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妊婦のむずむず脚症候群の症状と対策
妊娠中に起きるむずむず脚症候群とは
夜に眠ろうとすると脚に不快な感覚が現れて、動かしたくなります。そして、脚の違和感があるため動かしたくなり、眠れなくなるという病気です。
妊娠している時期に多い睡眠障害です。レストレスレッグス症候群と呼ばれることもあります。
原因について
脳内にある神経伝達物質ドパミンの働きが低下すると、むずむず脚の症状が出現します。そして、ドパミンの機能障害は、鉄不足によって生じることが知られています。
妊娠中は貧血になりやすく、鉄分が不足しがちです。そのため、体内にある鉄分の不足が、妊婦のむずむず脚症候群を引き起こす理由の一つと考えられています。
妊娠後期は、母体の変化として血液量が増えます。赤血球が増えて、鉄の需要が高くなること、さらに、胎児の成長のため鉄分が使われることから、母体が鉄不足になりやすいことが影響しています。
鉄不足以外の原因として、何がありますか?
葉酸欠乏症があると、むずむず脚の症状が現れることがあります。
むずむず脚症候群とビタミンD不足は関係がありますか?
国内の妊婦を対象とした研究によれば、むずむず脚症候群の症状がある妊婦では、25OHビタミンD(体内で貯蔵されているビタミンDの形態)のレベルが低いことが明らかになりました。
症状の経過について
妊婦の5人に1人が妊娠後期(出産前の3ヶ月間)に経験すると報告されています。そして、たいていの場合、出産後に症状が徐々に消失します。
出典:Restless legs syndrome – NHS
一般的に、妊娠超初期にむずむず脚の症状が出現することは少ない印象です。妊娠中期(20週以降)に、症状を感じるようになったり、脚の不快感が悪化する傾向です。
出典:Restless Legs Syndrome – HealthLink BC
どんな症状が出現するか?
寝る時間が近くなると、足の裏、ふくらはぎ、太ももなどに不快な感覚が現れます。虫が這う、ムズムズするなど、じっとしていられないという症状です。イライラして、脚の置き場がなく、脚を動かしたくなります。安静にしていると下肢の症状が悪化し、脚を動かすと症状が軽減することが特徴です。
脚以外の部位に症状が現れることがありますか?
腕に違和感が生じる場合があります。
むずむず脚症候群があると、眠っているときに脚がピクっと動く症状が併発することがあり、周期性四肢運動障害と呼ばれています。
むずむず脚症候群は、どんな影響を及ぼしますか?
脚の不快な感覚によって、入眠困難、中途覚醒などの不眠になります。夜ぐっすり眠れないので、寝不足になり、日中の眠気、集中力の低下が問題になります。眠れないストレスが続くと、うつ病を発症する危険が高くなります。
診断について
症状の経過を聞き取り、むずむず脚症候群の診断基準を満たせば、診断することができます。
出典:NINDS – Restless Legs Syndrome Fact Sheet
基本的に、妊婦のむずむず脚症候群を調べる目的として、終夜睡眠ポリグラフ検査を行いません。
必要な検査として、血液検査があります。母体の貧血の程度、貯蔵鉄のレベルを評価するために役立ちます。葉酸を同時に測定することもあります。
血液検査で調べる項目は何ですか?
赤血球数、ヘモグロビン、ヘマトクリットのほか、血清フェリチンを測定します。
何科にかかれば、むずむず脚症候群の診察を受けられますか?
脳神経内科です。睡眠の病気に詳しい内科でも対応できます。
治療について
鉄不足が確認されている場合は、鉄剤の補充によって症状を改善させます。
血液検査の目安として、血清フェリチンが75µg/L未満の場合は、鉄剤の内服を考えます。むずむず脚の症状が重度の妊婦において、鉄剤の経口投与がうまくいかず血清フェリチンが30µg/L未満の場合は、鉄剤の注射を検討します。
貧血、鉄不足がない妊婦の場合には、むずむず脚症候群の治療薬を使用しますか?
胎児への薬剤の影響を懸念して、抗てんかん薬であるクロナゼパム、ドパミン受容体作動薬であるプラミペキソールの処方を行っていません。
足がむずむずして寝れないときの対処法はありますか?
入浴によって脚を温めること、寝る前に脚のストレッチやマッサージをするという対策があります。
出典:Wong et al. Sleep disorders in pregnancy. Breathe 2022;18:220004
ビタミンD不足があれば、ビタミンDの補充を検討しましょう。
予防について
普段から、鉄不足にならないように、鉄を多く含む食物をしっかり摂りましょう。飲酒およびカフェイン摂取は、むずむず脚の症状を悪化させるので、控えることが大切です。
妊娠を計画している女性においては、鉄不足になっていないか、かかりつけ医に調べてもらうことを勧めます。
体質的に貧血になりやすい女性は、市販の鉄サプリを服用するのも効果的です。どんな鉄サプリがよいかは、薬剤師と相談しても良いです。
菜食主義や日光をあまり浴びない生活を送っていると、ビタミンD欠乏症の発生が多くなります。ビタミンD欠乏を防ぐためには、適度な日光浴をして、ビタミンDを含む食材をメニューに取り入れることが大切です。