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レビー小体型認知症で睡眠障害が現れる理由と対処法
はじめに
レビー小体型認知症は、もの忘れだけでなく、睡眠に関係した異常な行動が早期から現れることがあります。たとえば、夜中に突然叫んだり、手足を激しく動かす、リアルな夢を見て大声で話してしまうといった症状です。
本人にとっても家族にとっても驚きや不安の原因になりやすく、「何かがおかしい、病気が隠れているかもしれない」と気づくきっかけになることもあります。

高齢者社会になり、認知症を発症する人が増えています。このページでは、レビー小体型認知症と睡眠障害の関係、原因、対応方法について、医学的な視点から解説していきます。
レビー小体型認知症とは?
レビー小体型認知症は、脳内に「レビー小体」と呼ばれる異常なタンパク質が蓄積することで発症する神経変性疾患です。
症状として、認知機能の変動、幻視(人や動物などが実際にいないのに見えてしまう)、パーキンソン症状(手のふるえ)、そして、睡眠の異常が初期からみられる点が特徴です。

特に、眠りの異常に関する問題はこの病気の早期サインとして現れやすく、夢の中の行動を実際にとってしまうレム睡眠行動障害が代表的です。
本人は夢の内容を覚えていることもあり、家族が夜中の異常行動に最初に気づくことが多くあります。
出典:Lewy Body Dementia – MedlinePlus
よくある睡眠障害の症状とは
レビー小体型認知症では、睡眠中に異常な行動がみられることがあります。たとえば、寝ている間に突然大声を出したり、手足を振り回して暴れるような動きをするケースです。悪夢を見ることもあります。
自分が危害を加えられているような夢の内容に反応して、はっきりした寝言や叫び声をあげる、ベッドから落ちてしまう事象があります。その結果、本人が怪我をする恐れがあります。

こうした症状は、ただの寝ぼけや加齢による変化ではなく、神経の病気によって引き起こされている場合があります。家族が夜間の異変に気づいたら、早めに医師に相談することが重要です。
出典:レム睡眠行動障害 – 健康日本21アクション支援システム
レム睡眠行動障害はどんな病気?
レム睡眠行動障害は、夢を見ている睡眠の段階において、夢の内容を実際の行動として体が動かしてしまう病気です。通常、レム睡眠中は筋肉の動きが抑えられており、夢を見ても体は動きません。

しかし、レム睡眠行動障害ではこの仕組みがうまく働かなくなっており、夢の中で戦っていれば手を振り回したり、逃げていればベッドから落ちることもあります。その場合、本人は、自分が他人、動物などに襲われてるような夢、口論になっているような夢が多い印象です。
レビー小体型認知症では、このレム睡眠行動障害が高い頻度でみられ、認知機能の低下よりも前から出現することがあるのです。つまり、夢の内容に反応して異常行動(叫ぶ、蹴る、殴る、暴れる症状)があれば、将来、認知症になりやすいというサインとして考えます。
出典:REM Sleep Behavior Disorder – AASM
なぜ睡眠中に異常行動が起きるのか?
レビー小体型認知症では、脳幹と呼ばれる脳の部位にレビー小体が蓄積し、神経の働きに異常をきたします。特にレム睡眠中に体の動きを止める役割を持つ神経経路が障害されると、夢に反応して体が実際に動いてしまいます。

視覚に関係する脳の領域も影響を受けるため、夢と現実の区別がつきにくくなり、幻覚や錯覚が重なることもあります。その結果、本人は自分の行動をコントロールすることができず、夜間に暴れたり叫んだりする異常行動が起こります。
異常行動によって、自分が怪我をするだけではなく、近くにいる人に怪我をさせてしまうケースもあります。
睡眠障害への対処法と生活の工夫
レビー小体型認知症による睡眠障害には、薬だけでなく日常生活の工夫が重要です。まず、安全な寝室環境を整えることが基本です。
ベッド周辺にクッションを置いたり、家具の角を保護することで、夜間の転倒や衝突による怪我を防ぎます。寝具近辺にガラス製品があれば移動しておきましょう。

刺激の少ない照明や落ち着いた寝室の雰囲気も、入眠を助けます。その一方、体内時計を安定させるために、起床時に朝日を浴びることを勧めます。昼夜のメリハリをつけることは睡眠の改善につながります。
家族は、無理に起こしたりせず、静かに見守ることが望まれます。日中の適度な運動や、規則正しい生活リズムも、夜間の落ち着きに役立つ要素です。
出典:鈴木 貴浩 他; 認知症患者の睡眠の問題と対応, 日大医学雑誌;79(6):349-352,2020
睡眠障害に使われる薬と治療法
レビー小体型認知症の睡眠異常に対しては、症状に応じた薬物療法が用いられます。特にレム睡眠行動障害には、クロナゼパム(抗てんかん薬)やメラトニン製剤(体内時計を整えるホルモン作用がある薬)が用いられます。後者については、国内ではロゼレム(ラメルテオン)が候補です。

高齢者では副作用への注意が必要であり、眠気や転倒リスクを避けるため、用量の調整は慎重に行われます。ちなみに、他の睡眠障害、特に睡眠時無呼吸症候群が併発しているなら、その治療も同時に行います。
もちろん、治療薬の内服と同時に、生活習慣の見直しも並行して行うことが勧められます。
受診の方法
夜間の異常行動や睡眠にまつわる悩みが続く場合は、早めに医療機関に相談することが重要です。
まずは、かかりつけの内科や認知症外来に相談し、必要に応じて、脳神経内科、精神科、睡眠外来など専門の医療施設を紹介してもらうとよいでしょう。
特に睡眠専門医はレム睡眠行動障害などの診断・治療に詳しく、的確な対応が受けられます。夜間の行動を記録したメモや動画が診察の助けになることもあるため、家族が気づいた点を整理して持参すると診察がスムーズにいきます。
よくあるQ&A
寝言が大きいのは病気ですか?
単なる寝言であれば問題ありませんが、「暴れる、叫ぶ、動き回る」などの行動が伴う場合は、レム睡眠行動障害の可能性があります。
レビー小体型認知症はなぜずっと寝ているのか?
脳の働きが低下し、日中も活動量が減るため、睡眠時間が長くなることがあります。昼夜逆転も見られます。
夜中に暴れるのは治りますか?
完全に止めるのは難しいですが、薬や生活改善により症状を軽減することは可能です。睡眠専門医と相談することが大切です。


