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不眠症に対する睡眠制限法の効果
睡眠制限法とは
睡眠制限法は、意図的に睡眠時間を短くして、その時間に眠れたら徐々に睡眠時間を長くしていく方法です。不眠症、高齢者の睡眠障害の改善に役立ちます。睡眠スケジュール法とも呼ばれており、認知行動療法の一種です。
効果について
目が覚めた状態で、寝床に長時間過ごしている状況を改善することで、睡眠効率が高くなるメリットがあります。つまり、眠れないままベッドで過ごしている時間が短くなり、効率的に睡眠が取れる睡眠スケジュールに変えていくことができます。その結果、睡眠の質が向上します。
自分の体が休息するために必要とする分だけ眠ることで、焦りと不安の気持ちを抑え、熟睡感が得られるようになります。
慢性の不眠症に対する治療法として有効であるということが医学論文で報告されています。
睡眠効率とは、何ですか?
あなたが実際に眠っている時間とベッドの上で過ごしている時間の比率です。つまり、睡眠効率の数値は、どのくらい効率的に眠れているかを知るための指標であると解釈してください。
高齢者の不眠に対する考え方
加齢にともなって、実質の睡眠時間が7時間未満となる人も多く、睡眠リズムが前方にシフトしていく傾向があります。そのため、若い頃のように、7~8時間を眠りたいという欲求が現れます。満足に眠れないので、ベッドの上で目が覚めたまま、緊張、焦燥感が生じます。すると、余計に眠れない状況に陥ります。
出典:三島 和夫; 特集:睡眠と健康 ―ライフステージとライフスタイル― <総説> 高齢者の睡眠と睡眠障害, 保健医療科学;64(1):27-32,2015
不眠があるという理由のため、無理にベッドに入って寝ようとしても、実際に眠れる睡眠時間は短く睡眠効率が低下している事例があります。そんなときに、睡眠制限法を上手に使って、自分にあった睡眠スケジュールを探すことが大切です。
高齢者が睡眠制限法で睡眠スケジュールを調整すると、遅寝早起きの睡眠パターンになります。しかし、夜間帯に睡眠時間を集中させることができるので、睡眠に対する満足度が上がるメリットがあります。
出典:睡眠障害・睡眠問題に対する支援マニュアル(保健師・対人援助職向け)- 国立精神・神経医療研究センター
高齢者が眠れないからと言って、早い時間に寝床に入って睡眠薬を服用することを避けなければなりません。その人にとって相応しい睡眠時間と寝るタイミングを知ることが重要なポイントです。
具体的なやり方
1.自分が実際に眠っている時間を調べる
睡眠日誌を記録して、寝床にいる平均時間を計算します。
2.寝床にいる時間を決める
臥床時間を実際に寝ている時間+30分に設定する。そして、就床と起床時刻を決定する。
3.睡眠効率を判定する
睡眠日誌の記録をみて、1週間の睡眠効率(%)を計算する。この数値は、睡眠の質を把握するときに利用されます。
4.睡眠時間を調節する
睡眠効率が85%を超えていればベッドにいる時間を15分長くして、79%以下の場合は15分短くするという条件に従って、1週間単位で睡眠のスケジュールを調節します。
出典:岡島 義; 慢性不眠症治療のストラテジー CBT‒I の理論と実践, Jpn J Psychosom Med;58:616-621,2018
効果が現れるまでに、どのくらいの時間がかかりますか?
個人差はありますか、睡眠外来での治療経験によれば、4~5週間です。
注意点について
睡眠制限療法を開始して間もないときは、睡眠時間が短縮されるので睡眠不足になります。この治療法のリスクとして、運転中の眠気、集中力の低下が起こり得ることを知っておいてください。
出典:What is sleep restriction therapy for insomnia? – Sleep Education
睡眠制限療法の禁忌は、ありますか?
治療開始後は、眠気を感じることがあるので、長距離の走行をしているトラック運転手、バス運転手、重機を操作する人、工場の組み立てラインに従事している人は、睡眠制限法を選ぶことができません。さらに、基礎疾患として、睡眠時無呼吸症候群、てんかん、パラソムニアがある人も、睡眠時間を短縮させると病状が悪化する危険があるので、禁忌となっています。
出典:Sleep Restriction Therapy – Behavioral Treatments for Sleep Disorders – University of Pennsylvania
安全に行うためには、医師による不眠症の診断を受けて、やり方を教えてもらってから、睡眠制限法を始めるべきです。可能なら睡眠専門医のアドバイスを受けることを勧めます。なぜなら、あなたの持病や体調、職種、および生活環境を十分に考慮しなければならないからです。
睡眠改善のために
睡眠制限法の目的は、眠れないままベッドで横になっている時間を短くする方法を用いて、質の良い睡眠を効率よくとることです。
もし、睡眠時間と睡眠サイクルの調節をしても、日中の眠気、集中力の低下が残るなどの睡眠トラブルがあれば、睡眠専門医の診察を受けてください。