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ラメルテオンとスボレキサントの比較と使い分け方
ロゼレムとベルソムラは何が違うか?
ロゼレムには、体内時計を調節するメラトニンというホルモンと同じような作用があります。自然な眠気を催し入眠を助ける効果があり、メラトニン受容体作動薬と呼ばれています。
一方、ベルソムラは、脳内の覚醒物質であるオレキシンの作用を弱めることで催眠作用がもたらされます。オレキシン受容体拮抗薬に分類されている睡眠薬の一種です。
両方とも不眠症に対して効果がありますが、症状の違い、年齢、持病の有無によって、適切に選択することが大切です。
このページでは、ラメルテオンとスボレキサントの相違点、どちらの薬が良いか迷っているときの使い分けの目安について説明します。
ロゼレムとベルソムラの比較
ロゼレム | ベルソムラ | |
---|---|---|
製造会社 | 武田薬品 | MSD |
有効成分 | ラメルテオン | スボレキサント |
剤形 | 8mg | 10mg、15mg、20mg |
一包化 | できる | できない |
ジェネリック | あり | なし |
効能と効果 | 不眠症における入眠困難の改善 | 不眠症 |
成人の用量 | 8mg | 20mg |
高齢者の用量 | 8mg | 15mg |
禁忌 | 重度の肝機能障害、フルボキサミンマレイン酸塩を投与中 | CYP3Aを強く阻害する薬剤投与中 |
最高血中濃度到達時間 | 0.75時間 | 1.5時間(10mg反復14日投与) |
血中濃度半減期 | 0.94時間(ラメルテオン)、1.94時間(M-Ⅱ) | 10.0時間(40mg投与) |
副作用 | めまい、頭痛、眠気、倦怠感、便秘、悪心、発疹、悪夢、プロラクチン上昇 | 疲労、傾眠、頭痛、浮動性めまい、悪夢、睡眠時麻痺、異常な夢、入眠時幻覚 |
出典:ロゼレム – KEGG
ロゼレムとベルソムラの薬効の比較
不眠症に対して、ラメルテオンとスボレキサントの効果を直接比較した研究報告は少ないです。そのため、プラセボとの比較を調査した報告を参考にして、ロゼレムとベルソムラのどちらが睡眠の改善度が高い傾向であるかを解説します。
薬を服用してから短期間(4週間)においては、ベルソムラのほうがロゼレムよりも睡眠の質の改善効果が高い印象です。
健康な高齢者において、マイスリー5mg、ベルソムラ10mg、ロゼレム4mgの睡眠に対する効果を比較した論文があります。その研究結果によれば、寝つきまでの時間については、有意な差がありませんでした。
ロゼレムは、睡眠と覚醒のリズムを調節して効果を発揮するという薬理作用をもっています。そのため、メラトニン受容体作動薬を服用する場合、入眠困難が改善するのに時間がかかります。
一方、途中で目が覚めた場合に再び寝つくまでの時間は、ベルソムラのほうがロゼレムより短いことが認められました。オレキシン受容体拮抗薬は作用時間が長いので、再入眠に対して優位性があると考えられます。
どっちが効き目が長いか?
ベルソムラの血中濃度半減期は、ロゼレムよりも長いです。ロゼレムは代謝されるまでの時間が短いので、中途覚醒には向かない印象です。一方、ベルソムラは効果時間が長く、効き目が長いです。
途中で目が覚めるに人には、オレキシン受容体拮抗薬のほうが有利かもしれません。
ロゼレムとベルソムラの価格の違い
1.ロゼレム(先発品と後発品)の価格
ラメルテオン | 薬価 |
---|---|
ロゼレム錠8mg | 85.9円/錠 |
ラメルテオン錠8mg「武田テバ」 | 27.9円/錠 |
2.ベルソムラの価格
スボレキサント | 薬価 |
---|---|
ベルソムラ錠10mg | 69.3円/錠 |
ベルソムラ錠15mg | 90.8円/錠 |
ベルソムラ錠20mg | 109.9円/錠 |
成人に処方されることが多い剤形は、ロゼレム8mgとベルソムラ20mgです。この二つの価格を比較すると、ロゼレムのほうが安いです。
ところで、ラメルテオン錠というジェネリックが発売されています。そのため、ロゼレムの後発品を選択すれば、ベルソムラの全ての剤形より価格が安いことが分かります。
ロゼレムとベルソムラを併用してもよいか?
通常、単剤で使用することが多いですが、両者とも依存性が少ないというメリットがあるため、効果不十分の場合に、併用することもあります。
せん妄を予防する有用性の比較について
高齢者になると、脳の働きが不安定になって軽度の意識障害を引き起こすことがあります。医学的には、せん妄と呼ばれています。夜間に興奮状態になって不眠になること、昼夜逆転、情緒不安定などの精神症状がみられます。
夜中に何度もせん妄が起きる状況を、夜間せん妄と言います。対策として、睡眠薬によるコントロールを行うことがあります。
せん妄になるリスクが高い高齢者に対して、ロゼレムとベルソムラの両方とも、またはいずれか一方を服用していると、予防効果があることが報告されています。
スボレキサントのほうが、転倒リスクの軽減が有意に低いという報告があります。せん妄の予防効果、不眠の改善が関係している可能性が指摘されています。
出典:石郷友之 他; ラメルテオン・スボレキサントを含めた睡眠薬の服用と転倒への影響:症例対照研究, YAKUGAKU ZASSHI;140(8):1041-1049,2020
総括すると、ロゼレムとベルソムラのどちらがせん妄を抑える効果が優れているかについては、まだ答えが見つかっていません。
せん妄は睡眠と覚醒の調節が不安定になることによって発症します。そのため、作用機序の異なる二つの薬(ベルソムラとロゼレム)が、症状の改善に役立つ可能性があります。
今後は、病状の程度によって、薬を選択する基準が決められる方向です。
使い分けのヒント
ロゼレムはメラトニンの作用を促すため、寝つきの改善に向いている薬です。
ラメルテオンの特性を考えると、加齢による体内時計の働きが低下して入眠困難になっている場合、睡眠リズムが後退している場合に使用すると効果を発揮します。
ベンゾジアゼピン系の睡眠薬と比較すると、ロゼレムの効果は穏やかで、即効性はありません。ただし、ふらつき、転倒のリスクが高い高齢者に安全に使える利点があります。
ベルソムラは、中途覚醒、早朝覚醒の悩みがあるときに考慮します。もちろん、寝つきが悪いという人にも使えます。
従来の睡眠薬とは異なり、依存性が少ないというメリットがあります。ただし、薬の一包化ができないというデメリットがあります。
ベルソムラと他剤の一包化が必要なとき、併用禁忌の薬(CYP3Aを強く阻害する薬剤)を服用しているときは、類薬のデエビゴの少量投与のほうが良いかもしれません。