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更年期・閉経後の睡眠障害について
更年期に多い睡眠のトラブルとは
更年期ではどんな睡眠障害が問題になりますか?
眠りの質が落ちる、途中で目が覚める症状など、不眠が生じます。ほてり感を伴うことが多いです。閉経後は、睡眠時無呼吸症候群の発生が増える傾向にあります。
出典:How Does Menopause Affect My Sleep? – The Johns Hopkins Hospital
閉経後に多い睡眠障害は何ですか
不眠症、閉塞性睡眠時無呼吸、むずむず脚症候群などの病気が問題になることが多いです。
出典:Jehan et al. Sleep Disorders in Postmenopausal Women. J Sleep Disord Ther. 2015;4(5):1000212.
更年期の不眠に関係するものは何ですか
更年期では血管運動神経症状が出現することが多いです。この症状は、皮膚の表面にある血管が拡張することで生じ、ホットフラッシュ、寝汗を自覚します。中には、動悸を訴える女性もいます。体調不良を自覚する頻度が増えます。
これらの症状が、目が覚めやすい、眠りが浅い、寝つきが悪くなる原因の一つになっています。中には、ストレスが引き金となって嫌な夢を見るようになる場合があります。寝不足になる傾向があるので、日中、頭が働かないと感じる人もいます。
女性ホルモンの変化(エストロゲンとプロゲステロンの低下)も、眠りの質の低下、抑うつ症状の発現などを引き起こしています。
出典:Lee et al. Sleep Disorders and Menopause. J Menopausal Med. 2019;25:83-87.
更年期に生じる体の変化によって、不安、うつの症状が起きることで、不眠になる方も少なくありません。その他、加齢に伴って、夜間の排尿回数が増えること、身体の疼痛が増えることなども、睡眠障害が生じる原因の一つとなっています。
出典:Mental Health:The Menopause Society
閉経の前後では、ホットフラッシュ、精神症状によって、朝早く目が覚める症状を訴える女性が多くなります。
中年の世代になると、体重の増加、メタボ体型が増えてきます。そのため、睡眠時無呼吸症候群の影響も、ぐっすり眠れない要因になります。朝起きれないという悩みを訴える女性もいます。
なぜ更年期では睡眠時無呼吸が問題になるのですか
女性ホルモンには、気道を構成する筋肉の緊張を保つ働きがあります。閉経に伴って、これらの女性ホルモン低下が生じるため、気道が狭くなりやすい傾向になります。
更年期のホルモンの変化によって、体重の増加、喉の周囲にも、脂肪が分布しやすくなり、上気道の閉塞の原因となります。
一般的には、更年期以降に閉塞性睡眠時無呼吸を発症することが多くなります。女性のいびきは睡眠時無呼吸を発見する手がかりになります。
閉経後の眠気があるとき、いびきをかくときは、睡眠専門医による診察を受けてください。
どんな睡眠薬を使いますか
寝つきが悪い症状に対して、ゾルピデム、エスゾピクロンなどの睡眠薬を処方することがあります。
ホットフラッシュのため眠れない方が睡眠薬を使用することで、夜間帯のホットフラッシュで悩む回数が減ることが報告されています。
出典:Baker et al.Sleep and Menopause In: Kryger MH, Roth T, Dement WC, editors. Principles and Practice of Sleep Medicine. 6th. Philadelphia, PA: Elsevier; 2016.
途中で目が覚める、夜中に起きると再び眠れないという悩みがある場合は、オレキシン受容体拮抗薬を試しても良いかもしれません。ベルソムラあるいはデエビゴという睡眠導入剤は、依存性が少ないことが特徴です。
更年期に使われる漢方薬の種類は何ですか
更年期の症状、ホットフラシュ、冷え、疲労感、いらいら感に対処する漢方として、加味逍遙散、桂枝茯苓丸、当帰芍薬散などを用います。いずれも、健康保険の適用となります。
睡眠の悩みに対しては、抑肝散、加味帰脾湯などの漢方薬なども候補になります。
他の治療はありますか
更年期による女性ホルモン低下を補う目的で、ホルモン補充療法があります。同治療のメリットとして、血管運動神経症状の改善があります。具体的には、ホットフラッシュ、寝汗などの症状が軽減します。
ホルモン補充療法によって、閉経後の女性の骨量減少、骨粗鬆症による骨折の発症リスクを減らすことができます。
デメリットとして、血栓が生じやすいこと、乳がんの発症リスクが増えることがあります。そのため、この治療を受けるためには、婦人科で十分な説明を受けることを勧めます。
出典:Menopause From the FDA Office of Women’s Health
睡眠障害を予防するためにできることは何ですか
生活リズムを一定にすること、午後の長い昼寝を避けることが大切です。食生活では、夕方以降のカフェイン摂取を控えるようにする、そして、夕食の量を取り過ぎないようにしてください。アルコールについては、中途覚醒の原因になるので、注意しましょう。
寝室の環境整備、特に、温度の調整、音の対策について、見直してみましょう。
出典:Sleep Problems and Menopause: What Can I Do? – National Institute on Aging