクービビックですが、発売日は未定です。
国内で開発中のオレキシン受容体拮抗薬はありませんか?
ボルノレキサントが、大正製薬によって開発されています。
3.ラメルテオン
視床下部にあるメラトニン(睡眠ホルモン)が作用する受容体に作用して、自然な眠りを催します。睡眠と覚醒のリズムの調整を助けて、睡眠を改善させるタイプの薬です。
商品名はロゼレムです。依存症になるリスクが極めて少ない利点があります。しかし、ベンゾジアゼピン系の薬と比較すると即効性はなく、入眠に対する効果は穏やかです。
記憶障害、筋弛緩などの副作用がないので、高齢者の不眠症に対して有用です。
出典:斎藤かおり 他; 睡眠薬の適正使用─診療報酬改定の動向を踏まえて─, 日大医誌;79 (6): 341–344, 2020