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性犯罪・性暴力の影響と睡眠障害を乗り越えるためのガイド
性被害を受けた後の睡眠障害の背景について
性被害は、被害を受けた人に対して、身体面と精神面の健康に深刻な影響を及ぼすことが知られています。特に心の傷は、長期間にわたって、被害者の日常生活や心理状態に影響を与えます。
その中でも、睡眠の問題は性被害の後にみられる症状の一つです。寝つきが悪い、途中で目が覚める、朝早い時間に目覚めてしまう、悪夢が怖くて夜が怖いなど、さまざまな悩みがあります。
それでは、なぜ性被害を受けた後に睡眠障害が発症するのでしょうか。今回のブログでは、性被害に遭った人に多い睡眠の異常について、解説していきます。
どのような業界で起きる可能性があるか?
性被害やセクハラの問題は、日本だけでなく世界中で長い間存在していましたが、多くの場合、公にはされていませんでした。
しかし、最近では社会の考え方やニュースの報道の仕方が変わり、色々な業界でこの問題が明るみに出ることが増えてきました。今後、どのような業界やグループで性加害の問題が明るみになってくるかの予想は以下の通りです。
業界 | 具体的な内容 |
---|---|
エンターテインメント | 映画、音楽、テレビ業界でのキャスティングや昇進に関連するセクシャルハラスメントの問題は、これまでにも取り上げられてきました。今後、芸能界でも新しい事実が明らかになるかもしれません。また、イベントやファン交流会などの場でも、参加者同士やゲストとの関係で性被害が生じる可能性があります。 |
芸術関係 | 芸術の世界は、作品の制作や展示・公演の裏側での人間関係が複雑です。特に、指導者や上級の芸術家と若手や弟子との間の権力差が、性被害を引き起こすことがあると思われます。また、芸術家間の競争や評価が主観的なこの業界の特性も、真実を隠す要因になります。音楽界でも同様なケースがあるかもしれません。 |
出版・文学関係 | 作家や編集者、評論家など、さまざまな職種が関わる出版業界では、作品の出版をめぐる権力関係や出版社内の人間関係が複雑です。若手作家やフリーランスのライターが、デビューのチャンスを得るために不利な立場に置かれることがあり、そのような状況がセクハラや性被害の原因となることが懸念されます。 |
スポーツ業界 | コーチや指導者と選手、練習生の関係において、力関係が性被害を生む要因となることが考えられます。大会の出場枠、レギュラーの地位を得るために、不適切な関係を強要される可能性があります。未成年の場合、上下関係、所属しているチームの暗黙のしきたりなどが影響して被害に遭うことが想定されます。 |
宗教団体 | これまでにも一部で性被害の問題が浮上していますが、宗教的な権威やコミュニティの圧力により、まだ明らかにされていないケースがあるかもしれません。閉鎖的なコミュニティ、団体の名誉を守るために事件の報告を避ける文化、誤った教義の解釈、洗脳の影響などが、性犯罪が発生する背景として挙げられます。 |
教育機関 | 教育現場の性被害は、教師と生徒の権力関係、一対一の指導、学外活動、校内の人目を避けやすい場所などの状況で起きやすいです。教育者の監視および事件を報告する体制が不十分であること、性教育・ハラスメントに対する研修の不足、被害者の事件に対する誤解などが要因です。学業・成績への影響を恐れて、被害者が沈黙を守ることもあります。 |
政界 | 政界での性被害は、非公式の会合、選挙活動、オフィス内などの特定の状況で起こりやすく、発生する要因として、権力の不均衡、報復の恐れ、閉鎖的な文化、性的スキャンダルの政治的利用などが挙げられます。政治に関係する公務員によるセクシャルハラスメントなどは国際的にも見られ、今後もその傾向が続くかもしれません。 |
防衛業界 | 軍隊の性暴力は、階級や権力の差が背景にあり、上官が部下に対して不適切な行動をとることがあります。団結を大切にする文化や閉鎖的な環境での活動が、被害を外部に漏れなくくしています。厳しい訓練や任務のストレスも、事件が起きる引き金になっています。そして、女性だけでなく男性も経験するが、報告が難しいと感じる場合が多いです。 |
IT業界 | スタートアップ企業や大手のIT企業における労働環境の問題が注目されています。職場にもよりますが、女性が少なく男性が多い環境になると、セクハラが多くなる傾向です。特に女性エンジニアが少ないことも影響しています。守秘義務契約のために真相を言い出せない人もいますが、今後、隠れ性被害者が出てくる可能性があります。 |
金融業界 | 伝統的な企業文化やハイエナジーな業界特有の環境が、セクシャルハラスメントの温床となる可能性が考えられます。女性比率が高く男性が少なく、社員旅行、部署の歓送迎会、飲み会などの場でセクハラが起きやすいことがあります。嘱託、派遣社員など、雇用条件が不安定な人が被害を受けるケースがあります。 |
国内の調査結果によれば、地位の関係性を利用した加害者として、教育関連では教員、学習塾の先生、仕事関連では、就活のときの出身大学の先輩社員、上司、取引先、顧客などが報告されています。
生きていく上でのキャリアを築く過程で、仕事の維持や昇進、スキルの向上を目指すときに、権力のある人物からの性暴力が発生する可能性が考えられます。このような状況は、不適切な行為の見返りとしてのキャリアの利益や指導を期待する権力者と、それに従うことで自身の立場を守ろうとする被害者の間のパワーバランスに起因しているかもしれません。さらに、組織の風土がこれを黙認する場合、問題はさらに深刻化する可能性があると考察されます。
特定グループにおける性被害の高まる要因と背景
性被害は、仕事や職種だけではなく、社会のさまざまなグループで発生する可能性があります。特定の背景や状況を持つ人々は、その性質上、被害のリスクが高まることが考えられます。以下に、性被害のリスクが特に高いとされるグループと、その背景や理由を詳しく説明します。
グループ | 具体的な内容 |
---|---|
LGBTQ+コミュニティ | 一部の社会ではLGBTQ+のへの理解が不十分で、性的指向やジェンダーアイデンティティに関する偏見や差別がありあす。その結果、学校での性的嫌がらせや性的暴力、職場でのセクハラ、家族や親戚からLGBTを理由にして性的な加害を受けることがあります。宗教上のことで、不当に性被害を受けることも世界的にあるようです。 |
障害を持つ人々 | 身体的または精神的な障害を持つ人々は、弱い立場にあり、性的ハラスメントのリスクが高まる可能性があります。閉鎖的な空間で過ごしている場合、被害を報告するときのアクセスやコミュニケーションの困難さが増します。職場や訓練施設など様々な場所での問題として、性的暴行を受けながらも相談する手段を見つけられない人もいます。 |
未成年者 | 発達途上の児童や少年と少女は、身体的、精神的、そして社会的経験の不足から、大人に対して無防備である場合が少なくありません。信頼感を悪用して裏切る大人の存在が、性被害のリスクを持つ大きな要因となっています。教育機関や家庭において、悪意を持った人が潜んでいる可能性があるため、注意しなければなりません。 |
移民や難民 | 新しい国や文化に適応するときに、多くの困難に直面します。特に、言語の壁はコミュニケーション能力を制限し、自分の意思を適切に伝えることが難しくなります。さらに、生活費、不安定な居住状態、身分の問題などの問題が、リスクを大きくしています。さらに、被害を受けた後の適切なサポートを求めることが難しいこともあります。 |
低所得者やホームレス | 経済的な困難を抱える低所得者やホームレスの人々は、その状況が性的搾取の対象となりやすい環境になっていあす。地方から都会に家出した人なども同様な背景と言えるでしょう。一時的なシェルターや居住地を探しているときに、経済的なサポートの見返りとして、性被害に遭うことがあります。 |
若い世代では、どのくらいの割合の人が被害に遭っていますか?
若年層(16~24歳)の26.4%が何らかの性暴力被害に遭っているとされ、学校、大学の関係者、部活の先輩や同級生、交際している相手、SNSあるいはインターネットで知り合った人などが加害者である場合が多いです。
出典:こども・若者の性被害に関する状況等について – こども家庭庁
上記の報告から、被害を受けた人のうち50%以上が誰にも相談していないことが明らかとなり、実際の被害者数はさらに多い可能性が考えられます。いじめ問題が併発しているケースもあるようです。
多くの人が相談しにくい状況にあり、また、どこで相談すべきかが分からないためです。しかし、SNSの普及や#MeToo運動の影響で、今後、被害を公にする人が増えると、筆者は予測しています。
地震が発生した地域での避難所でも、性被害は発生しています。被災地での性暴力の危険に怯えながら眠れない日々を過ごせざるを得ない状況もあります。
出典:産業医科大学 産業生態科学研究所 災害産業保健センター
心身への影響
性被害を受けた多くの人々は、精神的トラウマを経験します。これには、過度な不安、うつ、自己価値感の喪失などがの症状が含まれています。心の傷を深く負うと、心的外傷後ストレス障害が発症します。
ストレスをたくさん感じると、体の免疫の力が弱まって、風邪や感染症にかかりやすくなります。体調不良を訴えることが多くなります。さらに、ストレスに反応して体が出すコルチゾール、アドレナリンなどの放出が増えるので、これが長く続くと睡眠の質が悪くなったり、食欲が変わったり、女性ホルモンのバランスが崩れることがあります。さらに、自律神経の調節が不安定になり、体の具合が悪くなることがあります。
睡眠障害の特徴
性被害を受けた人は、睡眠障害を経験することがあります。なぜかというと、トラウマ体験が脳と身体のストレス応答の影響を与えるからです。
眠りの質が悪化するメカニズムとして、ストレスホルモンであるコルチゾールの分泌を増加が考えられています。このホルモンが過剰に放出されると、睡眠サイクルが乱れたり、深い眠りを妨げたり、睡眠に悪影響が現れます。
ところで、睡眠障害にはさまざまな種類と症状があります。よくある睡眠の異常として、入眠困難や中途覚醒のほか、朝早い時間に目が覚めてしまうという早朝覚醒などの不眠症があります。
もちろん、こころの病気を発症することが多いので、精神疾患に併発する睡眠障害が現れるでしょう。どんな精神疾患の診断名が性被害と関係があるかを調査した研究では、不安障害、うつ病、摂食障害、心的外傷後ストレス障害などが強い関連があることが分かっています。
例えば、心的外傷後ストレス障害にみられる悪夢や夜間の恐怖、夜中に突然目を覚ますパニック発作なども知られています。さらに、昼間の過度な眠気や、日中に突然眠ってしまう過眠症の症状もあることがあります。
性的なトラブルを経験した人は、夢で怖いことを感じたり、寝ている間に突然目が覚めたり、よく眠れなかったり、昼間に疲れやすくなることがあると、研究で明らかになっています。
ヨーロッパの大学生を対象とした調査により、性的虐待や性的嫌がらせの経験者は、短い睡眠時間を持つ傾向があることが明らかになりました。また、これは悪夢の発生とも関連していることが示唆されました。
上記の二つの研究から、不眠、睡眠不足、悪夢といった症状は、性被害と関連する可能性がある睡眠障害の兆候と考えられます。
ぐっすり眠れない状況が続くので、日常生活や仕事、学業、人間関係に大きな影響を及ぼします。眠りが不安定になることで、さらに、精神面も悪化していきます。そのため、睡眠を改善することは、メンタルヘルスの健康にも大切です。
なぜ睡眠の問題が起きるのか?
性被害とその後の睡眠障害の関連性を理解するためには、まずトラウマ体験と睡眠の関係を知る必要があります。トラウマは、感情やストレスの調整に関わっている脳の部分に影響します。
その結果、性被害を受けた女性は、強烈な恐怖や無力感、孤独感を経験することがあります。これらの不快な感情は、強いストレスになるので、睡眠の質やリズムに影響を及ぼします。特に、トラウマのフラッシュバックや悪夢は、安眠を妨げるでしょう。この発生には、レム睡眠が関与しています。
毎晩、性被害の経験を繰り返して思い出す恐怖や不安は、夜の安心感を奪い、睡眠の困難や頻繁な目覚めを引き起こすことがあります。中には、嫌な夢を見て、動悸、呼吸困難などのパニックのような症状になる人もいます。
どんな対処法があるか
睡眠障害が精神疾患に伴って発症するため、精神科、心療内科での診察を受けることを勧めます。通常、メンタルの問題と睡眠異常について、同時に治療をしていきます。
性的被害による精神不安や睡眠障害を対処するために、認知行動療法のほか、睡眠薬や抗不安薬などが用いられます。
薬剤名 | 具体的な使用法 |
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抗不安薬 | 被害後の強い不安やパニック発作を和らげるために、処方されることがあります。薬剤の種類として、ベンゾジアゼピン系の精神安定剤があります。 |
抗うつ薬 | トラウマを受けた後に現れる抑うつ症状や気分の不安定を治療するために使用されることが多いです。セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)やセロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害薬(SNRI)が一般的です。 |
抗精神病薬 | 解離症状、フラッシュバックなどの症状に対処するために、低用量で使用されることがあります。過度な興奮や不安、刺激に対する過敏な反応を減らす働きもあります。 |
睡眠薬 | ぐっすり眠れない人に対して、ベンゾジアゼピン系、非ベンゾジアゼピン系の睡眠薬が使用されます。長期使用による依存、耐性の発現、また離脱症状が起こる可能性があるため、慎重な管理が必要です。 |
どこに相談すればよいか?
性被害を受けた場合、そのショック、混乱、不安は計り知れません。まず優先すべきことは、自分の安全を確保することです。緊急時や身の危険を感じる場合は、すぐに警察や近隣の安全と感じる場所に連絡してください。
次に、心のケア、カウンセリングを受けるために、地域の性暴力相談センターや女性専用のシェルターに連絡することをお勧めします。これらの相談機関は、被害者のプライバシーを厳重に守りつつ、専門的なサポートを提供しています。また、医療機関での診察や緊急避妊薬の処方、性感染症の検査なども必要に応じてサポートしてくれます。
その後の法的手続きや必要な支援が受けられるように、法律家に相談するのが良いでしょう。法テラスは国が設立した団体なので安心して相談することができます。必要に応じて、弁護士の紹介も行ってくれます。
あなたの身近にいる人々、家族や信頼のおける友人にも状況を話すことを考えてください。
中学校、高校生、大学生であれば、学校のカウンセラーや保健室の先生に相談することができます。性犯罪は、女子の学生だけに起きる問題ではなく、男子の学生でも被害者になることを知っておきましょう。怖い気持ちや戸惑いはあると思いますが、自分のせいだと思わないでください。周りの大人があなたをサポートするために、アドバイスしてくれます。
性暴力の被害は性別を問わず、誰にでも起こり得る問題です。男性も被害者になることがあります。何か不安や問題を感じたときは、相談窓口への相談を勧めます。